第9話 再会と決別
「ペルセウスと比べれば、僕の歌の方がうまいな」
大地を翔けるアルゴス 黄昏系女子の園目指し
……
さて、クジャクアルゴスとペルセウスは、いよいよ海岸へとたどり着きました。
ところが……。
「あれ? 進まないの?」
「いや、俺……」
「あ、もしかして……」
「……」
そう。クジャクが海を泳いで渡る、そんなことができるはずはないのです。
「あーあ、こんなときにヘルメっちがいればなー」
「そうだなーって、だから、そいつを倒しにいくんだって」
「いるよーう」
「へっ……?」
二人が空を見上げると、なんとそこにはヘルメスが……、と言いたいところですが、読者の皆さんはすでにご存知の情報でございましたね。
「お前っ、いつから……、って、あーっ」
「へへーんだ、ペルセウス、いっただきーい」
ヘルメスはペルセウスを奪い取ると、地面へと降り立ちました。
「大丈夫か、ペルセウス。今、その泥棒神をぶっ倒して助けてやるからなあ」
「大丈夫だよ、クジャクさん。これからは僕、ヘルメっちの味方だから」
「ああ、そうかって、ペルセウスてめーえっ」
「ところでヘルメっちさあ」
「何?」
「こいつ泳げないんだから、倒さなくってもよくない?」
「えー、でもそれじゃあ、つまんないよーう」
「どうせヘラ女神がやってきて、僕にまんまと騙されたお仕置きを食らうことになるんだしさ」
「あ、そっかー。僕が中途半端に懲らしめちゃったら、ヘラ女神がアルゴスに同情しちゃって、ちゃんとお仕置きできないもんねー」
「ああ、なるほどなって、おいっ」
「じゃあアルゴスくん、またの機会に相見えよう。君が生きてたらの話だけどねー」
「バイバイ、クジャクさーん」
こうして二人は、哀れなクジャクを海岸へと残し、黄昏系女子の園へと旅立ったのでありました。
「……こうして俺は、一人にーー」
「一人じゃないわよ」
「ひいっ……」
アルゴスの後ろにいたのは、ヘラ女神……、ではなく、アテナ女神でした。
「なんだ、アテナ女神でごぜえやしたか」
「どっちでも同じだけどね、どうせ引き渡すんだから」
「あうー、痛い痛い、離してよーう」
「ヘルメスみたいな声だしてんじゃねえよ」
さてと、次回はたぶん……、アフロディテたちかな。お楽しみに。
「今回は今までにないくらいコンパクトな字数に収まったね。ヘファイストスの影もないし」