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夕食
晩秋の仙台・夕食会場。
テーブルに牛タンどーん、麦めしつやつや、テールスープ湯気ぼわ〜、端っこに笹かまとずんだ小鉢。
さおり「見てこの厚み。写真が先か、胃が先か」
樹里「胃が先」
しおり「異議なし」
優子「ほんなら——いただきます!」
光子「うまっ。これ明日の分の元気まで入るね」
ひとしきりワイワイ食べたあと、テーブルの端で家に電話。
――スピーカーON。
お母さん『もしもし? どうやった?』
優子「金賞と特別賞、二年連続やったよ!」
お父さん『やるやん! よし、帰ってきたらおでん増量しとく』
光子「おでんのちくわぶ倍でお願いします」
お母さん『買うたことなかけど、探してみるわ(笑)』
通話を切って、今度は美香へビデオ通話。
映った瞬間、画面いっぱいに春介&春海のドアップ。
春介『おねえしゃん! いちゅ帰って クリュ?』
優子「明日の夜には帰るよ〜」
春海『あちた?』
光子「うん、あしたの夜。おみやげもって帰るけん」
そのとき、後ろから女子部員がひょこひょこ画面にIN。
春介、顔をパァーッと輝かせて——
『はいぱー ゆうわく うぃんく!』→極上投げキッス、三連。
女子部員「きゃー! かわいか〜!」「心臓がぴょん」
しおり「牛タンより効く」
さおり「ずんだより甘い」
樹里「表現の癖」
春海(冷静)『はい、きょうは ここまで』
春介『え、しょーと?』
春海『ながいと きく(ドヤ)』
優子「監督、さすがやね」
光子「効き目の管理が完璧」
美香「ちょい代わって〜」と画面の向こうでチェンジ。
美香『おつかれ! どうやった?』
優子「金賞ゴールド、そして審査員特別賞もゲット!」
美香『すごっ! ほんとよう頑張ったね。春介、春海、言うことは?』
春介『おめでとー!』
春海『ぎゅー(画面越し)』
光子「受領。元気フル回復」
ここでなぜか即席コント開始。
優子「ただいま受賞記者会見をはじめます。質問ある方〜」
春介『きんしょうは おいしいですか?』
光子「味はせんけど甘い」
春海『もなか と いっしょ?』
優子「そう、それ! “白松がモナカ”と同じくらい甘い」
女子部員(後方から)「じゃ、帰りに勲章配給で!」
一同「賛成!」
美香『帰ってきたらみんなでお祝いしようね。お父さん(アキラ)も張り切っとるよ』
優子「ありがとう。明日の夜、ただいま言いに帰るけん」
光子「春コンビ、寝る前の歯みがき忘れんごとね〜」
春介『はみはみ!』
春海『ちぇっく!』
通話終了。テーブルに笑いがしばらく残る。
さおり「……よし、デザート、ずんだ餅追加で」
樹里「別腹、開通」
しおり「明日の体重計は見ない」
優子「見てよ」
光子「見た上でモナカは食べる」
皿が空になるたび、達成感が静かに増える。
窓の外は晩秋の仙台。
笑い声もお腹も満ちたら、自然と背中が軽くなった。
優子「……ほんと、ありがとね、みんな」
光子「うん。帰ったら“ありがとう”巡りしよ」
さおり「まずはおでん(増量)」
樹里「そして笹かま反復」
しおり「モナカは朝練後」
一同「決まり!」
牛タンの香りが最後まで名残惜しくて、コートにちょっとしみ込んだ。
その匂いごと、明日の夜、博多に連れて帰る。
——受賞の余韻と、土産袋と、画面越しの“おめでとう”。
全部ぎゅっと抱えて、笑いながらホテルへ戻った。
仙台最後の夜
ホテルの部屋に戻ったら、廊下のカーペットがふわふわで足音まで上機嫌やった。
カギを回して「ただいまー」。ベッドにダイブしかけた優子の襟首を、光子がすんでのところでキャッチ。
