温泉を探しに行こう。
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夏のお披露目会まであと1カ月となり気温が夏の暑さになりつつある穏やかな陽気の中をカイン達が乗った幌馬車がポートトレビスへ向かう街道をゆっくりと進んでいた。拡張したサツマの耕作地に苗の植え付けが終わり、スパイスの収穫まであと1カ月、小麦の収穫についても2カ月ほどあるため手の空いたこの時期にカイン達は行動を開始したのだ。
御者台でバルビッシュが手綱を握り周囲の警戒をサーシャがしている中、カインは荷台でうとうとと舟をこいでいた。この街道沿いは定期的に騎士団が見回りもしているし、周囲の森に入って中型から大型迄の魔物の間引きも行っているのでそこまで警戒しなくても安全なのだ。
ララは舟をこぎ出したカインの頭をそっと自分の膝にのせて頭を優しく撫で始める、カインもその気持ちよさに抵抗する事なくやわらかな笑みを浮かべつつゆっくりと寝息を立て始めた。
「…しかし、カイン様が求めてやまない”温泉”とはそんなに良い物なのだろうか?ひと昔と比べれば今では毎日浴場で湯に浸かる事が出来てそれだけで十分だと思うのだが…」
「そうですね、私も”温泉”なる物に入った事が無いので分かりませんがカイン様がおっしゃられるのですからとても良い物だと考えていますよ。サーシャとバルビッシュは”温泉”を知っているの?」
ガーディがふと静かに眠っているカインを見ながら疑問を吐露し、ララが答えるのであった。ララが質問したサーシャもバルビッシュも「「知らない」」と首を振って答えカイン以外に”温泉”を知っている者はいないと改めて確認したのだった。
「やはり心配なのが、”神々の導きによって”探すと言う所だな。毎度ながら神々、いや女神様達が関係すると話が大きくなりすぎるからなぁ」
ガーディの愚痴に近い呟きに他の三人も「うんうん」と深く同意する、ガーディは今回こそ何も起きない様にとどの神々とも言わず祈るであったがそれが”フラグ”になっているとは全く気付いていなかった。
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「カイン様?そろそろマウンテンバック砦に到着しますので起きて頂けますか?」
「ううん?えっ、もう到着? あっ、ゴ、ゴメン重かったでしょう?」
カインはララに起こしてもらい自分が膝枕をして貰っていたのを気づき慌てて謝ったのだった。ララはコロコロと笑いながら「カイン様は軽いから大丈夫です」と言い「いつでもお使いください」と付け加えたのだった。
カイン達の幌馬車はマウンテンバック砦の門前で一度とまりバルビッシュが見張りの兵士達と話をした後、特にチェックもなく砦の中に入る事が出来た。以前来た時より入り口の広場には停まっている馬車の数が多く多くの商人達がポートトレビスへ行っているのが分かりカインは少しうれしくなった。
バルビッシュは広場の空いている場所に幌馬車を停止させた、宿泊に必要な荷物だけを持って砦唯一の宿屋に向かった。馬車の数が多かったので予想通り宿屋には多くの宿泊客が併設されている食堂で食事を取っていた。
「…何か変な…」
カインは宿屋に入ると何か違和感を感じボソリと呟く、食堂を見渡しても商人らしき客が複数組いて食事をしているだけなのだが何か変だった。よ~く見直して見るとその違和感に気付く、客層が何かガラが悪いのだ。
通常行商人や商人達は御客や仕入れ先に商品を売ったり、買ったりするので結構小奇麗な格好をしている者だった。着ている服が上等な物と言う意味ではなく、髪をちゃんと切り髭をそって印象を良くするのが常識なのであるが、いま食堂にいる半数以上が商人と言うよりちょっと治安の悪い所で幅を利かせている様な雰囲気の男達の風体なのだ。
カインが気付くくらいなのでバルビッシュ達は勿論入る前から気付いていたが、砦で唯一の宿でもあるし気配から言って全員が一度に向かって来ても問題なく対応が出来ると三人は考え宿の中に入った。バルビッシュが宿の主人と予約していた部屋の鍵を受け取り戻って来たので、四人で食堂に移動した。
「おうおうおう、俺達は客だぜぇ?酒の一杯くらい付き合っても罰はあたるまいよ」
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