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三姉妹。美香と光子と優子の物語  作者: リンダ


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226/230

メダル獲得

夕食



晩秋の仙台・夕食会場。

テーブルに牛タンどーん、麦めしつやつや、テールスープ湯気ぼわ〜、端っこに笹かまとずんだ小鉢。


さおり「見てこの厚み。写真が先か、胃が先か」

樹里「胃が先」

しおり「異議なし」

優子「ほんなら——いただきます!」

光子「うまっ。これ明日の分の元気まで入るね」


ひとしきりワイワイ食べたあと、テーブルの端で家に電話。


――スピーカーON。

お母さん『もしもし? どうやった?』

優子「金賞と特別賞、二年連続やったよ!」

お父さん『やるやん! よし、帰ってきたらおでん増量しとく』

光子「おでんのちくわぶ倍でお願いします」

お母さん『買うたことなかけど、探してみるわ(笑)』


通話を切って、今度は美香へビデオ通話。

映った瞬間、画面いっぱいに春介&春海のドアップ。


春介『おねえしゃん! いちゅ帰って クリュ?』

優子「明日の夜には帰るよ〜」

春海『あちた?』

光子「うん、あしたの夜。おみやげもって帰るけん」


そのとき、後ろから女子部員がひょこひょこ画面にIN。

春介、顔をパァーッと輝かせて——

『はいぱー ゆうわく うぃんく!』→極上投げキッス、三連。

女子部員「きゃー! かわいか〜!」「心臓がぴょん」

しおり「牛タンより効く」

さおり「ずんだより甘い」

樹里「表現の癖」


春海(冷静)『はい、きょうは ここまで』

春介『え、しょーと?』

春海『ながいと きく(ドヤ)』

優子「監督、さすがやね」

光子「効き目の管理が完璧」


美香「ちょい代わって〜」と画面の向こうでチェンジ。

美香『おつかれ! どうやった?』

優子「金賞ゴールド、そして審査員特別賞もゲット!」

美香『すごっ! ほんとよう頑張ったね。春介、春海、言うことは?』

春介『おめでとー!』

春海『ぎゅー(画面越し)』

光子「受領。元気フル回復」


ここでなぜか即席コント開始。

優子「ただいま受賞記者会見をはじめます。質問ある方〜」

春介バナナをマイクに『きんしょうは おいしいですか?』

光子「味はせんけど甘い」

春海『もなか と いっしょ?』

優子「そう、それ! “白松がモナカ”と同じくらい甘い」

女子部員(後方から)「じゃ、帰りに勲章ミニ配給で!」

一同「賛成!」


美香『帰ってきたらみんなでお祝いしようね。お父さん(アキラ)も張り切っとるよ』

優子「ありがとう。明日の夜、ただいま言いに帰るけん」

光子「春コンビ、寝る前の歯みがき忘れんごとね〜」

春介『はみはみ!』

春海『ちぇっく!』


通話終了。テーブルに笑いがしばらく残る。


さおり「……よし、デザート、ずんだ餅追加で」

樹里「別腹、開通」

しおり「明日の体重計は見ない」

優子「見てよ」

光子「見た上でモナカは食べる」


皿が空になるたび、達成感が静かに増える。

