Lv44 オズの支援隊
始まりのワールド【ゼニス】の大都市。
ここには最も多くのプレイヤーが集まり、ヨウカのような例外を除けば新規プレイヤーはここからゲームが始まる。マイルームの他にもNPCが経営する装備店やレシピが販売されている施設が存在する。だが所詮はNPCが管理する店なので商品はそれほど充実していない。
それでも初心者の往来が激しいワールドなので、支援ギルドにとってここ以上に良い立地はない。頼もしい大御所ギルドが初心者たちを歓迎してくれる。
衣服や装備の制作を引き受ける“天の衣”
あらゆる情報を集める“ツチノコ旅団”
様々な依頼を請け負う“オズの支援隊”
どのギルドもプレイヤーが楽しいゲームライフを送れるよう支援に特化したギルドだ。彼らは慈安活動ではなく、支援することが楽しいから行動している。
他にも支援ギルドはあるが“オズの支援隊”は特別だ。
「初心者ツアーは後に続いてくださーい!」
「アイテム制作講座はこちらです!」
「レンタル装備二級大剣、三級片手剣まだあるよ!」
ここでは初心者から玄人まで様々なプレイヤーで毎日が賑わっている。やれることが多すぎるファンタジー・オーダー・オンラインの世界だが、ここに頼れば大体のことは解決する。
「あの人ってもしかしてネムちゃん…?」
一人のプレイヤーが配信しているネムの存在に気付いた。
「ネムってあの“ネムニマ”のネムっち!?」
「俺ファンなんだ!」
「私も私も、サインください!」
アイドルが人混みに現れるとこうなるのはゲームの世界でも同じだ。
「みんないつも応援ありがと☆」
だがネムはこういう展開に慣れていた。
「私のサイン付きお手製上級ポーションをみんなに配っちゃうよ~」
流れるようにファンサービスをしながら人混みをすり抜けていく。アイドルにおさわりは厳禁、防衛機能で彼女に触れることは叶わない。
「いらっしゃい、ネムさん」
そうしてギルドの正門を潜ると、エルフのお姫様が迎えてくれた。
「オズちゃんやっほ~」
迎えてくれるギルド長のオズマに対してネムは気さくに挨拶する。
「ここはいつも賑やかで雰囲気いいけど、アイドルが気軽に来れる場所じゃないね」
「リーダーの私が言うのも憚られるけど同感です」
「オズちゃんすごい人気だもんね」
「宣伝だからと貴女の誘いに乗ってコラボ配信をしたせいで、私をアイドルと勘違いする人も現れ始めています」
「またコラボしようよ」
「目立つのは苦手なのですが…」
二人の親しい友人のようなやり取りがしばらく続く。
「おっと、オズちゃん相手だとつい気が緩んじゃう」
「今は配信のお仕事に集中しましょう」
ネムとオズマは気を取り直して、まずは施設案内から始めた。
※
オズの支援隊にはいくつもの支部があるが、ここ本部はとにかく広い。
それでも役職ごとにスペースが分けられているので、入口に立てられた施設マップと案内板を見れば迷うことはない。何処に行けば悩みが解決するか初心者でも一目瞭然だ。
「ボス戦間地かということで、こちらのコーナーを紹介しますね」
オズマは武器と防具が並ぶ攻略支援施設にネムを案内した。
「ここでは戦闘に使える武具のレンタルに消費アイテムの販売。様々な役職の隊員を派遣してボス戦のサポートを承っています」
そして具体的な支援内容を紹介する。
「隊員も支援に特化した精鋭揃い。どんな攻撃も防ぐテトラさんのイージスの盾、機動力で敵のヘイトを集めるノミモさん。そしてもちろん回復とバフ担当の支援役が数人…」
「攻略貢献値を稼ぎたい人たちは脳筋ばかりだから、こういう人たちの支援がありがたいんですよね~」
支援に対する抜かりのなさにネムは関心する。
「そういえばオズちゃんも最近、戦闘訓練してるんだよね」
「ちょっと面白いスキルが手に入りましてね…」
「どんなのどんなの?」
「まだ練習中なので、マスターしたら公表します」
「え~気になる~」
「つっつかないでください」
隙あらばネムとオズマの私的会話が始まる。
だが二人のカップリングは大半のリスナーに好評だ。
「まだ施設の十分の一しか紹介してないけどいいでしょうか?」
「うん、今回は攻略関連だけでいいよ」
オズの支援隊は施設の全てを紹介すると切りがない。
「うちは攻略支援で活躍するギルドなので、一位の座に興味がない人を歓迎しています。みんなで協力して大きなことを成し遂げましょうっ」
最後にオズマが紹介を終わらせる。
「ところでネムさん、次はあの“愚者の集い”に行くんですよね?」
「そうだよ」
「それならこの支援提案書をリーダーの…じゃなくてシシンさんに渡しておいてください」
「別にいいけど何で私に?」
「ほら、あそこってちょっと気軽に行きずらい場所でしょう」
「やれやれ…支援ギルドの長が情けない」
オズマに手を振られネムは次のギルドに向かうのだった。




