通学路は本音のパレード!?
「行ってきまーす!」
パンを口に押し込み、新品の靴を履いて玄関を飛び出した
一歩外に出た瞬間、春の柔らかな風……ではなく、暴力的なまでの「情報量」が私の視界をジャックした。
「……うわっ、今日も多いなぁ」
家では依夜とお母さんしかいなかったから油断していたが、外の世界では隠し切れないほどの本音を乗せたミニキャラたちの、そう、まさに大行進状態だった。
信号待ちをしている、ビシッとしたスーツ姿のサラリーマン。本人はスマホを睨んで難しい顔をしているけど、その頭の上には大きなあくびをしながら歯ブラシでシュコシュコと歯を磨いているミニおじさんがいた。
「(……心はまだ布団の中じゃん。わかるよ~、私もねむい…おじさん、頑張って!)」
反対側から歩いてくる、いかつい革ジャン姿の強面なお兄さん。鋭い目つきで周囲を威圧しているけれど、その肩に乗ったミニお兄さんは、道端に咲くタンポポを見つけて「わぁ、おはな!」と言わんばかりにキラキラした目で拍手していた。
「(ギャップが激しすぎるってば……!)」
さらに、ヒールを鳴らして颯爽と歩くいかにも仕事ができそうなお姉さんの首には「やだー! お仕事行きたくないよー!」と言わんばかりに泣きべそをかくミニお姉さんがしがみついていた。
「(わかる、わかるよ……。大人もみんな頑張ってるんだね……)」
右を見ても左を見ても、本人の建前とは裏腹な、自由すぎる本音のミニキャラたち。
それがいちいち目に飛び込んでくるから、普通に歩いているだけでも私の脳内は実況中継で大忙しだ。
思わず足も止まっていた。
すると、後ろからランドセルを背負った依夜が走って私を追い抜いていく
「お姉ちゃん、止まらないで。遅刻するよ」
依夜の肩のミニ依夜も、「前方不注意!」と書かれた赤い旗を激しく振って私に呼びかけてくる
「わ、わかってるよぉ!……ああっ、ちょっとルン! 勝手にに行かないで!」
ルンは追い抜いていく依夜に負けるものかと言わんばかりに飛んで行ってしまった
「わっ、ちょっと待ってルン!」
私は慌てて、何もない空中に向かって両手を伸ばす。端から見れば、真新しい制服を着た女子高生が、春の朝から虚空に向かって必死にダイブを繰り返しているという、まさに「エア捕獲」の極致。
「つ、捕まえ……たっ! ……あいたっ!」
ルンを捕まえようとして目の前の電柱に気づかずにぶつかった、ミニ依夜が注意してくれていたのに何て情けない…
そんなことをしている間にどんどん依夜は遠ざかっていく
「お姉ちゃん、本当に置いていくよ。あと五分」
依夜が冷徹なカウントダウンを告げながら私の前を歩く
「ぶふぇっ……ま、待って! 五分って無理!」
おでこを押さえながら、私は再び逃げるルンを追いかけて走り出した。
ルンは楽しそうに、登校中の生徒たちの頭上をぴょんぴょんと飛び跳ねていく。
真面目そうな顔をして歩いている生徒のミニキャラにちょっかいを出したり、街路樹の桜の枝にぶら下がったり、もうやりたい放題だ。
「ルン、戻ってきなさーい! 迷惑だよそれ!」
必死に手を振り回し、時にはジャンプし、端から見れば「見えない何か」と全力で格闘しながら爆走する。
通り過ぎる人たちのミニキャラが「あの子、大丈夫……?」と不安げな顔でこっちを見ていたけれど、今の暖乃にはそれを気にする余裕なんて一ミリもなかった。
「……はぁ、はぁ……っ、ま、間に合った……?」
桜の花びらが舞う高校の正門
滑り込みでたどり着いたとき、私の前を歩いていた依夜が、スマートに立ち止まって時計を見た。
「あと一分。……お姉ちゃん、おでこ赤いよ。あと制服に桜の葉っぱついてる」
「……ぜぇ、はぁ……ルンの……せい……」
全力でルンを追いかけていた暖乃は息も絶え絶えになっていた
依夜は隣にある小学校へと歩いていく
「学校でドジしないでよ『高校生』のお姉ちゃん。」
依夜がやたら「高校生」を強調してきた、
「そうだ、今日から私高校生なんだもんね、」
息を整えて、気合をいれた暖乃は急いで学校へ入っていった
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