おむすび屋、虎さん。 第24話 ルゥナ、ひとりで屋台番
「……虎さん、ほんとうに寝ててください!」
> 「いや、でも、屋台が……」
> 「うごいたら握りませんよ!? 塩むすび、三日抜きです!!」
> 「そ、それだけは勘弁してくれ……」
――こうして、風邪で寝込んだ虎さんに代わり、
この日、ルゥナはひとりで屋台を任されることになった。
◇
「さて……できるかな……?」
炊飯、火の加減、塩の調整――
虎さんのそばで見てはきたけれど、すべてを任されるのは初めてだった。
> 「大丈夫、あたし……虎さんに教わったこと、ちゃんとできる!」
そう呟くと、まるでおまじないのように、手を合わせて一礼する。
◇
屋台には、ぽつぽつとお客さんが来はじめた。
> 「あら、今日はお嬢ちゃんだけ?」
> 「はい! でも、おむすびはちゃんと握れます!」
その日、ルゥナが握ったのは――
“たまごそぼろ”の甘じょっぱいおむすび。
優しい味わい、ふんわりとしたご飯。
彼女の小さな手で握られたそれは、どこか“ほっとする”味だった。
◇
> 「……なあ、嬢ちゃん。これ、どこかで食べた気がする……」
> 「あたしが、小さいころ、お母さんが作ってくれたのに似てる……」
お客の目に、うっすらと涙が浮かぶ。
ルゥナは、はっとして小さく微笑んだ。
> 「じゃあきっと、“記憶のむすび”になったんだと思います」
> 「あたしも、虎さんのそばで、いっぱい“思い出”を見てきたから……」
◇
夕方、屋台を片づけて帰ると、布団の中から虎さんの声が。
> 「……どうだった?」
> 「完売です! でもすっごく緊張しました!」
> 「ふふ、なら合格だ」
虎さんは弱々しく笑いながら、ルゥナの頭をぽんと撫でた。
> 「あの屋台はな、味よりも“気持ち”を売る店なんだ。
お前なら、きっとそれが伝えられる」
その夜、ルゥナはひとりで握ったむすびを持ち、
虎さんの枕元にそっと置いた。
中身は、“そぼろたまご”――
彼女が“はじめて作った味”だった。
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誰かのために握るむすびは、
小さな手からでも、“記憶”と“やさしさ”を包みこむ。




