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再会、そして……

 智成ユウヤ

 一か月後の交流魔術戦の黒麟高校代表にして、俺の小学生時代の友人。

 転移魔術がある世界での転校と言うイベントがどういう状況で起こるのかは分らないが

 この世界においても、彼とは小学生時代は友人だったようだ。

 そして、彼が転校してから会った事が無いと言うのも同様だと、妹の証言でほぼ確定している。

 自分の記憶と同じ経緯で、単純に転向後は連絡をそんなに取りあう事も無く彼と疎遠になったのかそれすらも良く分らない。分らない事だらけだ。

 そして、本来の俺の歴史では有り得なかった高校時代の智成ユウヤと再会すると言うイベントが今、発生している。


「お兄さんも高位の魔術師でしょ?駄目だよ。無意味に力を振るっちゃ」

「無意味?俺が力を振るうのは、我がラブリーエンジェルのためと言う大義名分がある」

「あははは、面白い人だなぁ。だけど、止めておいた方が良いよ。お兄さんが幾ら強くても、僕と……桐嶋君を同時に相手取るのは無謀だよ」


 智成君は、俺の事を認識している。そして彼も俺を過大評価している。

 まぁ、仕方ないか……彼にとって俺は交流魔術戦にも選出されている魔術師なんだろうし。

 ただ、こっちにも火の粉を振るのはやめてくれ。レヴィアみたいに頑張ってタイマンしてくれ。


「ガキが……二匹纏めて綺麗に消滅させてやろうか……!」

「あと、十秒以内に帰ってくれないと本気でお兄ちゃんの事嫌いになるかも」

「命拾いしたなクソガキ共。今日の所は見逃してやる」


 本当にこの人何なの。


「但し……混沌の支配者。今後、エリちゃんを家に連れ込もうとするようならば、その時は命が有ると思うな。何度輪廻しようとそのたびに殺してやる」


 本当に何なの……


「はーち……きゅー……」

「じ、じゃあね!エリちゃん!」


 風のように蒼月会の若頭は消えて行った。本当の本当にもう二度と会いたくない。


「あっはっは。本当に面白い人だったねぇ」

「面白いって言うかただの変態だ。アレは……」

「あの……私は同類じゃないですからね」


 俺の袖を軽く引っ張りながら小声でそう言う観月さん。

 そういう愛くるしい行動を取る君があんな変態と血が繋がっているなんて……

 神様は、ロウガ兄さんのキャラメイクを間違えたに違いない。


「そういう物言い変わってないよね」

「お前は……ちょっと明るくなったな」

「えぇ!?僕、そんなに暗かったっけ?」

「何となくそんな記憶がある」

「そうだっけなぁ……何はともあれ久しぶりだね、桐嶋君」

「ああ、本当に久しぶりだな……智成君」


 俺の体感で言うと彼との再会は十五年ぶりくらいだ。

 まさかこんな風に変になった世界で、高校生の姿で再会するとは夢にも思っていなかった。

 十五年ぶりに会ってもどんな話すれば良いのか分らないって思っていたが、思った以上に喋れるもんだ。

 そう、こういう奴だったからこそ……俺は智成君と仲良くなったのだ。


「桐嶋さん……この人って……」

「でも、桐嶋君も流石だよね。当然のように交流魔術戦に出てくるし。こんな可愛い彼女も作って」

「え!?か、彼女……」

「いや、観月さんは違うよ。智成君もこっちのメンバー見たんだろ?」


 セーフ!!観月さんが何か言葉を紡ぐ前に俺の方から否定しておく事成功。

 もしも、ここで観月さんに『全然違います!この人は本当にただの他人です。勘弁して下さい!!』

 等と言われような、ものならば本気で俺の魂魄が人生からログアウトしかねない。

 多分、無言でそのまま公園の池に入水自殺する事は間違い無いだろう。

 自分が傷付かないように生きる術は、この二十六年で心得ている。

 仮に観月さんが気を使ってくれて、曖昧な事を言ってくれた場合嬉しいけど、あの変態がまた戻って来る可能性が非常に高い。俺の選択肢はベターだ。


「てっきりメンバー同士でって思ったけど……勘違いかー」

「非常に残念ながらね」

「そっか。あ、ごめんね自己紹介が遅れちゃった。僕は智成ユウヤって言います。桐嶋君とは小学校が一緒だったんだ」

「あ……私、観月エリナって言います。宜しくお願いします」

「『虚空の姫君』の噂は良く聞いてるよ。魔術戦ではお手柔らかに」

「こ、こちらこそ……」


 『混沌の支配者』もだが、『虚空の姫君』もどういう噂が流れているのだろうか。

 一回、この辺の情報も集めて整理してみた方が良いのかもしれない。

 俺達が、このまま天才魔術師の振りをしていくのならばだが……


「お前の噂も聞いているぞ。有力候補を倒して代表入りだってな」


 まぁ、生徒会から貰った資料に書いてあっただけだが……

