悔やみと恨みの回想
悔恨編スタート。
過去編――。
禍根編――。
掘り下げて、掘り返すだけの昔話――。
それはさらに続き、新たなる過去編へと突入する。
出美亜丹の後悔に満ちた、満ち足りない過去が、いま明かされる。
悔やみと恨みの、悔恨編――スタート。
出美亜丹が生前に付きあっていた交際相手は、私立大学医学部のエリート学生だった。
その大学生の目鼻立ちは整っていて、ナチュラルに寝癖をハネさせたような髪型をしている。私服は細身のジーンズに、適当なTシャツを着ている。
当時まだ高校生だった出美亜丹は、進学にするか就職にするかで悩んでいた。そんななか、彼に出会ったというわけだ。
最初に会ったとき、彼女は深夜の風俗業で、なんの感情もなく、ただただ事務的に接客をしているだけだった。
それでも彼に、異彩を放つ点があったとしたら、性的な意味で嫌らしい態度をとらなかったということにある。
身体に触れないのはもちろんのこと、下品な話はいっさい避けていたし、出美亜丹の悩みを親身になって聞いてくれたりもした。
彼女の家は農家でまずしく、進学よりは就職を勧める傾向にあったのだが、
「学歴や肩書きには意味がないよ。そんなしがらみには縛られないほうがいい。だけどそれでも自分が進みたい道があるのなら、大学へ行ってもっと勉強がしたいのなら、そっちへ行くべきだ。奨学金でもなんでも借りてさ――」
彼は真逆な建設的意見を述べた。
出美亜丹も彼の意見に同意した。そのために、深夜営業のアルバイトを続けていたのだから、尻を叩いてもらった気持ちになる。
それからというもの、出美亜丹は勉強にアルバイトに恋にと、とにかくなにごとにも精根を尽くしてがんばるようになっていた。
辛いときや勉強につまずいたときは、真っ先に彼にメールをしていた。
いつのまにか彼とは店ではなくて、自宅で会うのが通例になった。
――楽しかった。
出美亜丹はいまでも思う。
――そのときは幸せだったなと。
そして悲劇はおとずれる。




