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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第四章 二度目のダンジョン

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13.ウナちゃんのお話 

 タイトル通り、ウナのお話になります。

 ウナとドスのショートストーリーですが、分割しました。


 ダンジョン製作から数か月余り―――――。


 表層ダンジョンはほぼ完成し、中層以降も後半のトラップや転移門を設置すればほぼ実用可能なところまで来ている。

 エリベルは既に表層のダンジョンにおける、冒険者や商人の流通を視野に入れて活動している。


 その間、眷属であるウナ、ドスは何をしていたのか。


 今回はそんな彼らのショートストーリー。




 レーナ湿原 sideウナ


 「泥ゴーレムの量産は順調ですね」


 ウナは湿原で父親であるアースから教わったゴーレム作りに明け暮れていた。

 最初は父の手伝いをして、泥を形にまとめるだけだったが、アースからやり方を教わり、自分一人でゴーレムが作れるようになった。


 だが、彼女の属性は『風』と『水』だ。


 ゴーレム作りの、本来の属性である『土』は持っていない。

 だが、泥と言う、土と水が混じっている性質上、ある程度属性が緩和される。

泥と言う限定条件下ならば、彼女でも、ゴーレムを作る事が出来るのだ。

 また、同じように雪であっても彼女はゴーレムを作る事が出来る。

 むしろ、雪ゴーレムの方が『水』の属性を持つ彼女の本領だと言ってもいい。


 だが、現在ダンジョンで雪ゴーレムはあまり必要とされていない。

 既に特殊環境用の雪ゴーレムは、出来上がっているからだ。


 なので、彼女が作るのはもっぱら泥ゴーレムばかりだ。

 もちろん、これには他の理由もある。


 その中でも重要なのが、レーナ湿原を横断しようとする人間の妨害だ。

 より正確に言えば、レーナ湿原を横断させずに、隣のユグル大森林へと誘導し、そこに設置したダンジョンを通過させるように仕向ける、という役割だ。

 ユグル大森林の、ダンジョンの入口は一箇所だけでなく、いくつも分散して設置している。

 更に、表層部分のダンジョンは森を横断する為や、転移門を使い、他の地域へのショートカットにも利用することが出来る。

 人間達にダンジョンの表層を移動に利用させ、その利便性を知って貰うと共に、彼らに口コミで広げてもらおうと言う訳だ。


 その為に表層ダンジョンは、ゆるい地下通路の様なダンジョンにしたのだから。

 特に、商人等の流通を生業にしている者達はターゲットとして申し分ない。

 

 まあ、効果が出るまでは、時間が掛かるだろうが、それならそれで問題は無い。

 もし、それで近づかなくなる様ならば、問題なし。

 転移ダンジョンはマッピングも慎重になるため、今の内から人を迎えても問題なしとは、エリベルの言だ。

 軍が派遣されても、中層以降の本気ダンジョンで迎撃の二段構えなのだ。

 すでに中層も百層以上は完成しているのだから。


 ―――という、説明をさんざんエリベルから受けているが、いまいちウナの心は晴れなかった。


 なぜなら、


 「はぁ……こう何日も、お父様に会えないというのは気が滅入りますね」


 そう、アースに、創造主である父に会えない。

 ゴーレム作りの為に、アースに会う時間が減る。

 それだけで、ウナの心は曇り模様なのだ。


 これが、アースの安全を守るための重要な役割だと理解はしている。

 頭では理解しているのだが、心がどうしても晴れない。納得していない。


 「はぁ……」


 ため息をつきながらウナは、懐から一枚の鱗を取り出す。

 アースが脱皮した際に、一枚もらったのだ。


 それをゆっくりと、顔へと持って行く。

 鼻に近づけ、その匂いを嗅ぐ。


 匂いを嗅ぐのは、心を落ち着かせるためだ。

 生物が生きるために呼吸をするように、これは必要な行為なのだ。

 主に精神衛生面において。


 「すぅー……すぅー……はぁ……落ち着きます。あぁ、お父様……私は早くダンジョンに戻りたいです。お父様のお世話がしたいです……」

 

 ウナは見た目だけなら、絶世の美女と言っていい。

 仮にも、無駄にゴーレム作りに拘りのある駄龍の最高傑作なのだ。


 そんな絶世の美女が、鱗片手にくんかくんかしながら、恍惚とした表情で涎を垂らす。

 そこはかとなく残念臭の方が漂ってくる。


 「それに、たまにはアグールの町で串焼きを食べたいですね……ん?」


 レーナ湿原の境界部分。

 そこから何やら、人影の様なものを感じる。


 「何でしょうか?」


 水面を移動し、距離を詰めるウナ。

 その影をよく見る、

 それは、汚らしいゴブリン――――もとい冒険者の姿だった。

 それが三匹。

 どうやらこの湿原を横断するつもりらしい。


 「………ちっ」


 あぁ、汚らしい。

 せっかくお父様の鱗を嗅いで、気分が回復したのに……。

 これは仕方が無い。


 殺してしまおう。


 精神衛生上、これは止む負えない。

 あんな汚らわしいものを視界に入れるなど、それだけで害悪だ。

 それに優先対象は、商人や貴族だ。冒険者など、殺してしまっても問題なかろう。

 実際には問題大ありなのだが、ウナは気付かない。

 さっさと殺してしまおうと、ウナが剣に手を掛ける。


 「死になさい、ゴブリン共―――――」


 だが、その時、思念通話が入った。


 『―――――ウナか?』


 『あ……えっ!?お、お父様ですか!?』


 アースからの思念通話だった。

 以前はダンジョンの外には思念通話を飛ばすことは出来なかったが、エリベルと術式の改良を進め、転移門を設置したエリアには、限定的ではあるが思念通話を飛ばせるようになったのだ。


 『ああ、すまん。今、大丈夫か?』


 『勿論です。お父様の通信以上に優先すべき事柄など有りません』


 『そ、そうか?なら、良いんだけど。実はな、ちょっと深層に水路を引きたいんだが、協力して貰えないか?ちょっと今、ユグル大森林の植物を深層で育てられないか、あそ…………あ、いや、け、研究中でさ』


 『分かりました。直ぐに向かいます』


 即決。

 迷いなどない。

 何よりアースの傍に行ける。

 何を迷う事があろうか、いやない。


 『そうか、ありがと。んじゃ、深層でまってるわ』


 『分かりました』


 何という事だろうか。

 ウナは先ほどまでの自分を恥じる。

 自分が不貞腐れている間に、偉大なる父は新たな試みに挑戦しようとしていたのだ。

 深層への植物培養。

 これは間違いなく、新たなダンジョンの特殊環境の試作に違いない。

 


 「待っていて下さい、お父様!」


 気持ちを一新し、ウナは転移門を潜り深層へと向かった。


 そして―――冒険者達の事など、すっかり頭の中から抜け落ちていた。


 ゴーレム・ホムンクルス第一号ウナ。

 そこはかとなく残念臭が漂うポンコツ長女である。

 

 ちなみに、冒険者の誘導は、泥ゴーレム達がきちんとこなしていた。


 上司ウナの尻拭いをするのも部下(泥ゴーレム)の務めなのである。






 冒険者A「なんか、俺、今凄い助かったような気がする。ゴーレムに襲われたのに……」

 冒険者B「奇遇だな、俺もだ。なんでだろうな?」

 冒険者C「あ、それ俺も思った。ゴーレムに襲われて、ついてねー筈なのにな」


 一応、最近の質問返しについては活動報告に載せました。

 多少の補完にはなるかと思います。

 そちらの方も見て頂ければ幸いです

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