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観月の気持ち

「さて、説明して下さい」


 観月さんのご自宅こと、蒼月会に図らずともカチ込みをかまわす事になってしまった翌日、俺は嫌々ながらも学校に登校していた。

 あの騒動の後に家に帰れたのは結局午前五時を回っていた。

 そのまま眠りにつき、今日はサボろうと思っていたのだが……

 観月さんよりの呼び出しにより、昼休みには、素直に学校に来ていた。

 教室には行かずに、直行で特別教室棟での密会だ。

 前回の密会と違うのは、観月さんの目がやはり冷たい事だ。

 そ、そんなに怒らないでよ。


「まずは、ごめん。勝手に部屋に侵入して」

 

 そして中二病発動の現場を目撃してごめん。

 でも、精神年齢二十五歳であれはどうかと思うな僕は。

 等とは決して言ってはいけない。謝罪する時に余計な言葉は不要だ。


「本当ですよ!どうして、いきなり現れたんですか!?来るなら事前に言っておいてくれれば……」

「本当に申し訳無い。けど、あれはレヴィアが……」

「レヴィアさんが?」

「俺の部屋にもいきなり現れたんだよ。寝ようとしてたら布団の上に居たんだ。そのまま観月さんの家にも行くって言い出してさ……」

「止めなかったんですか……」

「止めれると思う?あの傍若無人な魔王様を」

「はぁー……無理ですよね……私達じゃ」


 実の所、最初はノリノリで参加していました等とは口が裂けても言ってはいけない。

 交渉ごとで必要なのはウソはつかない事だ。多少、真実を伝え忘れる事が有っても。


「でも!でも……やっぱり納得出来ません!」

「本当に悪かったと思ってるよ。お詫びに今度、何かご馳走するから」

「……じゃあ、焼肉とビール……」


 意外とオッサン臭いな!

 そう言えば彼女と始めて会ったのは焼肉屋だったか。

 俺の体感では、わずか三日前の事なのにやたらと昔の事のように感じられる。


「俺達……今、一応高校生だよ」

「あっ……じゃあ、ビールは我慢します」

「代わりにソフトドリンク飲み放題をつけるよ」


 まだお怒りが収まらない様子の観月さんだが、何とか手打ちにしてくれそうだ。

 それに、一緒に焼肉なんて……それはデートというやつではないのか?

 幾らでも奢るよ!それは、俺にとってはお詫びと言うよりもご褒美だ!!

 近所の美味しい焼肉屋さんを探しておかなければ……


「……あの……でも、良いんですか……」

「何が?」

「私なんかと一緒に行動して……」


 むしろ観月さんの方が俺なんかと一緒に行動して嫌だと思わないか不安なんだが。

 こういう状況だから、観月さんと喋れているが、基本的には仕事以外で女性と

 会話する事が無いような男ですよ、俺って。基本的に目付きが悪い上にくすんでいるし。


「私の家見ましたよね?」

「いや、それは本当にごめん」

「そうじゃなくて……うち……ああいうのだから……友達も呼んだ事無いんです。学校じゃ絶対に家の事言えませんでした。そんな家が嫌で高校を卒業したらすぐに地元離れたんです……」


 なるほど。そういう事か。

 確かに、実家があれだと友人は呼び難いだろう。

 と言うか俺ももう二度と上がり込もう等とは思わない。

 あのお兄さんに出くわした日には次は命が無い可能性が高い。

 だが、それとこれは話が別だ。外的要因で人と付き合うかどうか決めるなんて事は

 今までした事が無いし、今後もするつもりも無い。

 つまり俺は観月さんって言う人間の事が、少なからず気に入っているのだ。

 い、言っておくが男女関係無くの話だからね!ちょっと相手をして貰ったから

 簡単に惚れたとかそういうんじゃないから!本当に!