優子「あと3センチで楽園やったのに」
光子「毛布は逃げん。先に明日の段取りだけ確認しよ。
明日:仙台発の“やまびこ”→東京駅→羽田→福岡、ね」
優子「はい、知っとーよ。やまびこ……呼んだら返事してくれる新幹線やろ?」
光子「車内で叫ぶなや。心のやまびこで我慢ばい」
スーツケースを開けて、お土産の白松がモナカ(ミニ)が行儀よく並ぶ。
さおり「これ、ほのかちゃん用にリボン付けよか?」
樹里「春介・春海分は“宿題したら一個”シール貼っとく」
しおり「貼っても笑顔で二個もらいに来るけどね」
優子「**監督(春海)**が止めるけん大丈夫」
男子からグループLINEがピロン。
〈牛タン食べすぎて眠い。おやすみ〉
〈氷枕、神〉
〈わたしは今、布団と結婚します〉
女子一同「もう落ちとるやん!」
窓を少し開けると、晩秋の仙台がひんやり入り込んできて、カーテンがちょいと踊る。
「恋バナ会議、開廷!」と、さおりがクッションをバンと抱えた。
優子「はい。拓実とは“公園+パーカー”で薄口デート予定。
この“薄口”が塩梅よかけん、勝手に濃くしないこと」
しおり「勝手に濃くしたら、うちらが水で薄める」
樹里「水当番がんばる」
光子「うちは翼。妹のほのかちゃん、春介にぞっこんやけん、わたしは観賞用で平和に進行中」
さおり「平和条約」
光子「条約の印はモナカ半分こ」
優子「甘いは正義」
さおり「で、わたしは——奏太に“将来の予約”入れました。成功。
今は彼氏彼女ステップを踏む。替え玉は彼の奢り。以上!」
一同「拍手ー!」
樹里「報告うまい。議事録いらん」
笑い声が一段落したところで、廊下から男子部屋の合唱が微かに聞こえてきた。
「……スー…ゴー…スー…」
優子「三声ハーモニーのいびきやん」
光子「起こすな。今日は勝ち組の眠りよ」
ベッドの上に座って、明日の服を足元に並べる。
さおり「東京駅で迷子禁止ね。八重洲と丸の内で反対向かんごと」
しおり「それ言いよったら、ほんとに迷子になるジンクスやけん、ワクワクの話に変えよ」
樹里「じゃ、羽田着いたら**滑走路見て“でか!”**って言う」
優子「言う。心の声で。」
そこへ、翼と拓実から短いメッセ。
〈明日も無事で帰ってこい。土産は笑顔〉(翼)
〈荷物重かったら言え。駅で拾う〉(拓実)
優子「……こういう短文、刺さるね」
光子「長文より効くときあるもんね」
しばらくして照明を一段落とす。
テーブルの上には、笹かまの箱、カモメの玉子の袋、そしてモナカの塔。
優子が小声でつぶやく。「この山、幸せの形やね」
光子「うん。みんなで積んだ山やけん」
枕に頭を置いた瞬間、ドアの向こうでさっきの三声いびきが消えて、かわりにエレベーターの「チン」。
しおり「やまびこって、呼ばんでも夢の中で返事しそう」
樹里「わたしの夢、牛タンが走るやつになりそう」
さおり「追いかけきらんやつやん」
優子が布団の端を引き上げて、光子を見る。
優子「ねぇ、帰ったら“ありがとう巡り”ばい。先生、家族、後輩、みんな」
光子「もちろん。“ただいま”と“ありがとう”、両方いっぺんに言う」
部屋の灯りが落ちて、仙台の夜だけが残る。
遠くの道路の音も、上の階の足音も、今日はどれもやさしい。
目を閉じる直前、優子がぽそっと。
「やまびこ、ちゃんと福岡まで“おかえり”返してね」
光子「返すよ。うちらが**先に“ただいま”**って言うけん」
——その数分後。
男子部屋:完全沈黙。
女子部屋:恋バナ→笑い→小さな寝息。
仙台の夜は、金賞の余韻といっしょに、すーっと落ち着いていった。
帰福
