霊体バトルの特性
「ひとつだけ、質問をしてもいいか?」
水には浸からず、川辺で質問をする犬飼颱。
化け物は蛇のように水中をはって進み、水の引いた砂利のところで移動をやめた。
戦闘になることを予感した彼は、手刀で切りつける準備をした。間合いをとって、いつでも対処できるように身をかがめる。
カマイタチは使わない。
襲ってきたとき、使用すると決めた。
蛇の化け物は尾ひれをたくみに操作し、地面を打った。石礫を犬飼颱にぶつけようとする。
対する犬飼颱は微動だにせずに、その様子をぼうっと眺めている。腕が使えないにしてもフットワークで 避けられそうなものだが――。
しかし、その必要はなかった。
風によって防御されているのだ。当たるはずがない。
犬飼颱はなにもしないまま、とうとう相手の攻撃を防ぎきった。
それは彼女もわかっていることだったようで、変身を終えた人間の姿で、
「質問ってなに?まだなにかあるの?」
少女は尋ねた。長髪で豊満なバストを持つ、人間版の彼女である。
「盛大にバトるのは結構なんだが、そんな異形な蛇みてーなかたちして戦ってたら、そのうち通報されるんじゃねーか? いちおうガキの喧嘩を装わねーと……」
「大丈夫だよ。そんな配慮なんかしなくても、十分存分に異世界異能バトルだから」
「そりゃそうだな。俺もナイフとかふつうに投げつけてたし……」
「お互い様だね」
うふふと笑って、出美亜丹は手櫛で髪の毛を整える。シャンプーの香りが犬飼颱の敏感な鼻腔を刺激した。
「だったらなおさら、ここでバトり続けるのはまずいな。場所を変えよう」
慌てる颱とはちがい、出美亜丹は表情ひとつ変えない。むしろ柔和になっているくらいだった。
「不思議じゃない?ここが通学路の学生は、多かれ少なかれいるはずなのに、だれも私たちをみていない」
「急いでて、気がつかねーんじゃねーの?」
「ちがうよ。私たちが『霊体』だからだよ」
「…………」
「霊体は注意してみればみえるんだけど、意識してみようとしなければみえないんだよ。ただし、みせようとすればみせれるんだけどね」
「――意味がわかんねーんだけど!」
「要は霊媒体質でもない限り、私たちのバトルは一般人に知られることはないってわけよ」
「へえ」
「たとえば、私がコンビニから出てきたとき、私に気がついたのはあなたの彼女だけだったし、あなたも部活の勧誘は彼女くらいにしかされてないんじゃない?」
「……たしかにそうだが、俺はふつうにふつうの転校生として、全校朝会に参加出来たぞ。みんながみてるなかであいさつもした」
「だからいったじゃん。みせようとすればみせれるって」
「…………」
「だけど、彼女がここに現れたらヤバイよね。死んでもらわなきゃいけなくなるよ」




