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拒絶の裏側

暖乃に背を向け、校門を出てから一度も振り返ることなく、私は駅へと続く道を歩いていた。

背筋は地面に対して垂直。歩幅は常に六十センチ。視線は十五メートル先。

幼い頃から鏡の前で叩き込まれた「安藤家の娘」としての歩き方だ。


(……関係ない。そう、関係ないのよ)


頭上のミニキャラは、私の一歩一歩に寸分違わず同期している。

感情を殺し、表情を捨て、ただ「完璧な安藤結」という虚像を維持すること。それが私の、この家で息をするための絶対条件だった。

数年前の記憶が、夕暮れの影と共に蘇る。


「結、またそんな顔をして。安藤家の人間が、人前で感情を剥き出しにするなど、お前のその一瞬の緩みが、安藤家の格を下げる。これ以上母親の顔に泥を塗るつもりか?」


厳格な祖父の冷たい声。隣で申し訳なさそうに頭を下げる母の姿。父が私を叱るたび、母の肩は震えていた。

私が一瞬でも「子供」に戻れば、母の立場が悪くなる。私が「本音」を見せれば、この家の均衡が崩れる。

それは防衛本能であり、母を守るための、幼い私なりの戦いだったのだ。

(……なのに、あの人は)


和田暖乃。

彼女の目は、恐ろしいほどに真っ直ぐだった。

私の鉄壁の裏側に、何か「しんどいもの」があることを見透かしたような、あのお節介な瞳。


「……っ」


不意に、指先が微かに震えた。

彼女が現れてから、私の「完璧な世界」に、計算不可能なノイズが混じり始めている。


一歩、歩く。ミニキャラも、同じように一歩、歩く。

(自由で、騒がしくて、何もない空中に手を伸ばして笑う……あんな無防備な人、初めて見た)


私には、彼女のことが一生理解できない。

いいえ、理解したくないのだ。

理解してしまったら、私がこれまで必死に守ってきた「完璧という名の鎧」が、音を立てて崩れてしまうから。


「……完璧じゃなきゃ、私は安藤結でいられないの」


誰にも聞こえない、消え入りそうな呟き。

駅のホームへ滑り込んできた電車の窓に、夕日に照らされた自分の姿が映る。


無表情。無感動。

それは、誰からも賞賛され、誰からも踏み込まれない、完璧な聖域。

けれど、ガラスの中に映るミニキャラの瞳には、ほんの一瞬だけ、自分自身にさえ縋るような「深い寂しさ」が滲んだ。

私はその影を振り払うように、冷たい鉄の扉の中へと足を踏み入れた。

明日、また彼女に会うのが、——壊されてしまうのが、怖くてたまらない。

正直なレビュ―していっていただけると嬉しいです。

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