爺さんと遭遇
「おーい! 待ってくれよー」
子供達の後を追いながら「敵ではない」「怖くない」「助けたい」等、様々な意思を届けるが一向に立ち止まってくれる気配がない。
このまま追いかけていけば村があるかもしれないし、また魔物に襲われても厄介だ。
見失わない程度の距離で声をかけながらついていこう。
そうこうしているうちに開けた場所に出てきた。辺りにはツツジの様な花が咲き乱れ、鬱蒼とした森には似つかわしくない爽やかな空気に包まれている。
「家がある……」
そこにはポツンと一件の荒屋が立っていて、周りには小さいながら畑もある。その家の中に子供達が駆け込んだ。
何でこんな危ない森に家なんか立ってるんだ?魔獣が来たら一発でアウトじゃないか……結界が張ってある様子も無いし……
家の前に立ち止まり、少し様子を伺うと、息を荒げた子供達の声と、壮年の深みがあるしゃがれた声が聞こえてくる。
「保護者がいるのか?」
「アン」
追いついてきたホシコが用心しろと言ってくる。そこまで警戒しなくてもと思うが、ホシコの忠告なので一応背中の槍に手を回しながら扉越しに声をかける。
「おーい! 俺は怪しいものじゃないんだ! 危害を加える気もない! 話を聞いてくれー!」
すると、勢いよくドアが開き、中から大きな杖を持った爺さんが現れた。
頭は禿げ上がり長い口髭、顔は皺だらけだが、体格は良く、背筋はシャンと伸びている。真っ白な袈裟の様なものを着ているがお坊さんなんだろうか?
後ろにはドア越しにこちらを見つめる4つの目玉。
「€$÷$〆÷+#/!!」
「何者だ!」という意思が伝わってくるので、敵じゃない事をアピールしよう。
「俺は西村というものです! 敵ではありません! ただの人間です! 話を聞いてください!」
「€〆\〆?」
できる限り無害さをアピールしながら友好的に接しているのに何故か老人の顔がみるみるうちに険悪になっていく。
「€〆\〆×÷$〆€°#!」
何か悪口の様な物を吐き捨てると杖を構えてブツブツと呟き出した。
あれ? なんかヤバくね? 魔法の呪文ぽくね? 爺さんの杖が光出したよ?
「話を聞いてくっ!?」
「+×〆×€+!」
杖の先が一際光ると氷のトゲの様なものが何本か発射される。
「アンッ!!」
「ぎゃあぁぁぁあ!」
ホシコが聖域を張り、他の攻撃は防いでくれたけど最初の一本が俺の太腿に突き刺さった。
痛てー! マジ痛てー! 死んじゃう! 死なないけど死んじゃう!
「ごめんなさい! この世界に転移させられて初めて人を見たから思わずついてきちゃいました! ごめんなさーい!」
そう叫びながら傷を手で押さえて転げ回る。
「>〆|×÷3€÷#<?」
杖を構えながら恐る恐る俺に近づいてくる爺さんにホシコの威嚇が入る。
「ヴァアンッ!」
「€$〆€<#÷〆!?」
すると、今まで疑心暗鬼だった顔に驚きの表情を浮かべ、ホシコの前に膝をついたではないか。
ホシコが聖獣というのがわかったのか? 何やら崇め始めた爺さんに満更でもないホシコ。立ち上がった爺さんがホシコを家の中へ招待する仕草をしている。
助かった! とりあえず傷を塞いでもらって話を聞いてもらおう。あの爺さんなら回復魔法なんかも使えるかもしれないし。この世界の事も色々と知ってそうだ。
そう思って片足でケンケンしながらホシコの後に続こうとする。
バタン!
目の前で勢いよく閉まる扉に暫し放心する。
「…………おーい……そりゃないんじゃないですかねぇ?……ホシコさんやーい……ぉーぃ……」
どうやらこの世界はブリーフを真っ赤に染めた変態には厳しいらしい。




