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彼女と鬼の戦い

 ホブゴブリンはすでに俺の近くまで接近している。だが焦る必要は無い。落ち着いて、対処すれば攻撃に当たる事すら無いのだ。簡単に倒せる相手だが、お前はサナたちの相手として、とっておく。なので、お前を倒すのは後!


 ホブゴブリンと共に襲いかかってくるゴブリンは……減らしておくか。ゴブリンは個体としての強さはE級程度。その程度の魔物であれば、スキルを使う必要すらない。恐れるに足らずだな。


 愛剣ツラヌキで迫るゴブリンたちを素早く突き刺す! 首や心臓を貫かれた小鬼たちは次々に絶命。その様子に他の小鬼たちは怯むが、群れのボスであるホブゴブリンは臆することなく襲いかかってくる。さて、こいつを相手に俺も体をいっぱい動かすとしよう。単に無力化するだけなら影踏みから黒眼までのコンボであっという間なのだ。が、ちょっと回避の練習がしたいもの。


「ホブゴブリン。俺の運動にちょっと付き合え」


 怒る鬼からこん棒による重撃が迫る。俺は、その攻撃を最低限の動きで回避。その後、連続して迫る攻撃も容易く回避する。こいつの攻撃は単調で読みやすい。そのうえ、スローすぎてあくびが出そうだ。


 戦闘が続き、俺とホブゴブリンの戦いを回りの群れたちは遠巻きに眺めている。と、そこへ小鬼めがけてヒュッと矢が飛んできた。一体のゴブリンが頭を貫かれて絶命。お、サナたち速かったな。皆、もう一方の出入口付近での戦闘は終わらせたか。関心関心。


「おじさん、大丈夫ですか!?」


 サナに呼ばれ、俺は軽く盾を振って応える。これくらいのレベルの魔物が相手なら、こんなことを、しながらでも戦える。


「こっちは大丈夫です。皆さんは今のうちに、小鬼たちの相手をお願いします」

「「「了解!」」」


 三人娘が素早い動きで、残りのゴブリンたちを倒していく。彼女たちはさっき、Dランクの魔物を討伐したんだ。今更Eランクの魔物に負けるものかよ。ゴブリンの強みは数だが、ほとんどのゴブリンがやられた今、やつらの強みなんて無いようなものだ。しかも影犬たちのサポートもある。あっちは安心だな。


 こっちの準備はほぼ出来ている。邪魔なゴブリンたちはこっちでも、もうじき全滅だ。ホブゴブリンもここに押さえつけておくことができた。作戦は上手く行っているぞ。だけど、サナたちにとっては、ここからが大変だ。俺は彼女たちがこの成長のために必要な壁を越えられるって信じてるがな。


 先程のワイルドピッグとの戦闘でサナの目を見た時から、俺は彼女たちの成長を信じると決めた。今はまだ危うくて心配なところもあるけど、彼女たちは強くなる。だから今は俺の役目を全うする。サナたちの騎士としての、役割を遂行してやる!


 ホブゴブリンから俺へと、大降りの一撃が迫る。筋力に任せた単調な攻撃。見切るのは容易いぞ!


「パリィ!」


 攻撃を弾かれたホブゴブリンは後退し、肩で息をする。そんな鬼を、サナたちが取り囲む。子分のゴブリンどもは全滅だ。あとは、こいつを倒せば俺たちの勝利。さあ、もうひと頑張りだ。気合いを入れていこう、皆!


「敵は疲労しています! 今がチャンスです! が、くれぐれも油断しないように!」


 サナたち三人がこちらに視線を向けて頷く。その隙をホブゴブリンは見逃さなかった。サナたちの間をぬって逃げようと、勢いよく足を踏み出す。ま、その動きは読んでたよ。


「影踏み」


 逃げようとした鬼は、動きを縛られる。俺がここに居る限り、お前が逃げることは許さないぞ。さあ、サナたちと戦ってもらおうか。彼女たちは覚悟を決めてるんだ。お前にも、覚悟を決めてもらうぞ。潔く戦って死ぬが良い。


「おじさん、私! 行きます!」


 サナが、ホブゴブリンに向かって跳び込んでいく。対して、鬼のこん棒が勢いよく振り下ろされた。サナは盾を構えて重い攻撃を防御。


「うにあああああぁぁぁ!」


 サナが自らに気合いを入れるように叫ぶ。彼女は盾の上からのしかかる重みに耐えていた。頑張れ! サナ! 頑張れ!


