豆まきをするまめ その①
ここはやさいたちが住むベジアイランド。今日もゆかいに暮らしています。
今日はピスオに呼ばれて、【にんじんくん】そして【じゃがいも男爵】【メークイン王女】【きたあかり姫】が土の上にやってきました。
「きたまめね」
「ピスオ、今日は何をするんだ?」
「今日はまめまきをするまめ」
「まめまき! めちゃ楽しそうだな」
にんじんくんの目がキラキラと輝きました。
メークイン王女はピスオにたずねました。
「豆まきの日、2月3日はピスオ王子の誕生日ではありませんか?」
「そうなのか!」
にんじんくんは驚いた顔をしています。
ピスオはコクンと頷きました。
「そうまめ、でも四季さんたちがしてくれるから、今はまめまきするまめ」
「そう。よかったわ」
「豆まきするー」
きたあかり姫も豆まきをすごく楽しみにしているようです。
じゃがいも男爵は困った顔をしてピスオを見ています。
「ピスオ王子、肝心の鬼がいないのであーる」
「本当だな! これじゃあ鬼は外出来ないぜ」
「大丈夫まめ。ピスオにまかせるまめ」
と、ピスオは土をポンポンと固めて、鬼の形を作ります。
「そういうことね。土の鬼さんに豆をぶつけるということですね?」
「違うまめ」
と、ピスオは鬼さんの左むねのところに小さな豆を入れました。
しばらくすると、土で出来た鬼さんが動き始めました。
にんじんくんたちは驚いています。
「おにさんまめ」
「おい、ピスオ! どうやって動いているんだよ!」
「そういうこともあるまめ、さあまめまきをするまめ」
とピスオはみんなに豆を渡します。
じゃがいも男爵は初めて見る鬼の姿にちょっとだけオロオロしております。
「大丈夫であーるか? 怖いであーる」
「平気まめ。ピスオより弱くしているまめ」
みんなはピスオより弱いという言葉に安心をしたのか、鬼さんに向けて豆を投げます。
「鬼は外、福は内。鬼は外、福は内」
鬼さんは豆を投げられてもビクともしません。それどころか豆を食べています。
「うむ! この豆は絶品オニ!」
鬼退治出来ないため、じゃがいも男爵が動揺していると、きたあかり姫が鬼さんに近づきます。
「危ないであーる。きたあかり姫、戻るであーる」
きたあかり姫は豆を手の上に乗せて鬼さんにあげようとしております。
「おなか空いているのね。よかったらこのお豆さんもどうぞ」
鬼さんは喜んでいます。
「ありがとうオニ」
鬼さんときたあかり姫は仲良くなりました。それを見ていたにんじんくんはびっくりしています。
「すごいぜ! きたあかり姫」
「きたあかり姫! 気をつけるであーる! 鬼であーるぞ」
「心配ないよ!」
きたあかり姫と鬼さんは顔を合わせニコッとします。
メークイン王女はじゃがいも男爵を見ながらフフフと笑いました。
「どっちが子どもかわかりませんね」
「我輩は子どもじゃないであーる」
とじゃがいも男爵はちょっと拗ねてしまいました。
ピスオは鬼さんにトコトコ近づいてチョンチョンと触ります。
「どうするまめか? 鬼さんもまめまき一緒にするまめか?」
鬼さんは首を横に振ります。
「ピスオ様、お気遣いありがとうオニ。俺はまめまきのために生まれてきたオニ。だから、みんなの敵のままでいたいオニ」
鬼さんの言葉を聞いたきたあかり姫は悲しそうな顔をします。
「そんなのかわいそうだよ。鬼さんだって痛いのイヤでしょ?」
「姫よ。ありがたきお言葉。ですが、私にとって、鬼退治してもらうことが使命ですオニ」
「そうなの?」
きたあかり姫はなみだをポロポロ流していていると、鬼さんはそのなみだを拭いてあげます。
