アイドルの価値12
【ペロペロ〜ンの巻】
汐留シオサイト
ミュージック・メガマーケット・プロダクション
エムベック本社ビル 会長室内
その寝室に60代の男と若い女がプロジェクターTVの大画面で特ダネ特捜部隊を視聴中
「何よっこのヤラセ番組わぁー」
「梨木もこんな大それた番組をする様になったんだにぃ」
「そんなんじゃなくて、何で森田プロのタレントだけがギロッポンにいるのよ不公平だわ」
「ムヒムヒッ 坂本あけみを森田の所にやったのが失敗だったかにぃ」
「ふんっ あんな女っウチの事務所に必要ないわよ」
「しかしイイね〜藤原ちゃんのオッパイ、うちのプロダクションもボインちゃんが必要だにゃ〜」
「それって、私へのあてつけかしら水上会長」
「のんのんっ浜田未来はうちのプロダクションを背負って立つ歌姫だしょぉ」
「でも会長は胸の大きい娘が好きなんでしょう?」
「バカだね未来ちゃぁん、そんなの関係ナイナイでしょぉよぉ」
「ホントに〜」
「ホントだしょぉ、未来ちゃんの可愛いオッパイもボキは大好きしょぉ」
『ペロリン』
「キャッ!! くすぐった〜い さっきしたばっかりでしょ」
「ムヒムヒッ」
「ダメよぉ 水上会長ぉ あの番組ブッ潰してくれなきゃ させて上げないんだからぁ」
【ガチャ】
すかさずベットサイドの電話を取り電話をかけ始める会長の水上
「社長にまわしてくれ・・あー里花か、今放送中の特ダネ特捜部隊の放送を止めさせろ」
『でも、お父様 生放送中ですし森田プロのタレントが出演中ですわ』
「かまわん、森田に恩義はあるが番組仕切ってるのは梨木だしょ」
【ピッ】
「これでイイしょぉ」
「嬉しいわ(^^) み・ず・か・み・かいちょう」
「ムヒムヒッ けんちゃんって名前で呼んでほしいしょ」
「やんっ もうセッカチなんだからぁ〜ん」
「けんちゃあっあ〜ん、」
「ムヒムヒムヒッ9月発売の未来のNEWアルバムは盛大にやるしょねぇ」
【ペロペロ〜ン】
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テレビでは番組の延長が決定され、梨木と誘拐犯のやり取りは続いていた。
放送局のムジテレビには、ファンや他局の報道陣より問い合わせが殺到し
電話回線はパンク寸前
なのに何故か警察からの問い合わせは入っていなかった。
「要求を聞こう」相変わらず梨木の迫真の演技? は視聴者を釘付けにする。
僕は鼻を摘んで、ゆっくりと要求を喋りだした。
「ドトールのコーヒーをアイスで4人分」
「どっドトール?」梨木の濁声が裏返る。
「それと・・・」
「そっそれとぉ?」
「種子島宇宙センターに衛星中継車を一台」
「たったっ種子島宇宙センターって、そこに星野くんがいるのかね?」
「黙って話を聞けっ!! 中継車には運転手は一人、宇宙センター内には他の人物は絶対入れるな」
「入れるなって言われても・・・」
「2時間後がリミットだっ、1秒でも過ぎれば星野愛の命はない」
【ピッ】
(クソッ!! 鹿児島の種子島宇宙センターか、ここから何時間かかるってんだよぉ)
梨木は歯ぎしりをしながら悔しがる。
「2時間って、東京から中継車運ぶにしても間にあわないわよ」
藤原紀子がカンター席から降りて、心配そうに梨木に喋る。
「いやっ それは大丈夫、種子島にはロケット打ち上げ時の撮影用で中継車を待機させてある。」
「じゃ時間まで届けることは出来るのね」ホッとした藤原紀子に今度は坂本あけみ
「でも何故 宇宙センターに中継車なのよぉ? 要求って普通は現金とかじゃないのぉ?」
「そんな問題はどうでもイイんだよぉ、ワシが要求時間までに現場にいけないのが問題なんだ」
『なにそれ!!』藤原と坂本が同時に吐き棄てる様に喋る。
「ヘリだと時間的に無理だが、チャーター機なら何とか間に合うかも」ポツリと長谷川修
ニヤリとイヤラシイ笑顔を浮かべると梨木は携帯電話で何処かに連絡をしながら
撮影班と一緒にバーから外へ
その後を藤原紀子と坂本あけみが追いかけていく
「修っちは行かないの?」あけみが長谷川修に声をかける。
「ああっ気になる事もあるし、ここに残るよっ」
「私たちっ森田社長にも言われてるから後追いかけます!!」
梨木リポーターと撮影班、そして藤原紀子と坂本あけみが
ドヤドヤと店外に出ると
そこには4〜5人黒いスーツを着た男たちが待ち構えていた。
「今すぐこの番組を中止しなさい!!」真ん中の男が叫ぶ
「意外と遅かったなぁ〜お前たち!!」
梨木がその男たちに言うと、店の入り口に待機させていた警備員に指示をだす。
「なんなのぉ、この男たち」藤原紀子が梨木に聞く
「あの黒服なら、たぶんエムベックスの指しがねだろうよ」
警備員と黒いスーツの男がもみ合いになった間を縫って
梨木たちが駆け抜けていく。
「予想してるとは、さすがね スッポンの梨木っ」
改めて梨木のしたたかさにビビル藤原紀子だった。
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神谷医院 内
「本当に、こんな要求で大丈夫なんですか・・・?」
僕は半信半疑だった。
「大丈夫に決まってるよっ 何疑ってんだよ拓都ぉ」
正徳が興奮しながら言ってくる。
僕は婦長の息子のアイデアに従って、要求を言っていただけなのだ。
「まだ大丈夫じゃナイヨ、これからが本番なんだから出かける準備してちょ」
その言ったのは、チョット太めの体型に厚めの眼鏡
そして上着のTシャツには、【ローアングル命】とプリントされている男
つまり婦長さんの息子、慎也さんだった。
正徳の話によると、慎也さんは伝説のアイドルブロガー【ゴットシン】だったんだと驚いていた・・・・その話に僕も超驚きだ(汗)
(神谷慎也、神谷でゴット、慎也でシン それでゴットシン ってことぉ???)
「準備オーケーよっ★」何時の間にか星野さんは看護師の仕事着ナース服を着込んでいる。
(なっなんか異常に似合い過ぎなんですけどぉ)
「君たちもこれ着るのよ」そう言って婦長さんは男性用の看護師服を手渡す。
本来なら誘拐犯って事で、尋常じゃないくらい緊迫する状況なのに
星野さんをはじめ、みんなノリノリで準備を進めている。
そして何故か楽しくてワクワクまでしてしまっているのだ。
これが伝説のアイドルブロガー【ゴットシン】のチカラなのだろうか?
僕らは病院で使う搬送用の救急車に乗り込み
ゴットシンの指示する場所に向かうのだった。