Act1 Scene1
バレンタインを3日過ぎたある日、義理チョコを持って久々に家にやってきたメメ子と雑談していたらつい新作小説の話をしてしまい、読みたいとゴネるのでチョコも貰ったことだし渋々読ませている俺なうである。
スティル・アライブ他、数作をネットで公開しているとはいえ、目の前でしかも未公開作を読まれるのは流石に面映ゆいというか何というか。
救いは無言でなくちょいちょい会話を挟んでくれるところだろうか。
「ちょっとーこれー」
案の定あの箇所でメメ子が半笑いでツッコミをする。
「うんちぶりぶりは実話なんだよなあ」
「ワイちゃんのイメージぃー」
そう言いつつもどこかフザケてて喜んでいるメメ子を午後の柔らかな日差しがカーテンから差している。
今日は風も穏やかで暖房の効いた室内にいる分には悪くない。
「NHKきちゃー」さらに読み進めるメメ子は続けて「事実は小説より奇なりー」。
「実話なんだよなあ」
「んねー」
NHKからメールが来たことはもう仲間内のみんなに話してある。
「カクヨムでも俺はレアキャラなんだよなあ」
いいねは相変わらずあんまり付かないが、固定ファンも付きありがたいことだ。
「ホントと嘘? とで何かワイちゃんややこしやー」
「まあメタフィクションとフィクション混ぜたような感じだからね」
「初めて読む人混乱しそうー」
「それな」
狙っているわけだが。
「あとワイちゃんの出番が少ない!」
「主役は遅れてくるものだよ、メメ子君」
「でも最初に出しとるやんけー」
「それはそう」
あと “今”出てるぞ。
「んーまだ最初だねー」
一通り読み終えたのだろう、んーと伸びをしながらメメ子がそう言ってくる。
「そやな。まあ実際NHKがどうなるかわからんし」
「そうなのー?」
「明日電話来る感じ」
「あーねー。何話すのー?」
「さあ?」
少しはぐらかす。付き合いも長くなって大分メメ子の表情や思考が読めるようになってきた。お前の次のセリフは……。
『ワイちゃん出たい!』
「ちょっ――読まれたーHAHAHAHAHA」
お互い笑い合って、手元のキリッと果実で喉を潤した。このポン中ドリンクうますぎる。
「どうすっかねぇ。正直出たとこ勝負というか、テレビに出れるかはまだ分かんないな」
「あーねー。でもワクワクだねー。あっドキドキかなー」
「両方やなあ」
まだNHKがどういう扱いになるかは分からない。向こうもまだ決めていないのかもしれない。
「でも夏って?」
――言ってたよね? と小首をかしげるメメ子。
「メールの感じ、夏に何かやるんだろうな」
「番組かなー?」
「取材依頼したわけだから可能性はあるかなぐらい。とにかく明日また連絡するよ」
「夏かぁー」
メメ子が左手首を愛おしげに撫でる。そこにはタトゥーがある、『デスメメ子』のタトゥーが。
「太宰治賞もあるしねー。ワイちゃんワンチャン!?」
ワンチャンなのは俺だろう。とまれともあれどうであれ、今年は忙しくなりそうな予感だけが俺の片付いた部屋に漂っている気がした。でもそれはクソの糸で臭そうだった。チョコあとで食べるか。考えることは一杯だ。
頭を振って「とにかくヨシ!」と現場猫の指さしポーズをする俺に彼女も倣った。
上手くなったな、ヨシ!




