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ゴブリンの群れ

 考え事をしてると「あのさ」とハルカさんに声をかけられた。ん、なんだろう?


「おじおじ。あんまり私らに遠慮するなよな。いや、してねえなら、それで良いけど。とにかく、私らは、おじおじのことを信用してるからよ」


 ハルカさんがそう言ってくれて、凄くありがたかった。もしかしたら、彼女は俺から遠慮の空気みたいなものを感じ取ったのかもしれない。それは、察しが良いと思いつつ、もう少し彼女たちに積極的に話をしてみようと気持ちを改めた。


 ワイルドピッグの討伐後、俺たちは十数分程の小休憩をとった。今の戦闘でサナたちに疲労はたまっていないだろうか? 直接の戦闘をしていない時も、俺はサナたちが心配だ。それと同時に沸々と沸き上がってくる思いがある。俺は彼女たちが強くなるところを見たい。


「皆さん? 無理は禁物ですよ。これ以上の探索が難しいと思った時は、帰る判断をするのも大事です」


 俺の言葉にサナが「まだやれます!」と元気よく答えた。ハルカさんとウイカゼさんからも、まだ続けられる、という旨の返事が来た。無理はよくないが、彼女たちはまだ余裕を残している。ならば、できるだけ彼女たちの意思を尊重したい。


「分かりました。冒険を続けましょう」

「ありがとうございます。黒騎士のおじさん。さ、皆! がんばるぞー!」

「「おー!」」


※がんばれー

※無理はしないでね

※頑張って!

※がんばるぞー!

※おー!


 コメントも盛り上がってる。であれば、俺は全力で彼女たちの冒険をサポートする。ちょっと、動いているうちに昔の感覚も戻ってきた。このダンジョンでなら、ボスが相手でもまず負けないはずだ……俺がついているなら、今の彼女たちにもう少し高いハードルを越えさせてみても良いんじゃないか?


「皆さんまだ余裕があるみたいですね。皆さんさえ良ければ、やってみますか? ボス討伐」

「「「ボ、ボス討伐!?」」」


 おー。皆面白いように驚くな。けれど、俺は大丈夫だと思うんだよな。ここのボスって単純な戦闘能力はワイルドピッグとどっこいだし。今の、彼女たちなら越えられる壁だ。


「ボ、ボスの討伐なんて、私たちにできるかな? できるなら、やってみたいけど!」

「ハルカちゃん的には、できるとは思うぜー。武蔵野のボスはさっきのブタさんと同じくらいの強さだって聞いてるからな」

「じゃ、じゃあ中堅の冒険者が挑むような魔物ではありませんか。本当に大丈夫ですの? ま、まあ、いざとなれば黒騎士のおじ様も居ますし、なんとかは、なるのでしょうが」


※悩むよねー

※ボス討伐。いけるか?

※黒騎士おじが居れば負けはないだろ

※おじさんが居るし気楽にやっちゃう?

※大事な選択肢だぜー


 俺は提案するだけだ。この件についての最終決定権はサナたちにあるべき。さっき、休憩中の話し合いで戦闘時と本当に緊急な決断に関しては、俺に一任するという話にはなっていた。だけど、こういう選択は皆で話し合って決める。そうして俺はなるべく彼女たちの意思を尊重する。そう決めたし、俺はそれが良いと思う。


「……それじゃあ、ハルカちゃん、ウイカゼちゃん、そういうことで、決めて良いよね?」

「おう! ハルカちゃんは、サナサナの意見に賛成だぜ」

「私も、右に同じですわ」

「ありがとう! 二人とも!」


 話し合いが終わったようだ。サナが俺に顔を向ける。彼女の冒険へのワクワクした顔を見ると、こっちも同じような気持ちが湧いてきた。


「私たち、武蔵野ダンジョンのボスに挑戦します!」


※おー!

※よう言うた! それでこそや!

※なら、やるっきゃないね!

※おじさん、サナ姫たちをしっかり守ってね

※皆がんばれー


 コメントの皆も、こっちを応援してくれている。その気持ちに応えないとな! 俺も頑張る。武蔵野ダンジョンのボス。ホブゴブリンの討伐に向かうとしよう。


 それから、草原を進むこと数十分。時々生えている背の低い木々を頼りに、俺たちは目的の場所を見つけた。昔と変わらない場所に集落があって、安心感すら覚える。


 集落から、少し離れた地点で、俺たちは敵の観測をする。木を組み合わせて作られた、背の高い柵に囲まれた集落は、ここからでは中を、はっきりとは確認できない。出入り口は二つだな。やぐらがあって、そこには弓を構えた小鬼が居た。そいつは、辺りをキョロキョロ見回している。


「あれがホブゴブリンですの?」

「いや、ハルカちゃんは知っているぜ。子分のゴブリンだな。ホブゴブリンの取り巻き連中さ。こっからだと確認できないけど、たぶん柵の向こうには、うじゃうじゃ居るだろうよ」


※ゴブリンか

※ゴブリン討伐すべし。慈悲は無い

※ゴブリンは数が厄介

※ホブゴブリンって、もっとでかいんだっけ?