窓の外は晩秋の仙台。

笑い声もお腹も満ちたら、自然と背中が軽くなった。


優子「……ほんと、ありがとね、みんな」

光子「うん。帰ったら“ありがとう”巡りしよ」

さおり「まずはおでん(増量)」

樹里「そして笹かま反復」

しおり「モナカは朝練後」

一同「決まり!」


牛タンの香りが最後まで名残惜しくて、コートにちょっとしみ込んだ。

その匂いごと、明日の夜、博多に連れて帰る。

——受賞の余韻と、土産袋と、画面越しの“おめでとう”。

全部ぎゅっと抱えて、笑いながらホテルへ戻った。




仙台最後の夜




ホテルの部屋に戻ったら、廊下のカーペットがふわふわで足音まで上機嫌やった。

カギを回して「ただいまー」。ベッドにダイブしかけた優子の襟首を、光子がすんでのところでキャッチ。


優子「あと3センチで楽園やったのに」

光子「毛布は逃げん。先に明日の段取りだけ確認しよ。

明日:仙台発の“やまびこ”→東京駅→羽田→福岡、ね」

優子「はい、知っとーよ。やまびこ……呼んだら返事してくれる新幹線やろ?」

光子「車内で叫ぶなや。心のやまびこで我慢ばい」


スーツケースを開けて、お土産の白松がモナカ(ミニ)が行儀よく並ぶ。

さおり「これ、ほのかちゃん用にリボン付けよか?」

樹里「春介・春海分は“宿題したら一個”シール貼っとく」

しおり「貼っても笑顔で二個もらいに来るけどね」

優子「**監督(春海)**が止めるけん大丈夫」


男子からグループLINEがピロン。

〈牛タン食べすぎて眠い。おやすみ〉

〈氷枕、神〉

〈わたしは今、布団と結婚します〉

女子一同「もう落ちとるやん!」


窓を少し開けると、晩秋の仙台がひんやり入り込んできて、カーテンがちょいと踊る。

「恋バナ会議、開廷!」と、さおりがクッションをバンと抱えた。


優子「はい。拓実とは“公園+パーカー”で薄口デート予定。

この“薄口”が塩梅よかけん、勝手に濃くしないこと」

しおり「勝手に濃くしたら、うちらが水で薄める」

樹里「水当番がんばる」


光子「うちは翼。妹のほのかちゃん、春介にぞっこんやけん、わたしは観賞用で平和に進行中」

さおり「平和条約」

光子「条約の印はモナカ半分こ」

優子「甘いは正義」


さおり「で、わたしは——奏太に“将来の予約”入れました。成功。

今は彼氏彼女ステップを踏む。替え玉は彼の奢り。以上!」

一同「拍手ー!」

樹里「報告うまい。議事録いらん」


笑い声が一段落したところで、廊下から男子部屋の合唱が微かに聞こえてきた。

「……スー…ゴー…スー…」

優子「三声ハーモニーのいびきやん」

光子「起こすな。今日は勝ち組の眠りよ」


ベッドの上に座って、明日の服を足元に並べる。

さおり「東京駅で迷子禁止ね。八重洲と丸の内で反対向かんごと」

しおり「それ言いよったら、ほんとに迷子になるジンクスやけん、ワクワクの話に変えよ」

樹里「じゃ、羽田着いたら**滑走路見て“でか!”**って言う」

優子「言う。心の声で。」


そこへ、翼と拓実から短いメッセ。

〈明日も無事で帰ってこい。土産は笑顔〉(翼)

〈荷物重かったら言え。駅で拾う〉(拓実)


