episode 0 chapter 3
確認したら火曜の0時までは行けた。ひゃっふー。
あと今回胸糞設定が出るので、そういうのはノーサンキューな方はごめんなさい。
「あ~、食った食った」
おっと、思わず口に出してしまった。だが思わず口に出てしまうほどにうまかったのだから仕方がないと思う。たださすがに少し食い過ぎたか? 煮込み二十五人前。あとパンと腸詰めとピクルスの盛り合わせは店にあっただけ全部食ったのはやり過ぎたかもしれない。これでは今日の夜の営業が心配だ。だからギルドを通じて食材の提供を急いでしておかないと、と思いたった。
「すいません、おねえさん。お勘定を」
そういって金貨をおいて席を立とうとするとおねえさんが「お、お客さん!」いいながら青ざめた顔であわててやってきた。
……しまった。足りなかっただろうか? 自分の失態を悟った俺がそろっともう一枚金貨を足そうとすると、
「違います! そうじゃないです! ていうか金貨一枚でも多すぎますから!」
はて、予想外。とはいえ俺の満足感的に金貨一枚は妥当なのだが。何しろこの世界には何もかもが足りない。木材、石、鉄、土、そして水。そんな中、食い物なんてものはその最たるもので、そんな中旨いものを俺の腹いっぱい食わせてくれる時点でこの店は貴重だから多少のおつりとかはいいのでどうぞもらってくださいという気持ちなんだが。
「はぁ……、何だか気が抜けてしまいました。いつもごひいきいただいてありがとうございます」
「いえいえ、いつも好きに食べ散らかしてごちそうさまです」
俺がそう返すとおねえさんははにかむように笑う。栗色の髪をした小柄な【種族:アリエスタン人】の女性なんだが、やさしげでやわらかな笑顔がとても素敵である。特にそばかすがチャーミングで、普段周りにがさつか何かとデカいか腹黒かおっかない女しかいない俺には何ともまぶしい。
それにしても……、と疑問に思ったことを聞いてみる。
「ところで親父さんは? あの人がいたらこんな自称【職業:探索者】の生ゴミどもに好きにさせるはずがないんだけれど」
俺がそういうとおねえさんの顔が曇る。……やってしまったらしい。
「……帰ってこないんです」
「帰ってこないって、家出ですか? あのひげ親父」
くすりと笑う笑顔がすぐにまた曇る。痛々しい。
「家出って……、違いますよ。探索に行って帰ってこないんです」
あの親父、いつの間に現役復帰を?
「出かけてどれくらいになります?」
「一月くらいになります。ちょうどお客さんがこの前来て父に……、あの、食い過ぎだぁ! って怒られたあとすぐ」
あぁ、そんなこともあったな。そういえばあの時は昼過ぎに入って煮込み十人前食っただけで怒鳴り散らされたんだっけか。あのひげ親父のチビとはいえ背丈を超えるような包丁突きつけながらな。
……通りで今俺が過去最高の満足感を覚えているわけだ。あのひげ親父がブレーキをかけなかったから好きなだけ食えたわけか。なんとなく後味が悪いな、くそ。
そしてそこでもう一つ疑問が生まれた。
「それで親父さん、とっくに引退したんでしょうになんで急に現役復帰を?」
俺がそういうとさらにおねえさんの顔が曇る。
「あの……、そのですね。私が……、ある時に、いつかお母さんになりたいなって言ってしまったのを聞いてしまったらしく」
「あぁ、申し訳ありませんでした。いや、本当に申し訳ない」
あぁ、本当に申し訳ない。そりゃ、このおねえさんを溺愛しているあのひげ親父ならそうなるわな。なるほど、【社会問題:子株】か。改めて思う。この世界は本当にいつも崖っぷちで糞である。
何しろまともな人間がいくら望んでも好きに子供を産む権利すら認められないんだから。
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【権利:子株】とは。
我々の世界において資源は常に有限であり、それをみだりに浪費することは社会への、ひいては諸人類種の生存に対する大罪だといえるでしょう。故に諸人類種社会への貢献の大きなものこそ、自らの子孫を後の時代に残す権利があると私は考えます。
私はここに無制限な人口増加に歯止めをかけるため、一定の諸人類種への貢献に対してのみ子供を産むことを認める『子株』制度の制定を提案します!
【組織:ラディウエス諸人類種合同会議】における【法律:子株法】制定時の演説より (諸人類種統一歴6032年)
できたら乾燥ください。あ、感想。シリカゲルはいらない。