〖ready〗明くる日も明くる日も、春。
【まえがき】
第二章『アカデミー一年生編』が始まりました。多分、色々なイベントがあるので『アカデミー一年生編 その二』とかあり得そうです。
プロットを練りに練っており、まだ本編を書いていないのですが、「早く載せたい!」と思い、とりあえずさわりとして〖サブエピ〗挟みました。
「じゃ、またの」
彼女はそう言うと、すぐに校舎の方へ向き直った。
生温かい中に冬の厳しさを残したような乾いた春風に、茶けったショートヘアーが靡く。同じ風に乗せられて舞い散る花びらの鮮やかさが、威風堂々と向けられた背中の向こうに奥行きを感じさせる。その色を映して衒う、彼女の髪には、また別の、一種の郷愁のようなものを感じる。
僕は、そんな光景を前に、どこか心の中で〈もしかして、失望されたのだろうか?〉と、疑心に駆られる。
それを表に出すまいとした結果が、淡白な別れだった。
でも、その背中――物悲しいような、何かを求めるような、そんな背中を見ても、何かを悔いるような気持ちは芽生えなかった。
それが、さらに僕の焦燥に拍車をかけていた。
〈一体どうすれば……〉
雲をつかむような無価値な逡巡に、始まりの春は答えをくれた。
何もかも始まったばかりなのだ。彼女との付き合い方も、これから決めていけばいい。今日の勝敗が全てを決めるわけではない。
温い風が優しく頬を撫でるように、ゆっくりと吹き抜けてゆく。それからワンテンポ遅れてやってきた新緑の芳香に、思わず目を瞑る。
僕にも、彼女にも、等しく風が吹いている。
平穏に、確かに、現実に。
だから、僕は彼女の表情を見ることができなかったのかもしれない。
違いを見つけるのが怖いから。人と違うことは怖いから。
でも、それはきっと、彼女も同じだと思う。
なら、僕は手を差し伸べる。
求められた『また』に、僕もまた、『また』で応えよう。
「また明日――
僕が見た彼女の表情は、舞い散る花と同じ。
とても綺麗だけど、しかし儚くて、多分に寂しさを含む。
これからの新しい自分を素直に歓迎できずに、美しかった過去に打ちひしがれる。でも、少なくとも未来への希望を抱いてもいる。変わることが怖いけど、今のままいることも怖い。
矛盾する感情を一緒に持っている、不安。
僕が苦悩してきた違和感のように、答えは存在せず、正しさもない。
でも、彼女は僕とは違った。
きっと、彼女は迷ってなどいないのだと思う。
だから、こんなにも美しい。魅力的に感じる。見ていたいと思える。
周囲に感銘を与える艶めく花の色も、それを陰から見守り飾る葉の色も。すべての色には必ず意味がある。
彼女は、微笑む。
その青緑は真っ直ぐに、カラフルに彩られた未来を捉えて。
――サクラ」
それが、その花の名。
【あとがき】
一人書いたら次、また一人書いたら次、というふうに書いているので、おそらく、アップする時は、いっぺんに五話くらいになると思います。
次回は本編に入っていきます。
新しい環境になるので、作者の方も心機一転して書いていきたいと意気込んでおります。




