結成!魔術研究会
「禁術研究会……ですか?」
「その通りだ。折角なのだから、この学校と魔術都市にも我々に投資して貰おう。
魔術の発展に寄与するのが、名門たる我が靖錬高等学校とそれを擁する魔術都市の在るべき姿だ」
「『時空を超える魔術』は禁術なんだろ?そんなに簡単に支援なんて受けられるのか?」
レヴィアがやる気で手伝ってくれるのは願っても無い話だ。
研究資金も調達出来ると言うのも有り難い。ただ、本当にそんな事が通るのかと言うのは疑問だ。
あのレヴィアですら、最初はこの研究を止めようとしたくらいなのだから、普通ならストップが掛かりそうなものだが……
「当然、素直に報告などしない。お題目など何でも良い。
私達の実力ならば、適当にレベル4相当の魔術を作り出して、それの研究をしていたと思わせる事など容易だ」
左様ですか。つまりは、別の健全な魔術研究を隠れ蓑にして、実際の所は提供されたお金で、禁術の研究を行うと言うわけだ。
外道!流石は魔王の肩書を持つだけの事は有る。
もっとも、良い様にレヴィアを利用する形になっている俺こそが本当の外道なのだろうが……
まぁ……俺は俺が出来る事をするしかない。殆ど何も無いとか言わないで。
「そういうわけで……今後はこの魔王室を拠点として我々は活動する!」
「あの、禁術を研究しているのは秘密なのに、禁術研究会で良いんですか?」
「あっ……確かにそうだな……どうしよう。これじゃ禁術研究しているってバレてしまう……」
真剣な顔で頭を抱えるレヴィア。
この娘は賢いのかアホなのか、時々分らなくなる。
「何でも良いんじゃないか、別に。オメガナザウィーネ研究会とかで」
「……き、り、し、ま、さ、ん!!」
「どうせ研究会の名前など飾りに過ぎないわけだし……それでも良いか」
「ええっ!?ちょっと待ってください。そんなに拘り無いんですか?組織名ですよ!」
「そこまで言うなら……ミツキ、お前が決めて良いぞ」
「わ、私ですか?え、えーっと……」
観月さんにネーミングライツが与えられたが……オメガナザウィーネ研究会と同等のしか出てこないような気がする。
まぁ、どんなのが出てきても肯定してあげよう。きっとそれが優しさだから……
「当然ですけど、魔術組織なんですから……過去の有名な魔術組織をもじって……黄金の……ううん、ここは発案者のレヴィアさんの二つ名を混ぜて金色の暁……」
水を得た魚だよ!完全にやる気満々だよ!
今は見守る事……観月さんがどんな素晴らしい名前をつけてくれるのかを。
「それとも……やっぱり、時間操作を目標とするんだから……タイムトラベル理論を交えて……ティプラーとかを……」
「…………」
黙って頷きながら、俺は聞き続ける。
「はっ……」
「ち、違いますよ!!」
「何が違うんだ?ミツキ?」
「その……えーっと……」
我に返った観月さんと余り観月さんの苦悩を理解していないレヴィアの図。
大丈夫だよ観月さん。レヴィアは中二病とかそういう発想無いから。
と言うか僕等の理想とした中二病の体現者みたいな子だから。
彼女の前で恥ずかしがる必要なんか無いんだよ。
「な、何ですか桐嶋さん!その温かい目は!」
「いや……観月さんの決める組織名が楽しみだなぁって……」
「うう……ずるいです……」
「な、何が?」
「桐嶋さん、ずるいですっ!!」
何か判らないが観月さんが矛先をこっちに向けてきた。
いや、俺は特にずるい事は何もしていないと思う。
「わ、私ばっかり……何か……そういう痛い人みたいに言って……
桐嶋さんだって時々そういう感じの台詞言ってるのに……」
うん、まぁ……それは否定出来ない。
ちょっと『混沌の支配者』して来るわ。みたいなノリで最近はやってるもんな。
でも言い訳するなら俺は趣味じゃない!その場を乗り切る苦肉の策としてやってるんだ!