優子「……こういう短文、刺さるね」

光子「長文より効くときあるもんね」


しばらくして照明を一段落とす。

テーブルの上には、笹かまの箱、カモメの玉子の袋、そしてモナカの塔。

優子が小声でつぶやく。「この山、幸せの形やね」

光子「うん。みんなで積んだ山やけん」


枕に頭を置いた瞬間、ドアの向こうでさっきの三声いびきが消えて、かわりにエレベーターの「チン」。

しおり「やまびこって、呼ばんでも夢の中で返事しそう」

樹里「わたしの夢、牛タンが走るやつになりそう」

さおり「追いかけきらんやつやん」


優子が布団の端を引き上げて、光子を見る。

優子「ねぇ、帰ったら“ありがとう巡り”ばい。先生、家族、後輩、みんな」

光子「もちろん。“ただいま”と“ありがとう”、両方いっぺんに言う」


部屋の灯りが落ちて、仙台の夜だけが残る。

遠くの道路の音も、上の階の足音も、今日はどれもやさしい。

目を閉じる直前、優子がぽそっと。

「やまびこ、ちゃんと福岡まで“おかえり”返してね」

光子「返すよ。うちらが**先に“ただいま”**って言うけん」


——その数分後。

男子部屋:完全沈黙。

女子部屋:恋バナ→笑い→小さな寝息。

仙台の夜は、金賞の余韻といっしょに、すーっと落ち着いていった。





帰福





朝、ホテルの部屋。カーテン越しにうっすら明るい。


優子「おはよ〜……て言いよるけどさ、うち今ここで横んなったらあと二時間は余裕で寝らるっちゃん」

さおり「そんときは、うちの“極上ハイパーこちょこちょ”発動するけんね! 覚悟しときぃ」

樹里「それ効きすぎるけん、マジで勘弁して。笑い死ぬ」

光子「はい起床! 顔ば洗って朝ごはん行こー。寝ぼけたままでも歩けるやろ?」


――朝食会場、トレー片手に。


優子「パンもご飯も、今日は両方いくけんね。記念日やけん胃袋が働いとー」

光子「味噌汁が体にしみるねぇ。これで半分は人間に戻ったばい」

しおり「ずんだの小鉢、朝から優勝やん。甘さがやさしかぁ」

樹里「食べたら即出発ね。時間は待ってくれんけん」


――仙台駅、ホーム。


さおり「やまびこ来たね! 緑がつやつやで可愛か〜」

優子「心の中で“おーい”て呼んだら、“おーい”て返ってきた気がするっちゃん」

光子「はい幻想はよかけん、乗り込むよー。席と荷物、確認してね」


(乗った途端、男子部員はコトンと寝落ち)


しおり「寝落ちの早さ、世界記録やね」

樹里「いびきが三種類あるっちゃん。でも今日は許す」

優子「録音してBGMにしたら怒らるるけん、やめとくわ」

光子「車窓の紅葉、きれいやね。仙台、ほんとお世話んなった」


――東京駅で乗り換え。


さおり「今日は八重洲口で動くけん、みんなついて来りぃ」

しおり「この言い切り、めっちゃ助かる。迷子ゼロで行こ」

樹里「浜松町でモノレール乗り換えね。羽田の滑走路、近くで見れるとワクワクするばい」


――羽田・保安検査。


係員「メダル、少しだけトレーにお願いします」

優子「あ、すみません! でもちょっと誇らしかね」

光子「金色は預けても、誇りは首から外さんけん」


――搭乗口前、お土産最終チェック。


光子「“白松がモナカの塔”、無事やね。箱、崩れとらん」

さおり「笹かまの角、元気やん。角生存確認」

しおり「“かもめの玉子”、数そろっとるよ。逃げたやつはおらん」

樹里「お土産が逃げんでよかった(笑)」


――離陸直前、窓側。


優子「仙台、ほんとありがとう。うちは福岡で“ただいま”言うてくるけん」

光子「喜びと“ありがとう”ば、まるごと持って帰るよ」


(機内、数分で全員こくりこくり)


――福岡到着、ターミナルを出ながら。


優子「帰ってきたね、福岡! まず“ただいま”言いに行こ」

光子「“ありがとう巡り”始めよ。先生→家族→後輩の順で回るけん」

さおり「配る順番、うちが仕切るばい。袋は分けとる」

しおり「甘いもんの比率は八割でよかろ?」

樹里「よかよか。足取り、軽か〜」


優子「全国は通過点やんね。でも今日の“ただいま”と“ありがとう”は、今だけの宝物やけん」

光子「うん、また明日から日常で強うなるよ。そいがうちらのやり方やけん」


(キャリーのタイヤがコロコロ鳴って、みんなの笑い声がふわっと混ざる)





出迎え




福岡空港・到着ロビー。

プラカードと拍手の波の真ん中で、見知った顔が一気に花開いた。


春介&春海「おねえしゃーん! おかえりー! だっこー!」

優子「ただいまー! よー来たね、重たなっとるやん!」

光子「ぎゅーするけん、順番ね。押さんどってよ〜」

春海「はいぱー うぃんく!」→(極上投げキッス)

