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グレイト魔導器へようこそ!

「グッグッグッググゥレイトォ!グレイトまどうきー♪」


 間の抜けたテーマソングが流れる駅前のグレイト電気……

 いや、この世界ではグレイト魔導器か……とにかくそれに俺と観月さんは来ていた。

 目的はインターネットへの接続方法をそれとなく教えて貰うと言う事だ。

 この世界のネットの理論は良く判らないが、少なくともPCや携帯電話は存在しており

 ネット接続が出来そうなアイコンも有るが、それを起動しようとしてもウィザード認証とやらに引っかかり

 俺の場合はその先に進めない。観月さんの場合は認証はクリアしたようだが

 その先の接続パスワードとやらで詰まってしまたらしい。


「そう言えば、認証パスって良く考えたら判らないの?」

「私もそう思ったんですけど……文字入力する画面にならなかったんですよね」

「……なるほど、認証パスとやらも魔術的な何かなわけか」


 一々面倒だ。

 まさかと思うけどインターネットに繋ぐためにサバトしなきゃいけないとかじゃないだろうな。


「そう言えば……あんなに立派な屋敷なのにパソコン無いんだっけ?」

「はい……少なくとも私や両親は。兄とかは持ってるかもしれませんけど、正直借りたくなかったんで」

 

 お兄さん、すっごい嫌われてるよ。多分、生き方を見直したほうが良いと思う。

 俺達は、雑談をしながら三階のパソコン売り場に向かった。あそこならばネットに詳しい店員もいるだろう。


「あんまり内装は変わってないし、売ってる物も変わらないですね」

「んー……相変わらず世界観ブレてるよなぁ……」

「何だか夢の中みたいですよね」

「確かに。こういう訳判らん夢ってたまにあるわ」


 もしかして、この世界も本当に夢なのでは無いかと思う。

 夢だとしたらそろそろ起きようか。絶対に会社はエライ事になってるぞ。

 そうこう考えている内にパソコン売り場に到着だ。売っているパソコンは、やはりデザイン的には少し古い。


「桐嶋さん、あれ見て下さい」


 観月さんが指差す先にはインターネット加入についての案内が大きく張られていた。

 いや、正確にはインターネットとは書いていないな……


「ウィザードネットねぇ」

「名前からすると魔術でやはり繋がるみたいですね」

「その時点で、俺は手が出せない……」

 

 まぁ、ここまでは思った通りだ。

 問題は魔力0でも何とか抜け道があるのかどうか、その辺だ。


「何かお探しでしょうか?」


 丁度良い所に店員さんが来てくれた。

 人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた三十代後半ほどの男性。

 この人も魔術師なんだよなぁ……魔術師のイメージ崩れるわ。


「ええ、ちょっとパソコンを考えてまして」

「そうですか。丁度今は春モデルが出揃って来たところで……こちらの商品など……」


 パソコンは普通にパソコンっぽい。説明は基本的に俺の知っているような内容だ。


「へぇ……ところで、パソコンって始めて買うんですけど、ネット接続ってどうしたら良いんですか?」

「はい、こちらのモデルはウィザードネットへの接続が非常に簡単になっております。

以前までのモデルでは、結局の所魔力が高い魔術師で無いと満足に接続を維持出来ませんでした」


 おおう……もしかしてネット接続中ずっと魔力消費し続けるの?定額制無いの?


「が……こちらのモデルでは、ネット接続時の消費魔力を従来の八分の一に抑えており

ある程度魔力の低いお客様でも継続的な利用が出来るようになっております」

「仮に魔力0だったらどうなります?」

「はっはっは、ご冗談を。魔力と言うのは全ての人間に宿っております。

こちらのモデルでしたら、一般的な方でも十分に数時間は継続的なネット利用が可能です」


 ……やはりこの世界では逆に魔力0と言うのは珍しいようだ。

 普通こういう場合チート能力が得られる物ではないのだろうか。

 何で俺だけこんなに逆境に立たされているんだ。観月さんはちゃんと魔力あるのに!

 あれか?中二心が足りないのか?