「……?? 結局、名前……どうするんだ??」
レヴィアは、このやり取りを全然理解していないようだ。
良かった。こんな訳の判らないやり取りで、俺達が魔術ど素人だってバレたらどうしようかと思った。
下手したらレヴィアの協力が無くなるどころか、ある意味騙されてた事にブチギレて光の柱されかねない。
「桐嶋さんが決めてください」
「お、俺!?いや、俺ネーミングセンス無いよ!?」
「ユキトが決めるのか?まぁ、私はどっちでも良いけど」
「マジで?俺が決めるの?」
「はい。私みたいに痛くない感じにして下さい!」
困った。こういうのは苦手なんだ。
はっきり言って自分にはこういうセンスは全然無い。
それこそ、中学生の頃の俺ならば観月さんのように……
いや、もう無難に行こう。無難に。プロジェクトの名前決める感覚で。
「じゃあ、レベル5研究会で……」
意を決して思いついた名前を言ってみる。
うん、シンプルで良いんじゃないか?これには観月さんもレヴィアも納得……
おや?二人の俺を見る目が少々冷たいような……
「本当に……センス無いな……」
「地味ですね」
ここぞとばかりに辛辣な言葉が俺に突き刺さる。
絶対に観月さんは、何時もの復讐の機会を伺っていた……!
「き、君らが決めろと言ったんだろ!!」
「確かに言ったが……どう思う?」
「うーん……五点くらいですよね」
「何点満点の!?」
「一万点満点くらいではないか?」
「そ、そこまで言いませんよ!百点です!」
「ひ、ひでぇ……」
何これ、苛めなの?
無難だろ!?レベル5の魔術研究するんだし、禁術とは一言も言ってないし。
とてもシンプルで判りやすくて予算取れるプロジェクト名ではないでしょうか!?
「と言うかレヴィア!お前の提示した名前も『禁術研究会』じゃねーか!俺とセンスの差なんか無いだろっ!」
「むっ……そ、それは……あくまで仮の名前だ。ほ、本当はもっと良いの考えていた」
「ほほー、じゃあ、レヴィア決めてくれ。残念なセンスの俺に変わってな」
「ふ、ふん!そ、そんなの簡単だが……もう今日は時間が押している。仕方が無いな。非常に遺憾だが……時間が無いからな。
今日の所は残念なユキトの案で手を打っておいてやろう」
こいつ……絶対に思いついてないぞ。そのくせに上から目線で逃げやがった……
「ここに改めて宣言しよう我々の魔術研究組織の名前はレベル5研究会(仮)だっ!」
「おい!(仮)って……」
「その内、センスの有る名前に変える」
「ふぅ……もう好きにしてくれ……」
絶対にネーミングセンスで言えば俺と同レベルのレヴィアと……俺の黒歴史時代と同レベルの観月さんなのに……
何か今日は、俺が残念だったみたいな感じになってしまっている。く、くそぉ……
俺の傷ついた心は置いておこう、何はともあれレベル5研究会(仮)はこれで発足……
って言えるのだろうか?レヴィアが勝手に進めているが、俺は研究会ってどんな物なのか全然判ってない。
普通の高校でいう部活みたいなものなのだろうか?部活の代わりに魔術を研究するのか?