女子部員「きゃー! かわいか〜!」

春介「きんしょう さわって よか?」

優子「見るだけな! ほら、光っとーやろ」


父・優馬「おかえり! ようやったなぁ」

母・美鈴「ほんに立派、鼻高か〜! 晩ごはん、おでん増量しとーけん」

アキラ「おつかれさん! 春コンビ、整列して敬礼!」

春介&春海「けいれい! おめでとう!」

美香「泣く前に写真撮るよー。はい、笑顔ー!」


そこへ学校関係者が到着。横断幕が広がって、ミニ・セレモニーが始まる。


教頭先生「福岡高校吹奏楽部、二年連続の金賞に加え、審査員特別賞、おめでとうございます」

前原先生「みんな、胸張ってよか。……でも帰ってきたら“いつもの顔”でよか。ほんと、おつかれ」


PTA代表の保護者「うちの子ら、帰りのLINEが“牛タンおいしい”しか来んやったけん安心したばい(笑)誇りです」


花束が二つ、光子と優子の手に渡る。

拍手の中、優子が一歩出て、くっきり笑った。


優子「ただいま。みんな、ありがとう。うちらの名前ば呼ばれたばってん、あれ、全員の名前まとめて呼ばれたっちゃけん。誰一人かけても、ここまでは来れんやった。……ほんとに、ありがとう」


光子「部長・副部長はたまたまうちらやけど、引っぱってもらったのはうちの方やけん。前向いて、同じ方向に歩いたけん勝てた。後輩たちも、胸張ってよかけん。……みんなで取った賞やけんね」


「おーっ!」と円になって拍手。

後輩たち「先輩、おめでとうございます!」「うちらも続くけん!」


春介「はい しつもーん! ぜんこくは、ぜんぶの くに?」

優子「だいたいそげん。いーっぱいの学校の前で、大きか“おはよう”置いてきたと」

春海「おはよう、で かった」

光子「そうそう、朝は強かけん」


保護者たちがスマホを掲げて撮影タイム。

父・優馬「ほら、もう一枚!」

母・美鈴「泣くなら撮ってからにしぃ」

アキラ「春介、春海、最後に“おめでとうジャンプ”!」

春介&春海「せーの!(ぴょん)」

女子部員「かわいっ!」

前原先生「よし、解散! 荷物は壊さんごと持って帰るぞー」


空港の自動ドアが開いて、福岡の空気がふっと入ってくる。

光子が花束を抱え直して、振り向く。


光子「さぁ、まずは“ありがとう巡り”やね。先生、家族、後輩……順番に会いに行こ」

優子「帰り道の“ただいま”も、ぜんぶ言う。それから——おでん!」


母・美鈴「はいはい、腹ぺこ隊は前へ。ちくわぶ探し回ったけん、ありがたく食べんしゃい」

父・優馬「祝杯はコーラでな!」

アキラ「モナカはデザートやけん、並べ替え担当はオレ」

美香「了解、会場はリビング。春コンビは応援旗用意」


春介「はいぱー うぃんく!」

春海「おうちで つづき!」


笑い声と拍手に送り出されて、スーツケースのタイヤがコロコロ前へ。

金色の結果も、花束の色も、みんなの“おかえり”も、ぜんぶ連れて家路についた。




帰宅




玄関の鍵がカチッ。

優子「ただいまー!」

光子「帰ってきたよー!」


リビングの扉を開けたら、湯気と出汁のにおいがぶわっと広がる。テーブルの真ん中におでん鍋、脇に笹かまと白松がモナカとかもめの玉子が整列。


春介・春海「おねえしゃーん! おかえり! だっこー!」

優子「ただいま〜。重たなっとるやん、筋トレやん!」

光子「順番やけん、押さんどってよ〜」


優馬(お父さん)「よう帰ってきたな! ほんと、ようやった」

美鈴(お母さん)「今日はおでん増量やけん、腹ば据えて食べんしゃい。ちくわぶ、探して買うてきたとよ」

アキラ「座れ座れ〜。先に一枚、記念写真いくよ!」

美香「春介、春海、ピースは顔の横ね〜。はいチーズ!」


春介「きんしょう、さわってよか?」

優子「見るだけね。首にかけたらキリンになるけん、いかんよ」

春海「きりん、にあう(ドヤ)」

光子「似合うけどダメ〜」


美鈴「ほんなら乾杯。今日はお茶で——おつかれさま!」

全員「おつかれさまー!」


家内“受賞”記者会見(司会:アキラ)


