Lv45 愚者の集い
北にあるドワーフの拠点【ノーズ】の町。
大きな山の上で自然の地形を生かした街作りがされた雄々しいワールドとなっている。しかし、ここは五つの拠点の中でもプレイヤー人口がかなり少ない。ついでにアバターの種族としてドワーフを選択する人も少ない。
FOOにおいてドワーフは人気がイマイチな種族なのだ。
そんな拠点に“愚者の集い”のギルドがある。
大きな山にはいくつもの広い洞窟の穴があり、その空間に木造の建物が立っている。薄暗い空間なので夜になると悪の拠点のような不気味さがある。
「いよいよ潜入しますよ~」
ネムにとってもここに訪問するのは初めてだった。
「さ、行ってみましょう」
それでも恐れることなくギルドの扉に手を伸ばした。
※
建物の内装はファンタジー世界にありがちなギルドと酒場を掛け合わせたようなシンプルなデザインだ。掲示板の前では数名がクエストを物色しており、テーブル席にはいくつかのグループが飲食物を囲んでいる。
一見すると普通のギルドの風景に見えた。
「お、来たな」
すると一人の女性プレイヤーがネムを迎えてくれた。
「愚者の集いの紅一点、シシンさんじゃないですか」
和風というより中華系な装備を纏う、短髪の少女シシンはどこか男勝りな風貌だ。やや幼顔なので男女の判断はつかないが、露出させている肌や骨格はしっかり女性だ。
「ここはアイドルの来ていい場所じゃないと思うけど」
「え~だって五大攻略ギルドの一つじゃないですか」
「世間が勝手にそう呼んでるだけだ」
「まぁそれはそうなんですが…」
ネムは唐突に室内を見回す。
「想像していたよりも普通…というか賑わってますね」
ギルド“愚者の集い”の成り立ちはかなり特殊だ。
FOOのリリース当初はソロで自由界に挑むプレイヤーが大半だった。攻略貢献値一位の者に運営から豪華賞品が贈られるのだから当然だろう。
だがソロで活躍してきた精鋭たちが、50階層で次々とゲームオーバーになっていった。そこで多くの実力者はソロ攻略を諦めて徒党を組み“愚者の集い”を立ち上げた。
つまりメンバーのほとんどがライバル同士。内情を知らない者からは、殺伐としたギルドに見られるだろう。
「もっと閑散としているかギスギスしているものかと」
「ここの連中はそこまで醜悪じゃないって」
そう言ってシシンは近くのグループに手を振る。
「すげ、ここにアイドルの女子がいる」
「なんか絵面に背徳感あるな」
「…これって配信画面に映ってる?」
反応はそれぞれだがネムを煙たがってはいない。
「頻繁にここに顔を出す常連は交流的で割と仲良くやってるよ。確かに攻略貢献値一位の座は狙ってるけど、汚い手を使うような無法者と一緒にしないでもらいたい」
「なるほど~」
それを聞いてネムの安堵する。
「まぁここにまったく顔を出さない、自分勝手な奴がいるのは事実だけどね」
シシンはうんざりした仕草で息を吐く。
「都合のいい時にしか現れないし、仲良くなる気はさらさらないみたい。うちのギルド方針としては輪を乱さなければ自由にやっていいけど」
「リーダーのナユタさんもそっち系ですか?」
ナユタとは“愚者の集い”のリーダーに登録されている名前だ。
そしてこの場には現れていない。
「ナユタはちょっと特殊だからね…根は悪いやつじゃないんだけど、他の攻略組をとにかく嫌ってる。あんまり気軽に近づかない方がいいぞ」
シシンはどこか寂し気に目を伏せる。
どうやら詮索されたくない事情があるようだ。
「そんな“愚者の集い”ですが、攻略組はいつだって人材不足。ここに居る人たちと共に自由界へ挑むのも有りですよ」
するとネムは他よりも早めにギルド紹介を切り上げた。
ハッキリとは言わないが“愚者の集い”は新規プレイヤーにオススメできる攻略ギルドではない。大まかな方針と内情を紹介できればそれで十分なのだ。
「ついでにまだソロ攻略を諦めてない奴らは、そろそろウチに来た方が賢明だぞ。50階層の大ボス相手に単騎で勝てると思うなよ~」
横からシシンは画面に向かって呼び込む。
宣伝するなら新参よりも古参プレイヤーなのだろう。
「さて、次でラストですねっ」
こうして五大攻略ギルドの紹介も残すところ最後の一つだ。




