Lv43 六星王
東にある人間の拠点【イスト】の数ある町の一つ。
自然にあふれた石造りの町並みに、草原の中にいくつもそびえ立つ風車の数々。やや田舎のファンタジー世界といった風景だ。
「えっと、どの方向だったっけ…」
まずネムはマップを開いて訪問先のギルドを探す。
メンバーが少数のギルドはマップに詳細な位置は表示されず、建物が小さければ探すのも一苦労だ。しかも攻略組は秘密主義なので詳細情報まで非公開にしている場合が多い。
「こっちだこっちだ」
入り組んだ裏道の隙間を通ると、地下洞窟へ通じる階段がある。階段を下ると僅かな日光しか通さない薄暗い入り江に到着した。
そこには六芒星の看板を掲げた小さな木造建物が佇んでいる。
「いつ見ても大型ギルドとは思えない佇まいですねぇ」
そう呟きつつネムは入口の扉を叩く。
「お持ちしておりましたよ」
すると扉からマントを羽織った怪しい男が現れる。
「こちらが五大攻略ギルドの一つ、“六星王”リーダーのカラクさんです。特級スキル“闇魔法”を操る、最強の後衛とも称される実力者ですよ」
ネムはカメラを向けてそう紹介した。
「いくつか語弊のある紹介ですね」
カラクはフードの奥から薄気味悪い笑みを覗かせる。
「ギルドを立ち上げるにはリーダーが必要なので、比較的常識人の私がまとめ役を引き受けているだけです。ついでに他の後方支援を差し置いて最強は名乗れませんよ」
「相変わらず謙虚ですね~」
ネムはそう言いながらギルドの看板を見上げる。
「六星王はその名の通り構成員はたったの六人。たった数人だけで39階層の大ボスを倒したことで注目の的になった、まさに少数精鋭の攻略部隊です」
そう解説しながら建物の中に侵入する。
外観通りで室内は飾り気がなく寂れた集会場だ。
「お、みんな集まってるね」
中には数人のギルドメンバーが顔を揃えていた。
「やれやれ…手短に済ませてくれよ」
「うちは新メンバーの募集はしてないぞ」
「んんw相変わらずネム氏は可愛いですなw」
「………」
メンバーは全員が男性。
ネムは勢いで紹介を済ませることにした。
「こちらのやれやれ系の人は大剣使い、前衛のスプンタさん。七聖戦士団のヴァルさんと神々しき獣のベオさんと肩を並べる、攻略組最強の近距離三銃士と称されています」
「やれやれ…大袈裟な紹介だな」
「隣のメガネ系はパーティーの司令塔、中衛のデスクさん。回復にバフと支援に特化していながら、小さなタクトで変幻自在に魔法を操る魔法剣士です」
「知略に優れた攻略組の指揮官、と付け足しておく」
「次は巨大な武器を背負った変な喋り方をしている、前衛のロジカルさん。攻撃力と防御力の二つにだけ特化していて、特殊な武器“槍盾”で攻守を熟せる強固な重槍兵だ~」
「火力押し以外ありえないw」
「そして部屋の隅で道具を弄っているのは、後衛のロストさん。特級武器“拷問道具”を駆使して相手を出血状態にさせながら体力を奪う、珍しい戦法を使う人ですね」
「………」
個性豊かなメンバーの紹介を済ませるネム。
「そして生ける伝説と呼ばれるこの男…自由界攻略が始まって以来、ただの一度もダメージを受けたことがないと囁かれる超絶ゲームタクティクスの持ち主。最強のプレイヤーことミカグヤくんだ!」
最後にネムは満を持して紹介するも、この場には紹介を済ませた五人しかいない。
「彼は病欠です」
代わりにカラクが応えてくれる。
「病気というか気持ちの問題ですけどね」
「もしかして59階層の大ボス戦にも?」
「ええ、不参加です」
「あらら…残念ですね」
「彼の欠員は痛手ですが我々五人の連携に弱点はありません。それに彼には心臓に悪い攻略前線より、エンジョイ勢になって平穏なゲームライフを送ってほしいものです」
「六人は仲良しでいいですねぇ」
ここで本人の病気についてあれこれ質問するほどネムは野暮ではない。いずれ六星王の中で何らかの結果が出るまで、過度な詮索をしないのがエチケットだ。
「少数なのでギルド規約がカジュアルな六星王ですが、新メンバーの募集はしていません。ただ六星王を支援する攻略ギルド“六条の戒め”はメンバー募集をしているので、この配信を見て興味を持った方は是非とも応募してみましょう」
最後に支援ギルドの紹介を挟んでネムは六星王の紹介を締めくくる。
「それではありがとうございました~」
「おや、もう帰るのですか?」
「もっとのんびりしたいけど次があるので。それに配信で男性と会話してると、やきもち焼いちゃうリスナーがいるのだよ」
ネムの配信は女性プレイヤーが目立つが、攻略組の男女比率は測るまでもなく男が多い。なのでゲーム攻略にアイドルが介入するのは賛否が分かれる所だが、ニマニマ動画は最後まで攻略を見守るつもりだ。
「アイドルも大変ですね~」
薄ら笑いのカラクに見送られながら、ネムは足早に次のギルドへ向かうのだった。