アキラ「ただいまより、小倉家・凱旋記者会見を開催しまーす!」

春介バナナをマイクに「しつもん! きんしょうは、おいしか?」

優子「味はせんけど、気持ちはモナカ級に甘か」

春海「とくべつ賞は?」

光子「笹かまみたいに、噛むほどじわっと来ると」

美香「表現がうまいね〜」

お父さん「詳細は食べながら聞こうか」


おでん大合戦


美鈴(お母さん)「卵は一人ひとつ、牛すじはじゃんけん、ちくわぶは仲良う分けりぃ」

優子「牛すじはうちが——(じゃんけん即負け)うそやろ!」

光子「負けた人は大根増量。大根は正義やけん」

お父さん「はふはふ……しみるねぇ。金賞の味たい」

アキラ「春介、からしは危険やけん触らんよ」

春介「きいろ きれい!」

美香「見るだけ! 匂うだけ! 舐めたらいかん!」

春海「しゅっ(からしチューブ、即回収)」

光子「監督(春海)、仕事が早い」


メダル超瞬間試着


お父さん「ちょっと貸してみぃ」

(胸にかけた瞬間、目尻がゆるむ)

お父さん「重みがよかねぇ……」

お母さん「あなた、泣きよる?」

お父さん「これは汗や、室内の湿度」

春介「ぼくも!」→(かけようとして即ストップ)

優子「一瞬だけ! よし終了!」

春海「きりん化、ぼうし」


ちょいシリアス一口分


優子「……お父さん、お母さん、ほんとありがとう。うちらの名前ば呼ばれたばってん、あれ、みんなの名前まとめて呼ばれたっちゃけん」

光子「誰ひとり欠けたら、今日の“ただいま”は言えんかった。育てて送り出してくれて、ありがとう」

お母さん「はい、一回泣いてスッキリしたら、また食べんね」

お父さん「泣き笑いが一番うまかけん」

美香「帰ってきたら、家が一番うるさくて一番落ち着くね」

アキラ「おでん、まだまだあるけん遠慮せんで」


ちびっ子・ウィンク砲


春介「はいぱー ゆうわく うぃんく!」→極上投げキッス

優子「命中〜! ずるい〜!」

春海「きょうは二はつまで」

光子「監督基準、厳密やね」

美香「二発でおしまい。デザート準備するよ〜」


モナカ開封の儀


お母さん「“白松がモナカ”、開けるよ。せーの——」

全員「ぱきっ!」

お父さん「この音、優勝たい」

光子「甘さで今日を締める」

優子「“ただいま”と“ありがとう”、両方いっぺんに言える夜、最高やね」

美香「春介、春海、明日は“お利口さんやったら一個”やけんね」

春介「がんばる!」

春海「ぜったい がんばる(小さく拳)」


アキラ「ほんなら一本締めいくばい。よーっ!」

全員「パン!」


天井から返ってきた手拍子が、今日の金色みたいに澄んどった。

出汁の湯気とモナカの甘さと、みんなの笑い声。

小倉家の“ただいま”は満員御礼。

明日からはまた日常。けど今夜だけは、勝ち取った“おかえり”をゆっくり味わった。





ギャグコント





リビングのテーブルが、今夜だけはちびっ子ステージになった。

春介は小さな椅子を「しきだい」にして胸を張り、春海はクッションを「しんさせき」に並べて、ちょこんと座った。家族はソファで拍手の準備を整えた。



まくいち:かいかいのごあいさつ


春海(両手をぐーにして)「いまから、ぜんこくたいかい、はじまるのー!」

優子「声がはっきりしとーね。とても聞きやすいよ」

光子「司会、ばっちりよ」


春介バナナをマイクに「つぎー、ぷろぐらむじゅーばん。ふくおかこーこー!」

春海「えんそうきょくは、さんらいず しょうしょう…」

優子「“小章しょう”やね。上手に言えたね」

春海(ぱあっと笑う)「しょう! できた〜」



まくに:えんそうごっこ


春介「それでは、はじめましゅ!」

(春介は両手をぶんぶん、くるりと回ってしきしゃさんを気取る)

