表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/25

3章・友達症候群

期末テストは僕らに多大な精神的ダメージを与えてくれた。


コイツは忌ま忌ましいことに、

テスト前にはテスト勉強という苦痛を

当日にはテストという苦痛を

後日にはテスト返しという苦痛を

それぞれ与えてくれる。


そういえば

テスト返しが終わったあとのHRのとき


「テストはやるだけじゃ、意味ないかんな!復習が大事なんよ!!復習が」


と担任で物理の教師である勅使河原 元治てしがわらもとはるがテスト返し後にある、復習という名の第四の苦痛を教えてくれたな。




で。今は……


「……………」


「………はぁ……」


「…う………うっ」



浅間と僕と小鳥遊とで 僕の部屋で反省会をしている



瀧澤は突っ伏したまま

微動だにしない。


「………………」


無理もない。

全科 赤点の上に

冬休みの補習の通知が届いたらしい。



「うぅ……ッひっぐっ……」


小鳥遊はガチ泣きしていた。


彼女の場合、赤点ではないのだが…


テスト寸前にテスト勉強が手につかない状況だったとはいえ、3週間前から必死に勉強してきた彼女にとって

全科平均点以下は

かなりのショックなのだろう。


まあ。いつものことなんだが。



「……はぁ…」


僕はこの二人ほどじゃないが

精神的ダメージをくらっている。

点が低いとかじゃないんだ。低くもなく、高くもないのが…


どんなに勉強しなくても“平均点”だったことが


それが僕にはかなりの苦痛だとは



理解してくれないだろう。







しかし、この雰囲気はまずい。


さながら、お通夜だ。

いや、お通夜よりお通夜らしい。




「…お兄ちゃん?」





サイレントな場面では妹のか弱い声がはっきりと聞こえた



「…………ッ!?」

瀧澤は完全制止状態から頭だけ、僕の妹友愛に向ける。



コイツ目が輝いてやがる。



まあ、僕も目を見開いた。

僕の妹と弟は滅多に部屋から出て来ない。


出てくる時は二択。


トイレかご飯の催促。


喧嘩をしたときは、一週間くらい断食するし、トイレもペットボトルで処理して部屋から完全にでてこなくなるほどの引きこもりなので、こうして部屋から出てくるのは一日一回くらいだ。


まあ、実際僕がみてないとこでは

もう少し出てるんだろうが


「…ゆあ?まだご飯じゃないぞ」




「……ちがうの。」




「?じゃあ、なんだよ?」




「………きたの。また。………お兄ちゃん助けて」






「…来たって……なにがだよ?」


ここにきて初めて瀧澤が喋った



「ゆあの同級生だよ。」


「ちがうもん。ストーカー!」



注。

ストーカーじゃないんだ。


伊丹いたみ すばる


という、小学生五年の ゆあの幼なじみだ。


ゆあが普通だったころに仲良くしてくれていた男の子だ。



最近頻繁に…いや前から来てはいたが

最近になって頻繁にくるようになったんだが…


当のゆあは迷惑がっている…


というより 恥ずかしがっているようだ。


まあ、長らく引きこもりやってたわけだし、他人と面を合わせることに極端に耐性を失っているだけだが。



「…お兄ちゃん…お願い…」


懇願されては

兄貴として蔑ろにするわけにはいかない。


「……わかった。」




ピンポーン







早速のお出ましだ…



「……ひゃうぅ………」


さっさと部屋に駆け込むゆあ。



「……たく。」



渋々と玄関のドアを開ける


と そこには

見慣れない中年男と30前の若い男がたっていた。



「……どちらさまですか?」



すると中年男が懐からあるモノを取り出した。


「県警の者ですが。山田太郎君だね?」



それは警察手帳だった。



「……?なんでしょうか…?」



警察によばれる心当たりはある。


通り魔とはいえ、人間を一人殺しかけたこと。


最近はいつも、それを気にしていた。



「驚かせてすまないね、今。お話できるかな?」

中年男は続けた


「…切り裂き魔の件について」




「…すいません。今はちょっと……。」


咄嗟の嘘。

杜撰な嘘だ。なんでだ?と言われたら

答えられなかったろう。


しかし若い男はこう返した

「そうですか。それじゃあ、明日の放課後ならどうかな?」



この嘘が奇跡的に剥がされなかった。

しかし、これ以上自分の都合の良いように話を進めることはできなかった。



明後日の放課後。



そう約束した。



「私は緒方義徳おがたよしのりという者です。」

とサーフボードが似合いそうなダンディな中年は名刺を渡した。


「あ。自分は越前雄生えちぜんゆうせいといいます。以後お見知り置きを」



「あの……これ……免許証……ですよね?」



「あれ???」

新米というほど若いわけではないが、彼が新米レベルでおっちょこちょいなのはわかった。



「おめぇは!名刺一つ満足に渡せねぇのか!?」


緒方さんはパコンと自分よりも大分身長の高い越前の頭をひっぱたいた。



「…ったく。それじゃあ、私らはここで。」


と言って、緒方は越前を引っ張って帰っていった。



越前は引っ張られながら



「せん…先輩……!めん……イデデ……免許証…が!……」


と言っていたが


「うるせぇ、あれはおめぇの名刺なんだろが!!」


と引っ張る緒方に圧倒され渋々越前も引きずられていった。



「…なんだったんだ……全く……。」



「太郎兄…どうしたの……?」



自分の腰辺りから声が聞こえた。



紛れもない

昴の声だった。


「太郎兄なにかしでかしたの??警察でしょ?あの人達」


昴が頻繁に来るようになったのは

切り裂き魔事件以降だったため、昴は僕がその被害者で切り裂き魔を倒したとは夢にも思っていないわけだ。


「おい、昴。」



「え?なに?」


と靴を脱ぎ、僕をスルーしながら部屋に入ろうとしているガキ…


だが。

昴はあのゆあの友達だ。

ぞんざいには扱えない。


「今日はゆあ、いねぇんだ。」


そう言っておけば、あとは馬の合わないゆうはしかこの家にはいないことになる。


それなら、昴も帰ってくれる……はず



「何言ってんの!太郎兄!ゆあが家からでるわけないじゃん!!

それに…ほら」



そう、指指した先には


「!…ふぇ……!」


ゆあが部屋から半身覗かせていた。


「ゆあ。いるじゃん!!」



「……ほ……ほんと…だな。」


隠れる気がないなら最初から出てやれよ……。


つか、コイツ。

ここまで露骨に避けられて、嫌われてるってわからねーのかよ…。


「ゆあちゃん!今日ね。竹中がさあ…」



「いやあっ!!」


ゆあは近づいてきた昴に、枕を投げ付けた。


「……おいっ。ゆあ…!」


ここまで昴を邪険にするゆあは初めてみた。


ここ、最近。

昴が家に上がっても、ゆあは部屋に閉じこもり完全ガードしていた。


だから、昴にとってもゆあがこんなに、こんな悲しい目で見るのも

初めてだったはずだ。



「……ゆあ??…ごめん…悪かったよ、部屋に……上がって…さ。」



「……昴…ちがうんだ。ゆあは……」


活発そうなイメージな昴も、

今にも泣き始めそうなほどだ。



「……でも、おれ。ゆあちゃんと……話たかっただけ……なんだ。」



ゆあは、それ以上聞かずに。

部屋に引きこもってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