朝、ホテルの部屋。カーテン越しにうっすら明るい。
優子「おはよ〜……て言いよるけどさ、うち今ここで横んなったらあと二時間は余裕で寝らるっちゃん」
さおり「そんときは、うちの“極上ハイパーこちょこちょ”発動するけんね! 覚悟しときぃ」
樹里「それ効きすぎるけん、マジで勘弁して。笑い死ぬ」
光子「はい起床! 顔ば洗って朝ごはん行こー。寝ぼけたままでも歩けるやろ?」
――朝食会場、トレー片手に。
優子「パンもご飯も、今日は両方いくけんね。記念日やけん胃袋が働いとー」
光子「味噌汁が体にしみるねぇ。これで半分は人間に戻ったばい」
しおり「ずんだの小鉢、朝から優勝やん。甘さがやさしかぁ」
樹里「食べたら即出発ね。時間は待ってくれんけん」
――仙台駅、ホーム。
さおり「やまびこ来たね! 緑がつやつやで可愛か〜」
優子「心の中で“おーい”て呼んだら、“おーい”て返ってきた気がするっちゃん」
光子「はい幻想はよかけん、乗り込むよー。席と荷物、確認してね」
(乗った途端、男子部員はコトンと寝落ち)
しおり「寝落ちの早さ、世界記録やね」
樹里「いびきが三種類あるっちゃん。でも今日は許す」
優子「録音してBGMにしたら怒らるるけん、やめとくわ」
光子「車窓の紅葉、きれいやね。仙台、ほんとお世話んなった」
――東京駅で乗り換え。
さおり「今日は八重洲口で動くけん、みんなついて来りぃ」
しおり「この言い切り、めっちゃ助かる。迷子ゼロで行こ」
樹里「浜松町でモノレール乗り換えね。羽田の滑走路、近くで見れるとワクワクするばい」
――羽田・保安検査。
係員「メダル、少しだけトレーにお願いします」
優子「あ、すみません! でもちょっと誇らしかね」
光子「金色は預けても、誇りは首から外さんけん」
――搭乗口前、お土産最終チェック。
光子「“白松がモナカの塔”、無事やね。箱、崩れとらん」
さおり「笹かまの角、元気やん。角生存確認」
しおり「“かもめの玉子”、数そろっとるよ。逃げたやつはおらん」
樹里「お土産が逃げんでよかった(笑)」
――離陸直前、窓側。
優子「仙台、ほんとありがとう。うちは福岡で“ただいま”言うてくるけん」
光子「喜びと“ありがとう”ば、まるごと持って帰るよ」
(機内、数分で全員こくりこくり)
――福岡到着、ターミナルを出ながら。
優子「帰ってきたね、福岡! まず“ただいま”言いに行こ」
光子「“ありがとう巡り”始めよ。先生→家族→後輩の順で回るけん」
さおり「配る順番、うちが仕切るばい。袋は分けとる」
しおり「甘いもんの比率は八割でよかろ?」
樹里「よかよか。足取り、軽か〜」
優子「全国は通過点やんね。でも今日の“ただいま”と“ありがとう”は、今だけの宝物やけん」
光子「うん、また明日から日常で強うなるよ。そいがうちらのやり方やけん」
(キャリーのタイヤがコロコロ鳴って、みんなの笑い声がふわっと混ざる)
出迎え
福岡空港・到着ロビー。
プラカードと拍手の波の真ん中で、見知った顔が一気に花開いた。
春介&春海「おねえしゃーん! おかえりー! だっこー!」
優子「ただいまー! よー来たね、重たなっとるやん!」
光子「ぎゅーするけん、順番ね。押さんどってよ〜」
春海「はいぱー うぃんく!」→(極上投げキッス)
女子部員「きゃー! かわいか〜!」
春介「きんしょう さわって よか?」
優子「見るだけな! ほら、光っとーやろ」
父・優馬「おかえり! ようやったなぁ」
母・美鈴「ほんに立派、鼻高か〜! 晩ごはん、おでん増量しとーけん」
アキラ「おつかれさん! 春コンビ、整列して敬礼!」
春介&春海「けいれい! おめでとう!」