春海(机をトントン)「がたんごとん、がたんごとん。よるのれっしゃ、しゅっぱつ〜!」


光子「列車の感じ、すごく伝わるよ」

優子「情景が浮かぶね」


春介「まどのそと、ぴかー! あさのおひさま、こんにちはー!」

(懐中電灯で天井に丸を作る)

春海「つぎ、とうきょーの びる たーかい!」

(積み木を三段重ねてドヤ顔)

お父さん「施工が早すぎて笑った。安全第一でお願いします」

お母さん「ヘルメット(=紙コップ)どうぞ」


春介「それから、せとおおはし〜!」

(物干し竿のおもちゃを橋に見立て、ぬい列車がてってけ通過)

春海「かぜ、びゅー! でもこわくない〜」

優子「効果音が上手」

光子「橋の上の朝、ちゃんと見えたよ」


春海「さいご、どうごおんせん、ちゃぷ〜」

(加湿器の蒸気に手をかざして、ふわふわ演出)

春介「きもちい〜、ぽかぽか〜」

お母さん「温度管理まで完璧ね」


春介「おわりっ!」

(ふたり、ぺこー)

家族「パチパチパチ!」



まくさん:けっかはっぴょう


春海(名札カードを高く)「はっぴょーしましゅ! ふくおかこーこー、きんしょう ごーるど!」

春介(被せ気味に)「さらに、しんさいん とくべちゅしょー!」

優子「ダブル受賞、おめでとう!」

光子「理由を教えてください」

春海(指を一本)「りゆーそのいち、おねえしゃん、かわいか」

春介(指を二本)「そのに、みんなの“あさ” きらきらしてた」

お父さん「審査基準が最高」

お母さん「納得の結果です」



まくよん:きしゃかいけん


アキラ(記者役)「受賞の決め手は何ですか?」

春介「おねえしゃんの えがお、ずきゅーん!」

春海「それと、はるみ の はいぱー うぃんく」

優子「効いた効いた」

光子「命中100%やった」


美香(カメラ役)「本番前、何を意識しましたか?」

春海「ふーって いきを はく。それから、て つなぐ(エア)」

春介「どきどき ばいばいってする」

お母さん「エア手つなぎ、可愛いね」

お父さん「最新メンタル術だ」



まくご:ひょうしょうしき(あんぜんめだる)


春介「めだる、とうじょー!」

(紙皿+金紙の“あんぜんメダル”を首にかける)

春海「まず、がたんごとん だいひょうの おねえしゃんに」

優子「ありがとうございます。大切に受け取ります」

春介「つぎ、あさのひかり だいひょうの おねえしゃんに」

光子「嬉しいね。明日も“朝”を置いてくるよ」

家族「パチパチ!」



あんこーる:うぃんく砲


春海「さいご、あんこーる!」

春介「はいぱー ゆうわく うぃんく!」→極上なげちゅー×2

優子「しぬ! かわいすぎてしぬ!」

光子「本日の最高音は今の“きゃー”でした」

お母さん「ここがクライマックスね」

お父さん「よし、いい締めだ」


春海(手をパン)「きょうは、ここまで!」

春介「また あした、こうえん します!」

美香「監督の判断が早い。健全でよし」

アキラ「アンコールは“明日のごほうび”に残しとこう」



らすと:かぞくコメント


優子「ふたりの構成はきれいで、笑いの間も最高やった」

光子「道具の使い方が安全で、発想が豊かやね」

お母さん「“ちゃぷ〜”の演出がとくに好き」

お父さん「“かわいか”という審査理由は真理」

美香「記録は保存完了。家宝フォルダ行き」

アキラ「明日の再演に向けて、ステージ(テーブル)を増し締めしとく」


春介・春海(そろって深くおじぎ)「ごせいちょー、ありがと ございました〜!」

家族「ブラボー!」


拍手の余韻が天井でぽよんと跳ねて、リビングはぽかぽかになった。

全国の思い出と、ちびっ子の幼児語コントと、家族の笑いが重なって、今夜の小倉家は、しあわせ満タンやった。


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