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第5幕 その1

 金ピースで一服ついた瞬間、『覚悟』を決めたばかりでまだ何かに依存している自分に気付く。ちょっと苦笑してしまうが悪い気はしなかった。


 むしろ愛おしいような不思議な感じだ。これが自己肯定ってことなのかもしれなかった。


 人を傷付け殺しかねない選択、メタ自分はそれはSEKAIで到底受け入れられないだろうと言っている。言っているのだが全く気にならないようなこの感覚。


 燻る紫煙に嘆息してスマホの通知を見やる。


 ちょうど夜明けごろか。良い偶然じゃないか。


 だが色々と決意したとはいえ、現実に俺にできるのはODコミュの管理人としてメンバー申請といいねを押すくらいなのだった。まあいいじゃないか。


 ODによる悪夢的なトラウマの再演だったが、本当に今は穏やかで――思い付いて洗面所へ行く。


 ライトを付ける。鏡を見る。俺だ。正真正銘間違い無く俺だ。穏やかな目をしている。 ワンチャン鬱治ったんじゃね? と自虐したくなるくらいには余裕がある。


 とりあえず鏡を見ながらヨシしてみる。意外と下手だった。


 何食ぶりかよくわからない食事を一本満足バーで済ませ(満足できなかったから二本だ)、再び返信やらなにやらしているとメメ子からLINEが来ていた。


『堂島さんー』


 おはようございますの現場猫のスタンプをまず送り、


『どした? あ、ちなみに今日から仮名・堂島改め、青ちゅ~でヨシなに』と返す。


 五分くらいして返信が来る。


『? LINEとか本垢の名前だよねー? 何かあったのー?』


『長いモラトリアムが終わりましてね』


『? 何かキモいけどヨシ!』


『ひどいのにやさC』


『でさーメジコンODって楽しい?』


 もっと驚くと自分でも思ったのだがそうでもなかった。冷静だ。


『もちろん! もちろん!』と言っている現場猫。


 ちなみに可能な限り俺のLINEは基本現場猫で全て返す。


『笑 ねえしてみたいー』


 予想通り。


 さて『覚悟』した身としてはどうするべきか。


 メメ子の背景は複雑だ。まだ三週間くらい前に自殺未遂をして、助かったのを歓喜してて、それを親友には話してなくて、躁うつでパニックで、親友を失ったばかりと。


 簡単に羅列するだけでこれだけある。その背後にはもっと俺には見えないものがあるんだろう。ガリガリ君食べてジョーカーみたいに笑ってるだけではないってことだ。


 一抹の迷いすらなかったというと噓になる。が、それでもそれは迷いなくスッと自分の中から出てきたように感じた。


『いいよ。オッケー』もちろん現場猫だ。


『ワイちゃんメジコンがしたいー』


『はいはい』


『何でもスタンプで返せるんだねー笑』


『YESYESYESYESYESYES』


 さて。


『じゃあ危険性とか説明しとく』


『ありがとー。ってかシッターしてよー』


『まずは考えてみよう!』現場猫は本当に何でもあるな。さて真面目に説明しよう。


『メジコンはDXMって成分でODする。で、プラトーって深さとかレベルみたいなのがあるんだけど、それは知ってる?』


『調べたよ! 第三プラトーしたいかな?』


 第三プラトーだと初心者一人はまずお勧めできない。シッターの俺がいたとしてもやって欲しくはないが……。


『りょ。少し危ないから』


『"覚悟"したッ!』


 ジョジョ読む余裕はありそうか? まあいい。


 それからメメ子の服用薬とDXMの相性を調べセロトニン症候群――SSRIなどとDXMを併用すると軽度から重篤な症状が出る場合があるからだ。


 そこは何とかクリアし、体型から摂取量を算出し飲む量を決めた。


 約束は――デス子の初七日が明けてから――八月五日に俺の家でメメ子は初めてのメジコンODをすることになった。

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