地味男くんの変貌
同窓会当日、メリルはキースにエスコートされて会場へ向かった。
これまでの同窓会は、市街にあるダイニングバーで行われるのが定番だったが、今年は国営のペンションを貸し切りだ。
ペンションは山中にあり、交通の便が悪いため、例年通り市街地のお店のほうがいいという声もあったが、幹事が押し切ったのだ。
「今年は派手にやろうぜってさ。完全貸切だし、山ん中だから大騒ぎしてもオッケーって。明日の昼まで借りてるから、酔って帰れないやつは泊まってもいいってさ」
山道を運転しながらキースは助手席のメリルに言った。
「あ、俺は飲まないから大丈夫。日付変わる前にはちゃんと送り届けますので、お嬢様」
「ありがとう」
幼なじみのキースは、メリルの家族からの信頼が厚い。
同窓会への参加も、キースがエスコートしてくれるならと許された。
ペンションはまるで秘密基地のような佇まいだった。
真っ暗い山の中、そこだけオレンジ色の灯りが漏れていた。パラソルつきのガーデンテーブルにお洒落なランタンが置かれていて、そこが受付になっていた。
男性幹事一名と、女性幹事一名が待ち受けていて、キースとメリルに歓迎の声を上げた。
「いらっしゃいキース、元気そうだな」
「メリル! 久しぶりね。会いたかったわ」
名簿にサインを記し、案内表を受け取って会費を払った。
食事はデリバリーで配達してもらったものが、すでにセッティングされていた。徐々に人が集まってきて、開始予定時刻になり、幹事が挨拶と乾杯をした。
失踪事件で人騒がせして、5年ぶりに姿を現したメリルは、みんなから一斉に好奇の目を向けられ、質問の集中砲火を浴びるのではないかと覚悟していたが、どうやら自意識過剰だったようだ。
一通りの説明と謝罪をすると、みんな軽く受け流してくれた。
まあ人生色々あるよねえと、大人びた同級生たちは物知り顔で頷いてくれた。
もしかしたら事前にキースが根回しをして、あまりアレコレ聞いてやるなよと釘を刺したのかもしれない。
「よかったな、お前より注目の奴がいて」
そのキースがメリルに顔を寄せて、小声でささやいた。顎で示した方向には、本日の主役がいた。
サイモンだ。
サイモンは在学中、地味な男子だった。もっさりとした黒髪に、黒縁のぶ厚い眼鏡をかけて、猫背でひょろっとしていた。
声が小さくいつも下を向いていて、話しかけるとどもって答える。クラスで幅をきかせていた派手な男子グループによくからかわれていた。それを目にしては、メリルは嫌な気分になった。
どうにかしてあげたいが、女子が庇うとますますからかいの対象になる。
どうすればいいのかとモヤモヤした。そういうときに上手く立ち回って、場の空気を変えてくれたのはキースだった。嫌な感じのグループとも渡り合える、クラスのムードメーカーだったのだ。
このクラスにあまり楽しい思い出はなかっただろうサイモンは、今まで一度も同窓会に来なかった。今日が初めての参加だ。
その物珍しさから注目を浴びているだけではない。サイモンが目覚ましい進化を遂げていたからだ。
一言でいうと、超絶イケメンだ。
もっさりとしていた髪はスタイリッシュにカットされ、トレードマークだった分厚い黒縁眼鏡はない。顔の小ささに改めて目が行く。
背がすらっと高い。猫背がしゃきっと伸びている。手足が長くお洒落なブランド服に身を包み、芸能人のようなオーラを放っているのだ。
キースの言うとおり、サイモンが脚光を浴びているお陰で、メリルのインパクトは薄れている。