「私みたいなものに泣いてくださるとはなんて心がキレイな方オニ」
ピスオはきたあかり姫と鬼さんを見ながらコーヒーを飲んでいましたがパチパチと手を叩きます。
「いい豆まきね。豆からゆうじょうという芽が出たまめね」
きたあかり姫と鬼さんが仲良くしていることがどうしても許せないのがじゃがいも男爵のようです。
じゃがいも男爵は頭からポッポーと湯気を出しています。
「きたあかり姫は渡さないであーる」
メークイン王女はじゃがいも男爵の子どもっぽい発言にクスクスと笑っています。
にんじんくんはじゃがいも男爵に近づき、鬼さんに向かって戦うポーズを取ります。
「男爵、きたあかり姫を助けるの俺も一緒に戦うぜ」
とにんじんくんは戦うき満々です。ですが、じゃがいも男爵は戦う気が感じられません。
「我輩は戦わないのであーる」
「どうしただよ!」
「戦うのは怖いのであーる」
ピスオは両手を広げて
「ダメまめね。男らしくないまめ」
と、呆れています
にんじんくんはじゃがいも男爵の体をぶんぶん振ります。
「ならどうするんだよ! これじゃあ、きたあかり姫を救えないじゃないか!」
「大丈夫であーる」
「大丈夫?」
「助けてもらうであーる」
と、じゃがいも男爵は空に向かって叫びました。
「正義のヒーロー【カキーン】助けてであーる!」
すると、お空がピカーンを光、柿のヒーロー【カキーン】が飛んできました。
にんじんくんはお空を飛んでいるカキーンに目を光らせています。
「すごい、すごいぜ」
「ふふふ、正義の名の下に困ったことはぜんぶ解決、僕が正義のしるし、カキーンだ!」
カキーンが決めポーズをすると、ピスオはボタンを手に持ち、ポチッと押します。
するとカキーンの後ろにドーンと爆発します。
「かっけー」
にんじんくんはカキーンに目を輝かせています。
カキーンは鬼さんに向けて言いました。
「おい、てきさん! 僕が君をたおしてやる!」
鬼さんはフフフと笑います。
「たおせるものならたおしてみるオニ」
とカキーンと鬼さんは戦おうとすると、きたあかり姫が鬼さんの前に行き、鬼さんをかばいます。
「カキーン、違うの! 鬼さんは悪い鬼じゃないの。だからたおさないで」
「そんなことないであーる。あの鬼さんは悪い奴であーる。早くたおすのであーる」
ピスオは恵方巻きをもぐもぐしながら見ています。
「じゃがいも男爵がわるものに見えるまめね」
鬼さんはしゃがんできたあかり姫にお話をします。
「本当にありがとオニ。でもちょっとだけ、我慢してほしいオニ」
と、鬼さんはきたあかり姫を抱き上げました。
「フフフハハハハ! きたあかり姫を返してほしければ、私を倒すオニ!」
カキーンはムムムムという表情をします。
「ひきょうだぞ」
「さあたおすオニ!」
にんじんくんとじゃがいも男爵はカキーンを応援しています。
「頑張るぜ!」
「はやくたおすのであーる」
にんじんくんとじゃがいも男爵を微笑ましく見ているメークイン王女。
カキーンはタタタタと鬼さんに近づきます。
鬼さんはきたあかり姫を自分の後ろに隠します。
「ちょっと離れていててほしいオニ」
ときたあかり姫にニコっと笑いました。
カキーンは鬼さんにジャンピングキックをします。
「くらえ、かききききーんキック!」
鬼さんにカキーンのキックが当たり、鬼さんは倒れます。
「ぐわ〜。やられたオニ」
うまく着地をしたカキーンがポーズを決めるとにんじんくんとじゃがいも男爵は大喜びです。
ピスオは恵方巻きのもぐもぐが終わり、鬼さんを見ます。
「勝負はまだまだまめ」
続く