2
進路のことに関してはまだまだ獅子道くんも悩んでいるみたいだし、今、俺が口を出したら本当に獅子道くんのやりたいことができなくなるかもしれない。優しいひとだから、きっと俺のことを優先する。
どうか関西には行かないで。
俺の傍にいてよ。
そう言いたい気持ちをぐっと堪えて、俺は再びへらりと作り笑いで自らの感情を誤魔化した。
「蒼人くん?」
「なんでもないですよ」
矢野先生が出て行った保健室。窓の外からは、短い昼休みだというのにサッカーをしている先輩たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
そんな楽しそうな明るい声とは裏腹に、気を抜いてしまうとどんどん気分が下がっていく。そんな俺の顔に陰りが見えたのか、獅子道くんが心配そうに隣から見つめてくる。
(甘えても、いいだろうか)
躊躇ったのは一瞬。彼の肩に頭を乗せれば、「ひゃっ」という声と同時にびくりと体が跳ねた。
嗚呼、かわいくってたまんない。この人の全てを、どうやったら手に入れられるのだろう。その答えなんて、とっくの昔に気付いている。見ないように、触れないように蓋をしていただけ。
「獅子道くん、耳まで真っ赤ですよ」
「分かってる。恥ずかしくなったらすぐ赤なるねん」
「じゃあ、今恥ずかしいんだ。かわいいですね」
「やめてぇや……」
視線を上げて隣の様子を伺えば、耳まで真っ赤に染まっている。ずっと疑問だったのだけど、この反応って、脈アリなのだろうか。でも、獅子道くんの恋愛対象が男だとは限らない。友だちが少ないから、単純に他人との距離の近さに恥ずかしがっているだけの可能性もある。
獅子道くんの考えていることが分からない。むしゃくしゃした気持ちを発散するために頭をぐりぐりと擦り付ければ、「あ、蒼人くんっ」と焦った声が聞こえてきて満足する。
いつだって、獅子道くんは俺のことで頭の中をいっぱいにして、翻弄されていればいいのに。
その日の夜、ベッドに横になって考える。
俺の未来に獅子道くんがいないなんて、想像しただけで胸がギュッとなった。もう、腹を括るしかない。今宵の真ん丸なお月様に誓おう。太陽がいないと、月は光り輝けないのだから。ずっと避けていた現実から、もう目を逸らさない。ただの後輩からステップアップするときが来たんだ。
――獅子道くんが好きです。
友だちとしての関係は今後も続いていくかもしれないけれど、それじゃあ全然物足りない。俺は、貴方の唯一無二になりたいんだ。
関係が変わってしまうことに怯えていたけれど、この言葉を伝えなきゃ始まらないのなら……。独占欲も嫉妬も、狭量な俺の全てを曝け出して、愛情に不慣れな獅子道くんにただ真摯に愛を伝えよう。そう、決めた。




