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Ⅴ やり直し、僕は辿り着く。

【まえがき】

 小さな括りではルート編、大きな括りでは中学生編が、これにて閉幕です。

 ここまで読んでくださった方、感謝感激雨霰にございます。まとめの話ですので、また改稿するやもしれません。

 思い出しましたら、ぜひまた覗きにいらしてください。


 皆さんの心の中に、温かいものと百合力的な何かがあっさりと香っていれば、冥利に尽きます。


 では、本編です。






 


「……受験が控えているので、遊びは自重するように。それでは皆さん、気をつけて。さようなら」


 受験が近づいてきて、部活だけではなく午後の授業も大方削られる。

 間近だ間近だと、くどくどしく言い訳していたクラスメイトの目の色も、その大部分が必死の赤に変わっていたのは、とても印象深い。

 僕はと言えば、だいぶ前から勉強をしていたせいで、緩急を感じるほどアクセルをかけることが出来なかった。受験という人生の転機への特別な思い入れの有無で言えば、苦悩していた数週間前の方が先生方の評価は良さそうだ。

 それでも、周囲の熱気に充てられてか、幾分かの焦燥は感じていた。

 特筆すべき熱気は、後ろの席の友人からのものだろうか。

「アリス。今日もノアさんのところ行くの?」

「今日も部活無しだし、無論よ」

 アリスはそういう部活の無い日、国立アカデミー進学を決意したノアに勉強を教えているようだった。

 ちなみに、アリスが苦手な科目を教える時は、僕も駆り出されることもある。

「あの子、意外と飲み込みが速いのよ」

「なんか嬉しそうだね、アリス」

「そ、そうかしら?」

 僕がノアの家から帰った翌日、アリスはノアを家に招いたらしい。

 その後二人の間に何があったのか、その詳細は知る由もないけれど、事態は良い方向へ向かってくれたと、感想を述べることは出来る。

「まぁ、でも、そうね。最近は、楽しいから」

「うん。それなら良かったよ」

 アリスの話によれば、メイドとして雇用する形ではあるが、父親にノアを認めてもらえたらしかった。おまけに国立アカデミーへの進学も、縁談話を継続させることを約束に、了承してもらえたと言っていた。

 こんなにも嬉々とした、喜色満面のポーカーフェイス(ひょうじょう)は、今まで見たことがなくて、なんだかとても新鮮だった。

 ただ、最後の最後の会話が、「本当にいいんだな?」「いいわよ」という軽佻な二つ返事だったらしいことに、少し不安は残るけど。

「アカデミー、三人で行けるといいね」

「そうね」

 とにもかくにも、進むべき道はしっかりと見えてきた。

 いや、道は初めから見えていたのかもしれない。

 葛藤が足に絡みつくように蔓延っていて、期待にも似た不安が(もや)となって視界を遮っていて、僕は――僕たちは、進む道を選択することが怖くなる。

 隣の道にはなんの(しがらみ)も無くて、明るく見えて、そちらへ進みたくなる――逃げたくもなる。高みへ上って、不安要素を無くしたくもなる。そうしている間に、本当に進みたい道を見失うことだってある。それが迷いとか戸惑いとか違和感という形で、心の中を埋め尽くそうとしてしまう。

 靄や霧を生んでいるのが誰であるか、重い足枷をはめてしまうのが誰であるか、蹌踉めいてしまいそうになる蔓の種を植えるのが誰であるか、今の僕ならわかる。

 それは他でもない、自分なのだ。

 友人や家族は、そのことに気付かせてくれる存在なのだと思う。

 僕にとってのアリス、アリスにとってのノアが、そうであったように。


『間違ってもいい』


 アリスはそう言った。そして、僕もまた、同じことを言っていた。

 その時の気分に左右されて出た勢いのある言葉であったと、今は思う。

 だけど、それは顰に倣ったような軽薄な言葉ではなく、自分で思って自分で放った、とても重みのある言葉なのだ。

 だから、とても意味があった。

 間違っていることに気付けないのは、自分で選択していないから。間違ってもいいから、自分の『願い』に続く道の方を向いてみよう。

 そこにはきっと願いがあって、弱くても必ず、光を放っているはずだ。

 僕は世界をやり直している。

 でもそれは、道を引き返したのではなくて、高台へ続く脇道から先へと、ちゃんと進んで(・・・)いたのだ。

 見失った光を再び求めることで、僕はそのことに気付けた。

 これから僕は『二十二人』の死を背負って生きなければならないのだろう。

 だけど、僕はもう、何もせずに立ち尽くしていた、光を見失っていた、あの時の僕じゃない。

 僕は今を生きている――これからを生きていく。僕にできることを精いっぱいやって、少しでも明るく、今よりもっと輝けるように力の限りを尽くす。

 でも、もしかしたら、責任を問われることだってあるかもしれない。それだって、他人からすれば、当然の願いなのだから。

 「返して」と言われても、僕にはできない。「戻して」と言われても、僕にはできない。

 だけど、その『願い(こえ)』は、確かに聞こえてくる。

 僕はその時、その人たちにとる、光になっているのだと思う。

 今はまだ、誰かの道を照らせるほど明るくはない。

 けれど、いつかは、その声を聴いて、確かに輝けるよう。

 僕は言う。



「僕があなたの願いを叶えるよ」



     ×××



 アカデミーの合格発表日。

 僕たちは笑って、そして、涙した。

 笑顔の輝きが涙で乱反射して、僕たちの進む道が明るく照らされる。



【あとがき】

 中学生編、これにて閉幕です。

 初めは原稿用紙二十枚程度の短い話を想定していましたが、まさかこれほど長く(文字数換算で原稿用紙四百枚ほど)なるとは……。

 書き始め当初、「あれ? これってW○XOSSとかまど○ギと似てる……?」と戸惑っていた自分が懐かしいです。その点は、色恋沙汰で結構解消できたと思います。


 中学生編中学生編と言っているあたり、想像はつくと思いますが、あります。

 そうですアカデミー編です。

 やりますアカデミー編。


 急な話が多かった中学生編だったので、アカデミー編ではもう少しライトノベル的なイベントも増やしていこうと思います。新キャラも出したいところ。

 女の子同士の恋愛のほとんどは、長い年月と葛藤を経て煮詰まって、やっと成就するものである(と勝手に思っている)ので、アカデミー編ではそう言ったところも表現していきたいですね。

 触れられなかったリズ編、ノアの事情、ルートの秘密、『願い』の夢、アリスのこれからなどなど、色々な問題が山積み。

 でも、まあ、はい、アレです。

 そう言う感じで、やっていきましょう。


 それでは今章最後に、重ねて御礼申し上げます。

 「ありがとうございました!」です。



 次回は、次章『アカデミー編』突入。

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