「そこだぜ!」


 ハルカさんが鬼の手に矢を打ち込んだ。鬼はたまらず、持っていたこん棒を手放し、ハルカさんを睨む。そこへ更にハルカさんの矢が飛んでいく。その矢は鬼の片目を潰す! 良いぞ! 致命傷にはならずとも的確にダメージを与えている! その調子だ!


 サナが一旦、鬼から距離をとった。ウイカゼさんがサナに駆け寄り、その腕に、治癒魔法をかける。そこへ鬼は迫ろうとするが、俺の影踏みのスキルによって彼女たちへは体が届かない。


「ウルオオオオオオオォォォ!」


 鬼が叫ぶ。無事な方の手で地面に落ちていたこん棒を掴もうとするが、そこへ影犬たちが走ってきて、こん棒を拾うのを妨害する。やつは、地面に転がる武器を拾えない。そこへ再びサナが接近。手に持つ剣で鬼の手首を狙った。直剣による一撃。鬼の、切られた手首から勢いよく血が吹き出した。


 今のサナたちの火力ではホブゴブリンに一撃で致命傷を与えるのは難しい。だから狙うのは失血死だ。失血させて、殺す。その戦い方を、俺は卑怯だなんて思わないぞ。勝つためなら、なんでも使う。それが冒険者の戦いだ。まあ、この作戦を提案したのは俺だしね。


 すでに、勝敗は決した。あの失血では、ホブゴブリンはもう長くは持たない。あとは、俺が影踏みをしている限り、サナたちは、魔物に近づく必要すらない。そう思っていたのだが――サナが予想外の行動に出た。彼女は一歩前に出て、鬼へ向かって進む!


「サナさん! もう勝負はついてる!」

「勝負はついてるけど、私はできるだけ経験を積みたい! です! 私は、皆を守る強い騎士になりたいから!」


 ハッとした。サナ、お前の目にさっき見えた覚悟は、その言葉と同じなんだな!? なら、経験を積むんだ。そして、強くなれ! サナ! 叔父さんはお前を応援しているぞ!


 そこからは、サナとホブゴブリンとの一騎討ちになった。俺だけでなく、ハルカさんやウイカゼさんも、サナの戦いに横やりを入れたりはしない。きっと彼女たちもサナの覚悟が分かっているのだ。だから俺たちは、彼女と鬼の戦いを見守った。


 サナたちの戦いの向こうに、撮影機の姿が見えた。コメントが勢いよく流れ、全てのリスナーがサナを応援しているのが分かった。皆! サナの戦いを応援してやってくれ! 彼女は強くなることを望んでいるんだ!


「やああああぁぁぁ!」


 サナが果敢に切りかかるが、ホブゴブリンも必死に抵抗する。片目を潰されて、失血の酷い状態ではあるが、それでも拳を振って抵抗してくる。ホブゴブリンは、このダンジョンのボスモンスターだ。サナが拳の一撃を食らえば少なくとも骨を折ることは確実。それでもサナは前に出て、盾を構えて、剣を振る。その姿を見て叔父さんは、胸に込み上げてくるものを感じていた。


 やがて、決着の時が来る。サナが鬼の攻撃をかいくぐり、鬼の横腹を切り裂いた。深い一撃ではないが、その横腹から血が吹き出す。鬼は膝を突き、うなだれた。そこへサナの、最後の一撃が決まる。サナの剣が、鬼の首を切断したのだ。おお!? ここでクリティカルヒットか! 鬼は首の切断面から勢いよく血を吹き出し、その巨体は静かに塵へ変わっていく。鬼の体が全て塵になって消えた時、サナは剣を高く掲げて叫んだ。


「うああぁぁ! やっだああぁぁ!」


※やったぜ!

※ないす!!!!!

※感動した。サナちゃん君がナンバーワンだ

※やったあああああああ!

※サナ姫と皆の勝利だぁ!


 俺たちはサナに駆け寄ろうとした、その時。サナの体がほのかに光り始めた。ハルカさんと、ウイカゼさんの体も同じように光っている。俺は知ってるぞ。この光が何かを知っている! これは、レベルアップの光だ! それが、我がことのように嬉しかった! おめでとう! 皆、おめでとう!


「こ、これは……私の中に力が湧いてくるのが分かる!」

「ああ! ハルカちゃんも分かるぜ! これは……!」

「レベルアップですわ!」


※まじか!

※うおおおお!

※めでたい!

※レベルアップだ

※キター!


 サナたちは最初の、成長の壁を越えた! 本当に、本当におめでとう!

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15話と混ざってるよ
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