鼎立するのか、部僂是武舞と萬捫の交渉
「これまた、奇異なことをいうな……。なぜ地縛霊を守るんだ?」
部僂是武舞は、食べる手を止めて、紙ナプキンで口元を拭いた。
「強いていえば、可能性だ。俺らトップセブンのなかで、お前と戦闘能力が拮抗しているやつといえば、だれだ?」
力が五分五分なのは、部僂是武舞との序列が近い――。
「怒れる獅子――嗟嘆だろう?」
「そう、嗟嘆。やつはここのところ静かにしているが、そろそろお前の寝首をかきに来る頃だ。あいつが二番手にとどまって、それをよしとするわけがないからな」
悪魔界序列二位。
怒れる獅子――嗟嘆。
「なるほど」
「だからこそ、出美亜丹よりも強い地縛霊を味方に引き込めば、後々のバトルも優位になるばずだろう? 結局は嗟嘆をぶっ倒すはめになるんだからな」
「よくわかった。うまい話だ。それで、それをすることにより生じる、お前のうまみはなんなんだ?」
三杯目となるバナナオーレを飲み干して、部僂是武舞は尋ねる。グラスを置いて、氷を噛み砕きながら。
「うまみ、ね。それは……」
冷めた目で、萬捫はいった。非常に非情なことを、異常なくらいに落ち着いた口ぶりで。
「お前と地縛霊と怒れる獅子が鼎立して、お互いに潰しあってくれること……かな」
「…………? 理解に苦しむな」
「要はお前ら邪魔だから相討ちにでもなって死んでくれってこと。畄嗣覇阿はともかくとして、自分よりも強いやつらがいると思うと、気持ちが悪いんだよな……」
部僂是武舞はテーブルをだあんと叩いて、
「なるほど、それは断れないな。うまい話だ」
「わかってくれて嬉しいぜ」
両者はレジカウンターへと歩いていった。
部僂是武舞が条件をのんだのには、もちろん理由があった。今回の話し合いにはポイントが三つある。
一つ目のポイント。
地縛霊――犬飼颱を擁護しろ。
この条件はそこまで難易度が高いとは思えない。なんとか地縛霊が逃げる隙をつくってやればいいからだ。嗟嘆と自分は実力が伯仲しているし、これは楽な任務であろう。
そして二つ目のポイント。
嗟嘆をぶっ倒す。――これはいつかはやらなければならないことだった。やらなければやられるからだ。 だから、萬捫の策に乗っかっても損はない。
で、最後の三つ目。
三つどもえになって、全員が死ぬ。
これはさすがにあり得ないだろう。だれか一人は生き残るはずだ。萬捫も比喩的に使った言葉だろう。
この三点を結びつけて考えてみれば、萬捫に得はないが、うまいものを食べさせてもらえる自分には利がある。
こうして部僂是武舞は共闘を誓ったのだった。
ただし。
――当然のことだが。
欲張り詐欺師の異名をとる萬捫のことだ。
部僂是武舞がそこまで考えて承諾することは、彼にとってはむしろ予測済みであった。