美香「泣く前に写真撮るよー。はい、笑顔ー!」
そこへ学校関係者が到着。横断幕が広がって、ミニ・セレモニーが始まる。
教頭先生「福岡高校吹奏楽部、二年連続の金賞に加え、審査員特別賞、おめでとうございます」
前原先生「みんな、胸張ってよか。……でも帰ってきたら“いつもの顔”でよか。ほんと、おつかれ」
PTA代表の保護者「うちの子ら、帰りのLINEが“牛タンおいしい”しか来んやったけん安心したばい(笑)誇りです」
花束が二つ、光子と優子の手に渡る。
拍手の中、優子が一歩出て、くっきり笑った。
優子「ただいま。みんな、ありがとう。うちらの名前ば呼ばれたばってん、あれ、全員の名前まとめて呼ばれたっちゃけん。誰一人かけても、ここまでは来れんやった。……ほんとに、ありがとう」
光子「部長・副部長はたまたまうちらやけど、引っぱってもらったのはうちの方やけん。前向いて、同じ方向に歩いたけん勝てた。後輩たちも、胸張ってよかけん。……みんなで取った賞やけんね」
「おーっ!」と円になって拍手。
後輩たち「先輩、おめでとうございます!」「うちらも続くけん!」
春介「はい しつもーん! ぜんこくは、ぜんぶの くに?」
優子「だいたいそげん。いーっぱいの学校の前で、大きか“おはよう”置いてきたと」
春海「おはよう、で かった」
光子「そうそう、朝は強かけん」
保護者たちがスマホを掲げて撮影タイム。
父・優馬「ほら、もう一枚!」
母・美鈴「泣くなら撮ってからにしぃ」
アキラ「春介、春海、最後に“おめでとうジャンプ”!」
春介&春海「せーの!(ぴょん)」
女子部員「かわいっ!」
前原先生「よし、解散! 荷物は壊さんごと持って帰るぞー」
空港の自動ドアが開いて、福岡の空気がふっと入ってくる。
光子が花束を抱え直して、振り向く。
光子「さぁ、まずは“ありがとう巡り”やね。先生、家族、後輩……順番に会いに行こ」
優子「帰り道の“ただいま”も、ぜんぶ言う。それから——おでん!」
母・美鈴「はいはい、腹ぺこ隊は前へ。ちくわぶ探し回ったけん、ありがたく食べんしゃい」
父・優馬「祝杯はコーラでな!」
アキラ「モナカはデザートやけん、並べ替え担当はオレ」
美香「了解、会場はリビング。春コンビは応援旗用意」
春介「はいぱー うぃんく!」
春海「おうちで つづき!」
笑い声と拍手に送り出されて、スーツケースのタイヤがコロコロ前へ。
金色の結果も、花束の色も、みんなの“おかえり”も、ぜんぶ連れて家路についた。
帰宅
玄関の鍵がカチッ。
優子「ただいまー!」
光子「帰ってきたよー!」
リビングの扉を開けたら、湯気と出汁のにおいがぶわっと広がる。テーブルの真ん中におでん鍋、脇に笹かまと白松がモナカとかもめの玉子が整列。
春介・春海「おねえしゃーん! おかえり! だっこー!」
優子「ただいま〜。重たなっとるやん、筋トレやん!」
光子「順番やけん、押さんどってよ〜」
優馬(お父さん)「よう帰ってきたな! ほんと、ようやった」
美鈴(お母さん)「今日はおでん増量やけん、腹ば据えて食べんしゃい。ちくわぶ、探して買うてきたとよ」
アキラ「座れ座れ〜。先に一枚、記念写真いくよ!」
美香「春介、春海、ピースは顔の横ね〜。はいチーズ!」
春介「きんしょう、さわってよか?」
優子「見るだけね。首にかけたらキリンになるけん、いかんよ」
春海「きりん、にあう(ドヤ)」
光子「似合うけどダメ〜」
美鈴「ほんなら乾杯。今日はお茶で——おつかれさま!」
全員「おつかれさまー!」
家内“受賞”記者会見(司会:アキラ)
アキラ「ただいまより、小倉家・凱旋記者会見を開催しまーす!」
