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誘拐は突然に

本編は完結しましたが、ナタリー視点を追加連載します。

 



誘拐されて人質に取られる。

そのようなことがまさか自身の身の上に起こるとは、思ってもみなかった。


里帰り出産し、初めての育児に奮闘していたナタリーの元に、夫の知人を名乗る中年男が現れたのは、6日前のことだ。


ちょうど母親は買い物に出ていて、父親は仕事で不在だった。

生後二か月になる娘のルーシーは寝ており、ナタリーも近くのソファーでうとうととしていた。そこへ突然男が押し入って来た。


人の気配にはっとしたナタリーは、母が帰ってきたのだと思ったが、見知らぬ中年男の姿に心臓が止まるかと思うほどびっくりした。

驚きすぎて叫び声も出なかった。

咄嗟に頭に浮かんだのは、ルーシーを守らなくてはというただ一点だった。


「お金、現金なら、キッチンの引き出しに財布が」


強盗に出て行ってもらうには、金を与えるに限る。


「誤解しないでくれ、私は強盗ではない。欲しいのは金ではない。聡明な奥さんと可愛い赤ちゃん。ロイドは幸せ者だね」


男の口から夫の名前が出たことに、ナタリーは混乱した。


「主人と、どういうお知り合いですか」


普通の知り合いなら、こんな風に訪ねては来ない。夫の知り合いだとしても、面識がない相手が、家のチャイムを鳴らす段階を省いて、いきなり家の中にいるのだ。異常なことに変わりない。


「ロイが子供の頃からの、古い知り合いだよ。詳しい話は別の場所で。娘を連れて一緒に来てくれ。拒否すれば殺す。大人しくついて来れば、何もしない」


そう言って、男は胸元から取り出したピストルの銃口をベビーベッドへ向けた。

ナタリーは息を飲み、素早く思考を巡らせた。男は体格が良く、ガッチリと鍛え鍛え上げられた筋肉をしている。その上、飛び道具を手にしている。

一か八かで立ち向かってみたところで、ルーシーを危険に晒す確率が高まるだけだろう。


「分かりました。外出の準備をするので、少し待ってください」


(時間稼ぎすれば、そのうちママが帰って来るかも。でも、帰って来たママまで危険な目に……? 下手すれば殺されるかも……)


帰ってきた母親が家に入る前に異常を察知し、警察に通報してくれればいいが、何も気づかずに家に入って来る可能性の方が高い。母は些か天然で、おっとりしたタイプだ。


どうすればいいのかナタリーは考えたが、ゆっくり考える猶予はなかった。男に急かされた。


「荷物はいい。行こう。さあ早く、娘を抱いて」


ルーシーのミルクやオムツをバッグに詰めるナタリーに、男は容赦のない視線を投げた。

向けられた銃口から庇うようにして、ナタリーはルーシーをそっと抱き上げた。


「大丈夫、大丈夫よ」


目を覚ましたルーシーを見つめ、祈るように言い聞かせた。


その後、ルーシーを人質に取られたナタリーは1人で実家に戻り、誘拐犯の指示通り母親へ嘘の説明をした。

夫のロイドが仕事の都合で、訓練地での長期休暇となり、その間家族と過ごしたいと言っている。ルーシーはもう連れて行ったと。


「あらぁ、ずいぶん急ねぇ。挨拶くらいしていってくれても」

「ごめんね、ママ。でも軍人なんてそんなものよ、『仕事の都合』でいつでも急なんだから」

「そうねぇ、あなたも大変ねぇ。またいつでもゆっくりいらっしゃい」

「うん、ありがとうママ。また連絡するわ」


本当のことを言って、警察へ助けを求めるべきか迷ったが、下手な動きを見せれば娘は即座に殺すと脅されていた。


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