「あの……私も全然パソコン詳しく無いんですけど……単純な事お伺いしても良いですか?」

「はい、どんなご質問でもどうぞ」

「ネットに繋ぐ際に認証パスがいるって聞いたんですけど?それってどういう物なんですか?」

「それはですね。自分のパソコンで誰かに勝手にウィザードネット上にアクセスされないようにするためにあるんですね」

「はぁ……そうなんですか」

「要はネット接続用の魔術式を皆さんお作りになるんですよ。普通の人は簡単な物ですけどね

普通は使用者の魔力パターンでの認識も同時に行いますんで」


 つまりより高度なパスワードと言うわけだ。

 自分で考えた魔術式を発動させればネットに繋がると。

 そりゃ観月さんも繋げようが無いよなぁ……


「それって一回設定したら変えられないんですか?」

「いえ、魔力パターンが一致すれば、起動魔術式自体は変更出来ますよ」


 おおっ!一筋の光が……観月さんはそんまま店員さんに起動式の変更方法を聞いている。

 だが、魔術式なんてそんなにすぐ作れる物なんだろうか。それが良く判らん。

 俺はどうするかねぇ。魔力が無きゃネットも見れないなんて世知辛い世の中だ。


「それでお客様……今回はどちらの機種を」

「あ、すいません。もうちょっと考えたいんでパンフレット貰って良いですか?」

「はい、判りました。ご購入の際には是非グレイト魔導器で」


 ただの冷やかしのガキに嫌な顔一つしないとは出来た店員さんだ。

 何時か何か買ってあげよう。もっとも……俺でも使える物が有ればだけど。


◆◆


 親切な店員さんより情報を得た俺達は、グレイト魔道器を後にして

 近くの公園でジュースを飲みながら今後のことについて話し合っていた。


「それで……魔術式ってのは行けそう?」

「正直、判りません。凄く簡単に出来るみたいな事言われましたけど……

そもそも私達って凄く簡単な事が判らないじゃないですか」

「おっしゃる通りだ」

「後で本屋さんで簡単そうな初心者向けの本買ってみます」


 観月さんは魔力は有るのだから、やり方さえ判ればどうにかなる可能性は高い。


「何か全部任せる形になっちゃって申し訳無いな」

「いえ、全然大丈夫です!」


 そう言う観月さんの顔は明るい。

 ああ……多分、結構楽しんでるなこの娘。

 オメガナザウィーネは失敗したが、これは成功する事を祈っている。


「ただ……やはり携帯だと魔力消耗とかが激しいみたいです」

「パソコンが欲しいところだな」

「桐嶋さんの家のパソコン使わせて貰えないでしょうか?」

「今の話だとそのパソコンの所有者以外じゃネット接続無理なんじゃ?」

「でも、桐嶋さんの家のパソコンってご家族で共有してるんですよね?」


 ああ、確かにそうだ。俺の家のパソコンは家族皆で……ならばログインIDを増やせば良いのか。

 確かにログインIDを増やす分には魔力は関係無いだろう。

 俺のアカウントでパソコンを立ち上げて新規に観月さんのログインIDを増やせば良い。

 そこからならば新たに観月さんがネット接続環境を作れるだろう。

 …………しかも、俺の家に来るって事だよね?いや、これはあくまで調査のためだからね。


「そうだね。行けるかも……」

「じゃあ、桐嶋さんの家へ早速……」



 観月さんがそう言おうとした瞬間、俺は背後より凄まじい殺気を感じた。

 前のめりに倒れこむように俺は、殺気から逃れる。

 間一髪……本当に間一髪その一撃は俺の頭上を掠めた。

 鋭利な刃物による一閃。

 ……この殺気……つい最近感じた頃がある。


「ふぅーん。良い反応だ。お陰で殺し損ねた」


 やっぱりこいつか……

 観月ロウガ……観月エリナの残念なお兄さん。


「き、桐嶋さん!!大丈夫ですか!!」

「本当はずっとぶっ殺そうと思っていたが……エリちゃんに嫌われるといけないから我慢してた。

だが……もう我慢ならん……貴様ぁ……我がラブリーエンジェルを家に連れ込んでどうするつもりだぁぁぁぁ!!」

「ば、バカじゃないの!? ぱ、パソコン借りたいって言い出したの私だよ!」

「パソコンなんてお兄ちゃんが貸してあげるよ!幾らでも買ってあげるよ!!何個欲しいの!?」

「嫌……お兄ちゃんに借りとか作りたくないし」

「………うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 絶叫だ。こういう感じだから嫌われるんだろうなぁ……

 俺も妹を持つ身として気をつけなければ……いや、こうは絶対にならないけど。


「それに……お兄ちゃん……今日ずっとつけてたの……」

「心配だったからなぁ!!昨日あんな事が有ってどうなるかと思えば……こんな事にぃぃぃ!!」

「さいてい……」

「な、何故!?俺はエリちゃんの事を心配して……!」


 昼休みの危険警報はシスコン変態野郎警報だったのか……

 ちょっとシリアスに不安を抱えたのが、少しアホらしくなる……


「……『混沌の支配者』……取り敢えず死ね。貴様を殺してからエリちゃんを貴様の呪縛から解き放つ!」


 変態だけど戦闘力はガチなんだよなぁ!この人!!!

 昨日のレヴィア戦以上の気迫を感じる。彼の放つ魔力が大気を揺らしている。

 ど、どうすんの!?アホらしいとか言ってすいません!ちょっと勘弁して下さい!!


「公共の場での大規模破壊魔術は禁止だよ。お兄さん」


 す、救いの声!?警察の人が来てくれた!?

 俺は声がした方向を急いで振り向く。そうなんですこの人変質者なんです!早く捕まえて!


 ……智成君

 そこには、つい最近写真で見たばかりの成長した

 かつての友人が、昔と変わらない笑顔を浮かべながら、立っていた。

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