 ここは少し話を合わせておく事にしよう。


「お蔭様でね。僕がここまで強くなれたのも桐嶋君が居たからだよ」

「俺が?」


 俺の知っている智成君は、俺より成績は良かった。

 良く二人でゲームもしていたが、格ゲーでは俺の連戦連敗だった。

 彼は体が余り丈夫じゃなかったから、運動神経は俺の方が良かったけど、別にだからと言って俺の運動神経が秀でていたわけじゃない。

 こう考えると小学生時代の俺が智成君の成長の手助けになったとは全く思えない。

 しかし、この世界には魔術が存在し……俺は『混沌の支配者』なる存在だ。

 この世界での俺と智成君の関係は、やはり俺の知る物とは少し違うのだろう。


「ああ……君と一緒に作った魔術書……」

「ストーーーーップ!!!!」


 前言撤回。俺の知っている過去と結構一緒かもしれない。

 だけど、駄目だ。この場でそれを言っちゃ駄目だ。

「魔術書って何ですか?桐嶋さんが作ったんですか?」


 キラキラした目で観月さんが食付いてくる。

 あの、僕も同類じゃないんで。オメガナザウィーネとか二十過ぎてやらないんで。


「ああ、そうか……これは三人だけの秘密だったね」

「そうそう、それは隠匿しなければならない秘密だ」


 一生隠匿しといてくれ。小学生の落書きとは言え……余り見直したくは無い。

 ある意味で俺の黒歴史の始まりを紐解くに等しい。あれさえ無ければ……!あれさえ……!!


「ところで何で急にこの街に来たんだ?何年も連絡もよこさないで」


 このままの話題だと絶対に観月さんが食付いてくるので話題を変える。


「それは桐嶋君も同じでしょ」

「そりゃそうか」

「正直、僕も君には感謝していたけど、もう何年も連絡取って無いし会う事も無いんだろうなって思っていた」

「ああ、俺もだ。お互いにその辺ズボラだったもんな」

「だけど、交流魔術戦に出る事になって……相手の代表が君と知った時、これは運命だと思ったよ」

「大げさすぎるだろ」

「良いですね。何かそういうの」


 智成君の言葉は大げさ過ぎて恥ずかしいが、観月さんの言うように正直言って悪い気分ではない。

 もしも、この世界を元に戻すことが出来たら……俺も智成君に連絡を取ってみようか。

 確か、随分前に貰った年賀状があったはず。連絡先が変わって無いと良いけど。


「それでわざわざ来てくれたのか」

「うん、ゆっくり一度話したかったんだ。だって、魔術戦じゃ……


 多 分 、殺 し ち ゃ う か ら 」


 ……………………


 二度目の前言撤回しても良いでしょうか?滅茶苦茶悪い気分です。

 何を言い出すだんよこの人は!?学校のイベントでしょ?

 どうしてこの世界の人はすぐに血生臭い事を言い出すのか。


「今日、会えて良かった。君を倒して超える事こそが……君への恩返しだと思っているから、僕に殺されるまで誰にも殺されないでね」


 いや、無いから。そういうライバルキャラ的なアレ良いから……

 もう俺を超えたって事で良いから、本当に勘弁してくれ。

 決めた。こいつとは元の世界で出会っても絶対に無視する。

 怒りなのか悲しみなのか、もう言葉さえ出てこない。

 観月さんも唖然としているのが見て取れる。


「それじゃあね。桐嶋君。一か月後にまたね」


 そう言い残し、智成ユウヤは俺達の前から立ち去って行った。

 彼は二度とこちらの方を振り向く事は無かった……

 彼の姿が見えなくなっても俺はしばらく口を開くことが出来なかった。


「何だよ……この世界は……」

「桐嶋さん……」


 観月さんが心配そうな顔をしている。

 ちょっと俺の顔がシリアス過ぎるようだ。

 まさか……久しぶりに会った友人に殺す宣言されるとは思わなかった。

 そりゃこんな表情にもなるわ。今日だけはちょっと許してくれ。


「ふぅ……やっぱり元に戻すしか無いな」

「……はい」


 吐き出すように俺は言った。

 この世界は間違っている。どう考えても歪んでいる。

 俺に力が有るならば、この世界を元に戻すために使うべきだ。


「まずはネットからですね」

「お兄さんはどうするの?俺、今日だけでいろんな人に殺す宣言されているよ!」


 努めて明るく言う。余り俺が落ち込んでいても観月さんが心配するだけだ。

 特に自分の兄に関しては、変に責任とか感じてしまうかもしれない。


「兄は……私が何とかします」

「期待している。すっごく」

「今日中には何とかしてみます。時間……余り無いですもんね」

「ああ……そうだね」


 交流魔術戦まで残り三十日

 俺は、この日までに世界を元に戻す。

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