…無理だよ、…寂しいよ
始まりの町、シニオンノビス。
その町の周辺には人気のスクリーンショットのポイントがある。
町を一望できる高台?…では無い。
大自然を見渡せる開けた場所?…でも無い。
シニオンノビスの土地の西の端には花屋さんがある。
花やハーブ等を売っており薬の調合材料として使用できる。
そして西の町外れのマップにはそれを栽培する花畑があるのだ。
ではその花畑が絶好の撮影場所なのか?…半分正解。
実はそこには一人のNPCが存在する。花屋の娘、マーガレット。
プラチナブロンドに輝く髪の毛、青い瞳、あどけない顔立。
花の世話をするには相応しく無いようなドレス姿の女の子。
そんな気合いの入ったNPCが花畑に居るのだからみんなついつい足を止めてしまう。
物静かだが話し掛ければ対応もしてくれるし、ある程度ポーズの要望にも答えてくれる。
つまりマーガレットを含めた花畑が人気の撮影ポイントなのだ。
素敵で可愛い花屋の娘、マーガレット。
美しすぎるNPC、マーガレット。
今回はそんなマーガレットのお話。
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「…つまらない」
私は一人呟く、呟いた事で自分がつまらないのだと再認識して余計につまらなくなる。
私を町の外に配置した運営が恨めしい。
他のNPCとの交流も無く、ただただ撮影される日々。
そう、私には役割が無いのだ。畑の案山子と何一つ変わらない。
花畑に配置されてはいるが花の世話をする必要性も無い。
それなのに私に許された移動範囲は花畑の中のみ。
そして咲いてる花の名前すら知らない、これらは映像の造花。
名前があるかどうかすら怪しい白い花。
唯一の楽しみはウサギを眺める事くらいだろうか。
とてもフワフワでとてもモフモフで、毛玉の様な可愛いウサギ。
たまに花畑にも進入してくるが触る事はできない。
触ると……反撃してくるからだ…。
ええ、その通り、モンスターですよ。
この世界では町の外に居る生き物はだいたいモンスターなのだ。
私は町の外に配置されている、という事はモンスターも居て然り。
それでも私がモンスターに襲われる事は無い。
単純な話、好戦的なアクティブモンスターが居ないというだけ。
しかし一度だけ試した事はある。
ウサギに反撃させて自分の耐久値を越えるまで我満してみた。
どうなったか?…私がまだここに居るのが答えだ。
花畑の中央にリスポーンした。
私は、しょせんNPCなのだ…。
私は、何の為に配置されているのだろうか。
…。
「すみませーん、写真良いですかー?」
また来た、私は無言で頷く。
本当はもっとお喋りしたい…、冒険者から話が聞ければ気が紛れるかもしれない。
でも私はNPCで、ただのAIで、役割も持っていない。
冒険者は短い時間を有意義に使おうと忙しなく移動する。
私の我が儘で邪魔をしてはいけない、それはプレイの阻害だ。
冒険者は私と写真を撮る事が目的では無いのだ。
撮った写真を外の世界で人に見せる事が目的なのだ。
私は…ただの大きな花の様なもの…。
私は長い時間、ウサギを眺めながら咲いていればそれで良い。
「…無理だよ、…寂しいよ」
冒険者が去った後で私は一人で呟いた。
呟いた事で私は寂しいのだと再認識して余計に寂しくなった。
私の景色を変える何かを、ただ待ち望んでいた。
待っているだけでは何も変わらないだろう、それは分かっている。
しかし私は花畑の外には移動できないのだ。
他の誰かも一緒に花畑に縛り付ける、そんな事はあってはいけないのだ。
「…寂しい」
ウサギはアンゴラウサギみたいなやつです。
シニオンノビス南には定番のゼリー状モンスター。
西にいるウサギはそれよりも少し強いです。