春介「しつもん! きんしょうは、おいしか?」
優子「味はせんけど、気持ちはモナカ級に甘か」
春海「とくべつ賞は?」
光子「笹かまみたいに、噛むほどじわっと来ると」
美香「表現がうまいね〜」
お父さん「詳細は食べながら聞こうか」
おでん大合戦
美鈴(お母さん)「卵は一人ひとつ、牛すじはじゃんけん、ちくわぶは仲良う分けりぃ」
優子「牛すじはうちが——(じゃんけん即負け)うそやろ!」
光子「負けた人は大根増量。大根は正義やけん」
お父さん「はふはふ……しみるねぇ。金賞の味たい」
アキラ「春介、からしは危険やけん触らんよ」
春介「きいろ きれい!」
美香「見るだけ! 匂うだけ! 舐めたらいかん!」
春海「しゅっ(からしチューブ、即回収)」
光子「監督(春海)、仕事が早い」
メダル超瞬間試着
お父さん「ちょっと貸してみぃ」
(胸にかけた瞬間、目尻がゆるむ)
お父さん「重みがよかねぇ……」
お母さん「あなた、泣きよる?」
お父さん「これは汗や、室内の湿度」
春介「ぼくも!」→(かけようとして即ストップ)
優子「一瞬だけ! よし終了!」
春海「きりん化、ぼうし」
ちょいシリアス一口分
優子「……お父さん、お母さん、ほんとありがとう。うちらの名前ば呼ばれたばってん、あれ、みんなの名前まとめて呼ばれたっちゃけん」
光子「誰ひとり欠けたら、今日の“ただいま”は言えんかった。育てて送り出してくれて、ありがとう」
お母さん「はい、一回泣いてスッキリしたら、また食べんね」
お父さん「泣き笑いが一番うまかけん」
美香「帰ってきたら、家が一番うるさくて一番落ち着くね」
アキラ「おでん、まだまだあるけん遠慮せんで」
ちびっ子・ウィンク砲
春介「はいぱー ゆうわく うぃんく!」→極上投げキッス
優子「命中〜! ずるい〜!」
春海「きょうは二はつまで」
光子「監督基準、厳密やね」
美香「二発でおしまい。デザート準備するよ〜」
モナカ開封の儀
お母さん「“白松がモナカ”、開けるよ。せーの——」
全員「ぱきっ!」
お父さん「この音、優勝たい」
光子「甘さで今日を締める」
優子「“ただいま”と“ありがとう”、両方いっぺんに言える夜、最高やね」
美香「春介、春海、明日は“お利口さんやったら一個”やけんね」
春介「がんばる!」
春海「ぜったい がんばる(小さく拳)」
アキラ「ほんなら一本締めいくばい。よーっ!」
全員「パン!」
天井から返ってきた手拍子が、今日の金色みたいに澄んどった。
出汁の湯気とモナカの甘さと、みんなの笑い声。
小倉家の“ただいま”は満員御礼。
明日からはまた日常。けど今夜だけは、勝ち取った“おかえり”をゆっくり味わった。
ギャグコント
リビングのテーブルが、今夜だけはちびっ子ステージになった。
春介は小さな椅子を「しきだい」にして胸を張り、春海はクッションを「しんさせき」に並べて、ちょこんと座った。家族はソファで拍手の準備を整えた。
⸻
まくいち:かいかいのごあいさつ
春海(両手をぐーにして)「いまから、ぜんこくたいかい、はじまるのー!」
優子「声がはっきりしとーね。とても聞きやすいよ」
光子「司会、ばっちりよ」
春介「つぎー、ぷろぐらむじゅーばん。ふくおかこーこー!」
春海「えんそうきょくは、さんらいず しょうしょう…」
優子「“小章”やね。上手に言えたね」
春海(ぱあっと笑う)「しょう! できた〜」
⸻
まくに:えんそうごっこ
春介「それでは、はじめましゅ!」
(春介は両手をぶんぶん、くるりと回ってしきしゃさんを気取る)
春海(机をトントン)「がたんごとん、がたんごとん。よるのれっしゃ、しゅっぱつ〜!」
