40話 夢
遅くなって申し訳ありません!
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目を開ければそこは暗い路地だった。その路地を僕は知っていた。そう、ここは僕がお嬢様に見つけてもらう前住んでいたスラム街だ。だからすぐにこれが夢だと気がついた。
懐かしみながらあたりを見回していると路地の奥の方からバケツを持った二人の子供が歩いてきた。二人の子供はどちらも小柄で栄養が足りてないことが一眼見ただけで分かった。
彼らに僕は見えていないようで、僕を気にすることなく横を通り過ぎる。
「ねぇヴェル。ボクもうお腹すいちゃったよ〜。なんでボクらにはお金ないんだろうね?お金がたくさんあればもっとご飯たくさん食べれるのかなぁ」
「そうだね。僕もお腹ぺこぺこだよぉ」
「もっといっぱいご飯食べたいなぁ」
二人の会話に聞き覚えがあった。少し違っていたけどこの会話は僕がお嬢様と出会う少し前にレジーとしだ会話だった。
咄嗟に二人を追いかけようと足を踏み出した途端パッと場所が変わった。
場所はまたスラムの一角。だが、そこはいつもみんなでご飯を食べていたスラムの中でも綺麗な所だ。
奥へ進むとあの時と同じ様にみんなでご飯を食べていた。古株のジュドー爺さんにエラ婆さん、ルーにソフィにレジーに僕。
懐かしくて遠目から様子を伺っていたが、みんなに僕が見えないことを思い出して近くに寄ってみると僕とレジーの会話が聞こえてきた。
「僕まだ食べ足りないよ。ヴィルは?」
「…僕もうお腹いっぱいだから残りあげるよ」
「っえ!本当か!?ありがとう!」
「ううん。どういたしまして」
幼い僕は精一杯の作り笑いをしながら残りをレジーに渡した。僕には分かるがあれは完全な作り笑いだ。それに幼い僕はまだお腹が満たされていないからかレジーが自分のご飯を食べているのを羨ましそうに見つめていた。
気がつくとまたパッと場所が変わった。
今度はスラムの端ですぐ横に大通りがあり、貴族の馬車がよく通る道の近くだった。
___ガタッ
後に反応して慌てて後の方を向くと幼い頃の僕が倒れていた。
あぁ、これは僕がお嬢様に助けられた日だ。
心の中でそう考えていると、大通りの方が騒がしくなった。
「クラリス様、お待ち下さい!あっ、そこは!」
誰かの叫び声が途切れた途端トタトタという音と同時に可愛らしい女の子が路地に入ってきた。そして、その女の子はそのまま倒れている幼い僕に慌てた様子で近寄り大声で叫んだ。
「お爺様、この子死んじゃうわ!早く家へ連れて帰ってお医者様に見せて!」
その言葉を聞いた大人がわらわらと集まってきた。そして、幼い僕は馬車に乗せられ連れて行かれた。
あの女の子はお嬢様だったのか。そう思った瞬間また場所が変わった。今回はスラムではなく屋敷だった。それも僕がクインシー家に引き取られた時に寝かされていた部屋だった。
まだ僕が目覚める前の様で、僕は大きなベッドで小さな寝息を立てていた。
___トントン
「入りますわよ」
扉がガチャと音を立て、お嬢様が部屋に入ってきた。お嬢様は両手いっぱいに花を抱えていて、ベッドの横にある棚の上の花瓶から生けていた抜き、持ってきた花を生けた。
それを見て僕はいつもお嬢様が花を入れ替えていたことを思い出し心が温かくなった。
そして、また場所は変わり、今回はお嬢様の部屋に移っていた。
二人で勉強をしているのだろうか机に向かって話をしている。
「ヴィル!そこはこうよ」
「あっ、本当だ。お嬢様はすごいなぁ。僕、お嬢様に敵わないよ」
「ふふっ、そうでしょう?いつも先生に賢いって褒めて頂けるわ」
「うわぁ、お嬢様流石です!」
二人は楽しそうに会話しているが僕は不思議に思いながら話を聞いていた。なんたって、僕の記憶とこの夢に差異が生じているからだ。
最初から少し違うなとは思っていたが、今回は完全に違う。確か、お嬢様は僕に敵わないと言っていつも必死に勉強していたはずだ。
何かがおかしい。少し考えると一つの可能性が浮んできた。それは、本来のゲームのシナリオだ。
また場所が変わった。今回は学園にいた。時間も変わっていた様で、周りを見ると大きくなった僕たちが歩いていた。
でも、やはり現実とは違っていて、お嬢様は趣味とは全く違う派手なドレスに身を包み、綺麗なウェーブのかかった白銀の髪はドリルの様にくるくるとまかれている。僕はいつもしていない眼鏡を付けて下を向きながら歩いている。
「ちょっと、そこの庶民!殿下から離れなさい!殿下は私の婚約者なのよ!」
よく見ると、フィンとアリスが二人で歩いているところにお嬢様が突っかかりに行った様だった。本来のお嬢様なら絶対に言わないし、やらない事だ。
まず、アリスに対して庶民なんて言ったことはないし、フィンとアリスが二人で歩いていても何も言ったりしない。
そこで、僕は確信した。これはゲームの中のお嬢様で、悪役令嬢になったお嬢様なのだと。
気づくとまた場所が変わっていた。今度は来たことがない場所。何故か震えが止まらない。
そこは何故か冷んやりとしていて、でも、騒がしく、熱気が篭っていた。
そして大きく鳴り響く号令。
『クラリス・クインシー、不敬罪及殺人未遂の刑で此処に処刑する』
____ドン
そんな音がした後また人々が騒ぎ出した。
目の前にいる僕は、翡翠の様な大きな瞳に大量の涙を溜めていた。
嗚咽する声が漏れる。だけど、此処には誰も僕の声が聞こえることはない。だって、此処は現実ではないから。
どうだったでしょうか?本来のゲームのシナリオ通り行っていたらのお嬢様の未来です。最後の部分は、夢?の中のヴィルトリノと本物のヴェルトリノも泣いています。分かりにくかったらごめんなさいm(_ _)m
高評価よろしくお願いします!