もう少し学校のシステムを勉強しておけば良かった。二年の俺が、今更一年のレヴィアに聞くのも不自然だよなぁ。
「あの……レヴィアさん」
「ん?何だ」
「今更なんですけど……私、今まで所属した事無いですし、研究会ってあんまり詳しく無いんです」
「そうなのか?『虚空の姫君』とも有ろうお前が?」
「基本的に、私は家で研究はしていたんで……」
「確かに……あのレベルの魔術拠点ならば、外部に頼らずとも研究も捗るか」
ナイスフォロー、観月さん。
幾ら優れた魔術師として認知されていると言ってもこの学校に入ってまだそんなに経っていないはずの観月さんならば
学校のシステムについて質問したとしても不自然さは俺よりは薄いだろう。
「単純だぞ。三人以上の生徒が目標を掲げて、それを研究対象として学校に報告する。
学校はその研究内容を公に公開して、興味を持った魔術師達から、投資を集めると言うだけだ。
靖錬高校の代表魔術師三人が、新たな魔術を作ると言えば、それなりの研究資金は集まるだろう」
どうやら普通の部活とは違うようだな。
レヴィアの説明はかなりざっくりだが……学内ベンチャーを起こすような物なのだろう。
そして俺達のネームバリューならば、それなりの資金が集められると言う訳だ。
「へぇ……そんなシステムあったんですね」
「普通の学生レベルでは、何人集まっても大した資金は集められないだろうがな。
我々ならば一口乗りたいと言う魔術師は履いて捨てるほど出るだろう」
「そ、そんなになのか……」
思わず俺も口を挟んでしまう。
どうやら思った以上に俺達の肩書きは影響力を持っているらしい。
「名前も決まったし……私は、学内研究組織発足の申請に行って来る。
活動内容は……私で適当にでっちあげるぞ」
「任せるよ。お前なら上手くやれるだろう」
むしろ、お前しか上手くやれない。
そもそも俺と観月さんはシステムをようやく少し理解した程度なのだ。
「フフフ……任された。あと、明日は朝から魔王室集合だからな!
今日みたいな遅れは処罰の対象だぞ」
「良いけど、罠仕掛けるのはやめてくれよ」
「ふん、善処しよう」
善処だけじゃなくて絶対にやめてくれ。
そうじゃないと、明日が俺たちの命日になる。
「あ、そう言えばレヴィアさん!」
「ん?何か他に問題でもあるか?」
「いえ、連絡先交換しませんか?今後活動していく上でも連絡取り易い方が良いですし」
「え?」
レヴィアが目をぱちくりさせている。
観月さんの提案に、動揺しているようだ。
「……い、良いのか……?それって……と、とも……d……
ふ、ふん!し、仕方が無いな!この私直々にリンクコードを交換してやろう!ふははは!」
動揺を抑え込むように、努めて何時も通りに振る舞おうとしているのが見て取れる。
「良かったぁ……じゃあ、私から送りますね!」
「ちょ、ちょっと待て……えっと……コードを交換するには……」
レヴィアは、余り慣れていない様子で連絡先を観月さんと交換している。
何となく思っていたが、こいつも友達あんまり居そうなタイプじゃないもんなぁ……
交換が終了したレヴィアの表情は、今まで見た中で一番嬉しそうな気がした。
「おい……」
「ん?何?」
「貴様だけ仲間外れだな」
何を言いだすんだこいつは。
俺だってちゃんと観月さんとは交換してるからな。
何と言っても記念すべき、俺の家族以外の初女性アドレスだ。
「は、外れてねーし!?観月さんとは交換してるし!俺とお前は同条件だ」
「そうか……ミツキだけが、全てを知っていると言うのもアレだし……」
「えぇー……全ては知らないよ!?桐嶋さんとレヴィアさんの連絡先知ってるだけだよ!?」
「し、仕方が無いな。哀れな貴様とも……連絡先を交換してやっても良いぞ」
……ま、回りくどい。
ただ、こういう反応をするレヴィアが少しだけ可愛いと思ってしまった。
すぐに戦闘を始めたがる尊大な魔王とのギャップが凄い。
「お、おう……ちょっと待て」
「うん……」
こうして俺のアドレス帳には、妹と母親以外で二人目の女の子の名前が刻まれた。
……思ってないぞ!やっぱりこっちの方が元の世界より良くね?なんて!
お、俺は世界を元に戻す!
ちょっと前より気合が抜けているような気がした。
シリアスをしてた昨日の俺、ごめんなさい。




