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それぞれの想い


翌日から2日間かけて移動した。

田舎に行くとホテルには空室が多く、メリル1人でシングルルームを取ることができた。

そしてようやくキースも爆睡できた。


移動手段はほとんど電車になる。

車窓から流れる景色を眺め、リズミカルな振動に心地よく身を委ねていると、ただの旅行気分になる。

遠足を思い出すなあとキースが言った。


その言葉に触発されて、メリルは高校の遠足を思い出した。

高校で1年半、ロイドと同じクラスで、公認カップルとなって以降は常に隣にいた。


ロイドの隣では普段より笑顔が増えた。

同い年だが皆より大人びていて、何事もスマートにエスコートしてくれる、自慢の恋人だった。

当時より精悍さが増して、より男らしくなっている。


(こうしていると昔を思い出すわ。もう他の人と結婚しているなんて、やっぱり嘘みたい)


メリルにとっては、つい先日まで同棲していた相手だ。

別れ話を切り出されることもなく、気が付けば5年経っていて、ロイドには妻子がいた。

とても受け入れがたいことだが、受け入れる他ない。


「ここらで降りて、もう泊まるとこ探した方がいいね。この先はド田舎で特に観光地でもないから、宿がないかも。明日はヘリオーズ入りして、ばあちゃんちだ」


サイモンが言った。


ロイドはこの旅の間、とても口数が少ない。

元々あまり無駄口は叩かず、要点を押さえるタイプだが、それにしても元気がない。


やはり、こうなったことに対する責任を強く感じているようだ。

メリルがロイドのために5年を捧げたことを知り、ロイドもショックだったのだ。


メリルが戻って来たことは、素直に嬉しい。

しかし、メリル失踪の真相を知り、新たな苦しみが生まれた。

これからの人生をメリルと寄り添っていけるなら良いが、自分には生まれたばかりの娘がいる。妻のことも愛している。

父親として夫として、妻子を守っていかなくてなならない。そしてメリルのことも必ず守る。


(そのための旅だ……)


まずは悪魔の指輪をメリルから外し、身の安全を保証すること。償いの話はそれからだ。


(思った以上にサイモンが厄介だな……。だがサイモンの祖母しか、指輪を外す術を知らない。火と水の使徒も必要だ。用意できないことはないだろうが、時間がかかる上、新たなリスクが生じる……)


背に腹はかえられない。

強力な協力者であるがゆえに邪魔になりそうな『ヒーロー』と、熱血漢で気のいい親友を眺め、ロイドは小さく息を吐いた。

ヒーローがいるからには悪役が必要だ。


ロイドがどこか思い詰めた様子でサイモンを見ていたことに、メリルは気づいた。

きっとロイドも一昨日のサイモンのカミングアウトに戸惑っているのだと思った。


高校時代は地味な存在だったクラスメイトが、とんでもない大金持ちに雇われて、私設ヒーローになっているとは驚きだ。

と同時に、メリルは妙に納得した。


人間離れした使徒の能力に、人目を引く見目麗しさ。何を考えているのか読めない飄々とした態度に、天然の異質さ。

凡人とは違う次元の存在、『ヒーロー』なのだと知ると納得だ。


しかしそれだけなら近寄りがたく、憧れは抱いても親近感が湧かないが、実は異性と話すのが苦手でお酒にとても弱いことなど、弱点がある分、人間味を感じる。

そのアンバランスさが、サイモン独自の魅力なのかもしれない。

きっと頑張って『ヒーロー』を演じている部分があるのだろう。時折見え隠れする、冴えなかった時代のサイモンを見つけては、メリルは親しみを覚えた。


(基本的に、少し子供っぽいところがあるのよね。クールビューティーな見た目に似合わず、可愛いというか。純粋というか)


悪い人ではない。サイモンが指輪を悪用するとは思えない。安全に保管できると言うなら、サイモンのボスに指輪を預けてもいい気はするが、メリル独断では決められない。


(とりあえずキースの言うように、ロイに返そう)



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