嗟嘆の恐怖⑯
「疑問とはなんだ?」
嗟嘆は、気軽に問うた。
あるいは、気楽に。
格下や低学年を相手にしたときのように。
軽い気持ちで。
「舞子には嗟嘆の姿は認識出来なかったはずだが……。なんで急にみえるようになったんだ?」
「愚問だな。それは」
ふっと、唇に笑みをもらして、
嗟嘆は重い口を開いた。
「少しばかし、俺が本気になったからだ」
「本気?」
犬飼颱は、肩すかしをくらったような気分で、
「なんというか、まあ、想像よりもずっと抽象的な意見だな」
と。
あいまいに返事をした。
「そうだな。たしかに言を濁した」
訂正してやるぞ、雑魚。
嗟嘆はにやりと――やはりどこかに余裕を残しながら、
「俺たち霊体は姿をみせようとすればみせられるし、みせようとしなければみせられないのだが、それは知ってるか?」
「知識としては知ってる。ただし感覚的にはよくわからねー」
なんか。
出美亜嘆からそんな話を聞いた気がする。
よくわからないから、流して聞いていたように思うが。
「なるほどな。それくらいの知識か」
そろそろバトルモードに入りたいから、手短に説明するぞ。
そんな風に、前置きをしてから。
嗟嘆は手短にいった。
「要は認識のズレだな。普段は背景と同化して、常人には気づかれないように出来る。それが霊体の特性」
「…………?」
よくわからんという顔をしている颱に、
「まあ端折っていえば、影が薄くて気づかれない能力だ」
「なるほど、それで?」
「俺が、貴様の彼女に認識させなかったのは、それのグレードアップバージョンを使用していたからに他ならない」
「ふーん」
だからなに。
と。
颱は悪びれることなく、
「つまりさ、嗟嘆の能力は――認識を誤らせる能力ってわけだ?」
「いいや、ちがう」
揣摩憶測というか――ただの憶測ではあったが。
それはあっさりと否定された。
ちがう、と。
「俺の能力はそんなものではない。というか、それはただの付加価値みたいなものなのだ。たとえば――畄嗣覇阿の能力が一つではないように、俺の能力も一つとは限らない」
畄嗣覇阿。
最上級の才色兼備。
悪魔界序列第四位。
仲間内でも最強として、一目置かれる存在。




