地縛霊の犬飼颱VS妬み嫉み恨み羨みの出美亜丹(過去)
「妬み嫉み恨み羨みの出美亜丹。悪魔界序列は第三位よ。ムカつくからあんたを地獄に突き落としてあげる」
眉毛にかかるくらいの前髪と、肩にかかる長さの後ろ髪をなびかせて、出美亜丹は宣戦布告をした。
犬飼颱は身構えた。それだけで、彼女の身体は八つ裂きにされた。服は無秩序に破れ、膝頭からは少々出血がみられた。
「なんだ、お前。地獄ならとっくの昔に体験したぞ!」
まるで音速。
それくらいの速度で出美亜丹との距離をつめて、犬飼颱は手刀で切りつける。
彼女は両腕で防御をしたが、やはり出血と擦過傷が確認できた。
「…………」
出美亜丹はたちまち防戦一方へともっていかれた。とりあえず距離をとって、息を整える――
――暇なく、攻撃がきた。
さっきは手首のスナップを利用した手刀だった。今度は腰をひねり、肩を後方にひいている。
威力の差は歴然としていた。
これは……まずい。
「避けるか受けるか、どちらを選んでも死ぬわ。だから……」
手刀がふりおろされる。
「って、逃げる……いとまも……ない」
ザンッ!
大地を切り裂くような衝撃が走る。
が――
霊界のバトルは人間界には反映しない。
背景はなにごともなかったかのように、無事だった。
しかし出美亜丹は無事ではすまなかった。
彼女は斬首刑後であるかのように首がなくなり、ところどころの肉はえぐれて骨がのぞいている。
こうして犬飼颱は、ふつうに勝利したのであった。