 誰に対してツンデレしているんだ。俺は。


「俺、そういうの気にしないから」

「ほ、本当ですか……?あの家にあの兄ですよ……?」

「『混沌の支配者』が、あの程度で恐れを為すわけないでしょ」

「……そ、そうですね!」

「まっ、お兄さんには二度と会わないようにしようと思ってるけどね!」

「で、ですよねー」


 お兄さんも妹に、職業と言うよりも存在そのものが引かれている事に気づいた方が良い。

 俺も若かりし日に、ユキコにドン引きされていた経験が有るからこそ思う。

「でも、安心しました。桐嶋さんに家を見られた時……これで引かれちゃったらどうしようって思ってたんで……」

「まぁ、引くのは引いたけどね!特にオメガナザウィーネ」

「あうっ!ひ、酷いです……!全然反省してないです!」


 しまった。今日は弄るのやめようと心に決めていたのに……

 どうしても喋っていると自然に弄りたくなってしまう。

 わ、話題を変えよう。このままだとまた本気で怒らせる。


「と、ところで、蒼月会って実際にこの世界では何をやっているの?」

「元々……祖父がやっていた事業で……そんなに酷い事はしていないはずなんです。

ちょっといかつい人達が祖父について来ちゃったんで……いかにもな感じになってますけど」


 それは元々の世界での蒼月会の話だろう。

 まぁ、確かに地域密着型の組織で、その雰囲気から余り関わってはいけないと

 地元では言われていたが、大きな事件を起こしたとかそういう話は聞いた事が無い。

 尤も、拳銃が出てきた時点でまともな企業ですとは言えないだろうが。


「こっちの世界では、魔術結社って言う組織になってるみたいですけど詳しい事は判りません」


 そういや、俺が幾つかの魔術結社潰したって事になっていたが……

 あれは大丈夫なのだろうか、どっかで恨みを買っている可能性は……今は考えないでおこう。


「魔術結社って全部観月さん家みたいな感じなのかなぁ」

「全然魔術っぽくないですよね……それは私も思ってます」


 ファンタジーの皮を任侠が突き破っちゃってるもんね。


「魔術について調べる事は出来そうかな?なるべく難易度の高い魔術について」

「それは……可能じゃないかと思います。色んな魔術関係の書物が有るのは確認しました。どの程度の物かは全然判らないですけど」


 結局はこの世界が歪んだ原因はミエナイブログの魔術である可能性が高い。

 ならば、それを探っていくしか無い。時空を超える魔術はレベル5とされていた。

 学校で習う魔術は……レヴィアの発言から考えてもレベル5まで到達しないだろう。

 学内ではレベル4すら使用が制限されているくらいなのだから。


「時空を操る魔術なんて……無いかな?」

「ミエナイブログの魔術ですね」

「うん、結局世界が変わった原因はアレだろう。どっちにしても調べる必要がある」

「判りました。私は家の書物を少し調べてみます」

「お願いすすよ」


 出来れば魔術交流戦までに世界を元に戻す所まで行き着きたい。

 タイムリミットは一ヶ月だ。

 

「あと、俺はレヴィアにもうちょっと接触しようと思ってる」

「レヴィアさんに?」

「あいつは、この世界でもトップクラスの魔術師らしいからね」

「彼女がそういう魔術を持っているかもしれないと?」

「うん。それに彼女は異質だ。レヴィアなんて存在は元々の俺達の世界には居なかった……よね?」

「それは間違い無いと思います。あんなに目立つ子が居たら記憶に無いわけありません」


 レヴィア・アリスフィード、彼女はどこから現れたのか。

 そしてレヴィアのような人が他にも居るのか、それも探ってみる必要があるだろう。


「後は……インターネットでの情報収集が可能かですね」

「ああ、グレイト電気に行ってみるって話だったよね」

「出来れば早めに行きたいです」

「じゃあ、今日このまま行く?」

「えっ?学校は……」

「レヴィアが教えてくれたよ。優れた魔術師ってのは自由に研究するのが本道だってね」

「そ、そういう物なのでしょうか?」

「そういうもんだよ」

「……判りました」


 基本的に観月さんは俺と同様に優等生で通して来たんだろう。

 何度も学校をサボる事を少し迷ったようだったが、結局は了解した。

 しかし、学校をサボって二人で買い物だよ。

 もう、これは完全にデー……ゾクッ


 俺が妄想を始めようとした瞬間、悪寒が走った。

 誰かに見られている気がする。最近、俺の悪い事測定器働き過ぎじゃないか?


「どうしました?桐嶋さん」

「ううん、何でも無いよ」


 ミエナイブログ……あのメールを寄越した奴が俺達のこの行動を容認するのだろうか?

 一抹の不安は、抱いた期待以上に俺の心を掴んで離さなかった。

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