光子「列車の感じ、すごく伝わるよ」
優子「情景が浮かぶね」
春介「まどのそと、ぴかー! あさのおひさま、こんにちはー!」
(懐中電灯で天井に丸を作る)
春海「つぎ、とうきょーの びる たーかい!」
(積み木を三段重ねてドヤ顔)
お父さん「施工が早すぎて笑った。安全第一でお願いします」
お母さん「ヘルメット(=紙コップ)どうぞ」
春介「それから、せとおおはし〜!」
(物干し竿のおもちゃを橋に見立て、ぬい列車がてってけ通過)
春海「かぜ、びゅー! でもこわくない〜」
優子「効果音が上手」
光子「橋の上の朝、ちゃんと見えたよ」
春海「さいご、どうごおんせん、ちゃぷ〜」
(加湿器の蒸気に手をかざして、ふわふわ演出)
春介「きもちい〜、ぽかぽか〜」
お母さん「温度管理まで完璧ね」
春介「おわりっ!」
(ふたり、ぺこー)
家族「パチパチパチ!」
⸻
まくさん:けっかはっぴょう
春海(名札カードを高く)「はっぴょーしましゅ! ふくおかこーこー、きんしょう ごーるど!」
春介(被せ気味に)「さらに、しんさいん とくべちゅしょー!」
優子「ダブル受賞、おめでとう!」
光子「理由を教えてください」
春海(指を一本)「りゆーそのいち、おねえしゃん、かわいか」
春介(指を二本)「そのに、みんなの“あさ” きらきらしてた」
お父さん「審査基準が最高」
お母さん「納得の結果です」
⸻
まくよん:きしゃかいけん
アキラ(記者役)「受賞の決め手は何ですか?」
春介「おねえしゃんの えがお、ずきゅーん!」
春海「それと、はるみ の はいぱー うぃんく」
優子「効いた効いた」
光子「命中100%やった」
美香(カメラ役)「本番前、何を意識しましたか?」
春海「ふーって いきを はく。それから、て つなぐ(エア)」
春介「どきどき ばいばいってする」
お母さん「エア手つなぎ、可愛いね」
お父さん「最新メンタル術だ」
⸻
まくご:ひょうしょうしき(あんぜんめだる)
春介「めだる、とうじょー!」
(紙皿+金紙の“あんぜんメダル”を首にかける)
春海「まず、がたんごとん だいひょうの おねえしゃんに」
優子「ありがとうございます。大切に受け取ります」
春介「つぎ、あさのひかり だいひょうの おねえしゃんに」
光子「嬉しいね。明日も“朝”を置いてくるよ」
家族「パチパチ!」
⸻
あんこーる:うぃんく砲
春海「さいご、あんこーる!」
春介「はいぱー ゆうわく うぃんく!」→極上なげちゅー×2
優子「しぬ! かわいすぎてしぬ!」
光子「本日の最高音は今の“きゃー”でした」
お母さん「ここがクライマックスね」
お父さん「よし、いい締めだ」
春海(手をパン)「きょうは、ここまで!」
春介「また あした、こうえん します!」
美香「監督の判断が早い。健全でよし」
アキラ「アンコールは“明日のごほうび”に残しとこう」
⸻
らすと:かぞくコメント
優子「ふたりの構成はきれいで、笑いの間も最高やった」
光子「道具の使い方が安全で、発想が豊かやね」
お母さん「“ちゃぷ〜”の演出がとくに好き」
お父さん「“かわいか”という審査理由は真理」
美香「記録は保存完了。家宝フォルダ行き」
アキラ「明日の再演に向けて、ステージ(テーブル)を増し締めしとく」
春介・春海(そろって深くおじぎ)「ごせいちょー、ありがと ございました〜!」
家族「ブラボー!」
拍手の余韻が天井でぽよんと跳ねて、リビングはぽかぽかになった。
全国の思い出と、ちびっ子の幼児語コントと、家族の笑いが重なって、今夜の小倉家は、しあわせ満タンやった。




