第21話 久々に登場、王女さま。
「いよいよ終盤だよう……、ううう……、こら……」
ざっぱーん……。
岩にくくりつけられた残忍な戦争の神アレスの肌に、水のしぶきが飛びかかります。
「グビュウッ、ゲホゲホっ」
そんな彼の様子を眺めながら、岩の上で優雅にハーブティーをすすっている一人の娘。
さて、物分りの良い読者のみなさんはもうおわかりですね。
「あーあ、みっともないこと」
そうです、残忍な戦の神へ意地の悪い笑いを向けているこの娘は、このお話の懐かしの第2話で、語り部である私が、「娘は背が高く、肌は輝くような褐色で、引き締まった身体の線からは若さと健やかさが見て取れました。」という説明をいたしました、エチオピア王女のアンドロメダだったのでございます。
「うるせえな、人間の分際で ーー」
「クジラちゃまーぁっ」
アンドロメダがそう、声を張り上げますと……
ごごごごごっ……、ざっぱーんっ。
「ガオーッ。お呼びですかな、お嬢さん」
凄まじい音を立て、海の底から、鯨の怪物ケートスが現れたのでございます。
「やっておしまいなさぁい」
「ヒイッ……、ちょっと待ってくれいっ」
残忍な戦争の神は声をうわずらせて懇願しますが、
「かっしこまりました。ガオーッ」
ケートスはアレスに噛みつきます。
「うう……、うがごえうどどっ……どうせなら……、一思いに丸呑みにしてくれっ」
「ガブガブ。……ん、そういえばそうだったな……。お嬢さん、たしか海の神ポセイドンさまのお言いつけは、残忍きわまるアレスめを丸呑みにしてしまえ、とのことだったように記憶しておるんですが」
「ふっ、そんなんじゃ……」
王女は唇の端に、魅惑的な笑みをたたえて言いました。
……、手緩いわっ。
よくぞ、この決めゼリフを待ってくれたっ。それでこそ勇者だ、ペルセウスッ。
そして……
神々の使者にして旅人の神でもあるヘルメス神から借り受けた羽の帽子とサンダルを使い、あたかも緑映える森のなかで蜜を吸うハチドリのように空中に浮かんでいる勇者の隣で、彼に貸したのとまったく同じアイテムのスペアを使って同じく宙に浮いている泥棒の神でもあるヘルメス神。彼にも、心より感謝を。
なぜ、と申しますと……
決めゼリフを待つことを知らぬ乱暴女神が今にもケートスに襲いかからんとして暴れるのを、羽交い締めにして必死に押さえつけてくれているのですからね。
さて。次回、おそらく最終話。
連続歴史ドラマの最終回よろしく、ババっと詰め込んでしまう所存でございますっ。
コーゴキタイっ。
「うう……、こら……、暴れないで……よーう……」
「コンチキショーッ、アレスをいじめやがってッ!!!!!」
「もう……げんか……、語り部さん、もう離していい……?」
どうしよっかなーあ。
「うわーん、こないだからかって悪かったよーうっ……」