※作戦タイムだぜ

  

 ウイカゼさんとハルカさんがヒソヒソと話し合う横で、俺は、これからパーティでどう戦おうかと考えていた。ぶっちゃけ俺がS級冒険者のステータスでごり押しすれば、それだけでも勝てる。けど、それでは彼女たちの成長に繋がらない。俺はサナたちに冒険者としての成長を望んでいる。


「おじさん、私たちはどう動くべきだと思う?」

「そうですね……」


 サナに聞かれ、俺は皆に、それまでに組み立てていた作戦を伝える。きっと上手くいくし、それに、いざとなれば俺のステータスで、ごり押しする。ごり押し作戦の方は、できれば使いたくないプランBだ。まずはプランAで気合いをいれていくぞ!


「……では皆さん。この作戦で異論はありませんか?」


 俺の問いに、三人が頷く。よし、そうと決まれば作戦開始だ。


「ならば、ハルカさん。まずはあなたが頼りです」

「おう、任せとけ」


 ハルカさんは草原の地面に片膝を突き、弓を構える。矢をつがえ、狙いを定める彼女の集中がこちらにも伝わってきた。その所作には、ある種の美しさすら感じる。


※あたれー!

※当てろー!

※必中祈願

※ハルカちゃんの活躍なるか

※こういう時のハルカちゃんは強いぞ


「……狙い撃つぜ」


 ハルカさんの放った矢がゴブリンの頭に突き刺さる。深々と矢の刺さった小鬼は、フラフラとたたらを踏み、やぐらから落ちた。さあ、向こうはすぐ異変に気づくぞ。


「では、皆さん。あとは手はず通りに」


 俺はゴブリンたちの集落に向かってダッシュする。もっと性格に言えば、集落の出入り口の一つに向かって走った。ゴブリンが出てくる前に出入り口へ到着したい。気持ちは焦る。


 走り出して数秒で出入り口に到着、ここからの、ゴブリンたちの進行を封じるのが俺の役目だ。ここで俺のスキルを使う! さあ、出番だぞ! 俺の影たち。しっかり働いてくれよ。頼りにしているんだからな。


「影犬!」


 攻撃力はほとんど持たないが、相手を追いたてたり、拘束したりするのには使える。漆黒の犬たち。そいつらが、俺の影から次々に涌き出てくる。黒眼ほどじゃないけど、こいつも結構魔力を使うからな。とっておきの一つだ!


「さあ、お前たち。ゴブリンどもを追いたてろ!」

「「「ウォン!」」」


 十頭近い数の、影で作られた犬たちが集落の小鬼たちを追い立て、噛みつく。集落の小鬼は結構な数で、二十体は居るか。一体一体は弱いが、これだけの数が居れば、無策の新米冒険者では返り討ちに合うだろう。ま、俺の敵ではないが。今回、この戦いの主役はサナたちだ。彼女たちが上手くやれるか、期待と心配が半分ずつだな。いざとなったら、俺がフォローに回るけど、上手くやってくださいよ。皆。


 ここからでも、集落にあるもう一つの出入り口の様子は分かる。あっちでは、サナたちが戦いを始めていた。あっちは今のところは上手くやってる。俺の方は影犬たちと協力して、敵の半分程度を引き受ける。


 何頭もの影犬が多くのゴブリンたちを的確に追い立て、出入り口へ誘導する。できる限りのゴブリンは一体ずつ誘導。残りは影犬で適当に追い回す。こっちに来たゴブリンは俺が倒す。そうすることで、サナたちは無理の無い範囲でゴブリンの群れと戦える。


「こっちは通さないが、あっちもサナたちが待ち構えてるぞ。さあさあ、どうする。ゴブリンども」


 ゴブリンたちは狼狽えている。だが、これだけで、そのまま勝てるほど甘くもないんだよな。なんて、考えていると――大きな音が響いた。固く大きな何かで地面を殴ったような音。その出所には、一体の鬼が姿があった。ゴブリンを小鬼と形容するならば、あいつは鬼だ。百八十センチはあろうかという鬼が、こん棒を構え、俺の方へと向かってくる。


 やつは、ホブゴブリン。武蔵野ダンジョンのボスだ。サナたちの経験のために、今は時間稼ぎをさせてもらうぞ。

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