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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第三章 龍殺しと眷属との絆

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6.親の心、子知らずもとい眷属の心、主知らず

 とりあえず俺は、ベルクと共にエリベル(骨)を落ち着かせた。

 ていうか、ベルクもベルクで騒いで大変だった。


 「おぉ……エリベル様お会いしとうございましたあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」とかいって、めっちゃうるさかった。


 むさい巨人のおっさんが頭蓋骨に抱き着く光景は地龍の俺から見てもシュールな光景だった。

 ベルクは滝のように涙を流し、その頬をエリベル(骨)に擦り付けていた。

 どうやら、俺に文句を言いつつも、やはり内心では再び彼女に会うことを望んでいたらしい。

 本当嬉しそうな笑顔を浮かべるベルク。

 でも、エリベルは「うるさいわ、クソボケ!!帰れ!!つーかヒビが入るわ!!」とベルクに怒鳴っていた。


 慈悲は無かった。


 エリベルに怒鳴られて、ベルクは部屋の隅で三角になっていじけている。

 しくしくしくと、泣きながら、“の”の字を床に書いている。

 その背中からは妙に哀愁が漂っている。

 トレスがその背中をさすっているのが可愛かった。

 う~ん、なんか流石にちょっと可哀そうに思えてきた。


 まあ、二百年もずっと一人でダンジョンの奥にいれば、そうなるのかな。


 ………考えてみれば、このおっさんは、このおっさんで凄いよな。

 二百年以上も誰も来ないダンジョンの奥で、たった一人で主を守ってたんだ。

 それがどれだけの苦行か俺にはわからない。

 そんな事、俺には絶対に出来ない。

 まあ、それだけベルクのエリベルに対する忠誠心がすごいって事なんだろうな。

 眷属ってのは、みんなそういうもんなんだろうか?



 ――――――――――私はずっと貴方の御傍におりますよ?



 ……ふと、なぜか俺は、表層にいる俺の眷属兼盾役の蟻の事が頭に浮かんだ。

 ベルクはエリベルの最初の眷属だと言っていた。

 考えてみれば、過程はどうあれ、俺にとっての最初の眷属はアイツなんだよな……。

 知らぬ間に、どんどん強くなっていくアイツが。

 アンが。


 『……………』


 いや、今はそんな事いいか。

 その後、しばらくしてから、ようやく彼女は自分の現状を把握したようだ。


 ついでに、俺はベルクに説明したことをもう一度、エリベルにも説明した。

 もちろん念話で、

 はぁ、なんか今日の俺、喋ってばっかだな。

 いや、思念通話だから喋ってはいないんだけど、それでもこんなに喋ったのは久しぶりな気がする。

 結構疲れる。

 魔石食いたい。あと寝たい。

 久々に動いて体力使ったしね。


 え、お前何もしてないだろって?

 はは、ちゃんと魔石砕いたじゃないですか。それに、宝箱だってちゃんと開けたし。

 仕事はしたよ?したんだよ?



 そして、一通り説明を終えた後、彼女に俺のダンジョン製作に協力してくれないかどうか訊ねた。


 だが、エリベルは俺の質問には答えず、さっきからずっとぶつぶつ独り言を言っている。


 「…………………あー……なんてこったい。てことは、そういう事かぁ~……あーなんで、私あん時、あんな事言っちゃったんだろう……あーちくしょう~……なんだよ、これ。なんなのよ、これぇ……ハハ、アハハハ……」


 さっきからずっとこの調子だ。

 話しかけても全然答えてくれない。

 テーブルの上で怪しく目を光らせながら落ち込む頭蓋骨。

 更に部屋の隅で落ち込む六本腕の巨人のおっさん。


 これ以上ないカオスな光景が俺の目の前に広がっている。


 「あ~あ~、ホント予定外だわ。さっさと死んで“不死化”するはずだったのに……。まさかこんなことになるなんてねぇ~……。ホント世の中って予想できないわ……。あーちくしょう。うあぁぁあああ~……、せっかく考えた私の計画がぁ~」


 ………ん?

 というかちょっとまて?

 今こいつ聞き捨てならない事を言ったぞ?


 『おい、お前なんつった?』


 そこでエリベルはようやく俺の方を向いた。


 「へ?なによ、人が凹んでる時に……あーもう、まさか二百年も経ってるなんて……。もうあの劇団とか、あの食堂とかも潰れてるわよね。それに、続きが気になってた本だってとっくに……。うぁ~“スライムとゴブリンの禁断の恋!脳みその様に溶け合う二人”の続きが読みたかったのに~!!」


 何そのタイトル!?


 「ぷぅ?」


 あ、ぷるる反応するんじゃない!

 ほら、魔石あげるから向こう行ってなさい。

 聞いちゃいけません!


 『いやいや、ちょっとまてよ!?おまっ、なにそれ!?さっさと不死化するつもりだった?何言ってんだ、お前?』


 エリベルの爆弾発言に、俺のみならずベルクも驚いた表情で目の前の頭蓋骨を見てる。


 「……え?ああ、何、その事?」


 ようやくエリベルは俺達と会話してくれるらしい。


 「言葉の通りよ。私死んだら、さっさと不死化して、世間の目を誤魔化してのんびりするつもりだったのよ!それに、この天才の私が不死化するんだから、絶対最上級のリッチークラスにはなると思ったしね……。不死になって長い時間かければ、絶対恋人の一人や二人出来ると思ったし………。はぁ~、それがまさかこんな事になるだなんて、ホント人生は分からないものね!ハハハ」


 けたけたと目の前の頭蓋骨は笑う。

 落ち込んだり笑ったりホント喜怒哀楽が激しいなこの骨。


 なんか頭痛くなって来た……。

 ベルクの言った意味が今ならわかる。

 確かにこの人は変人だ。


 それから、ようやく俺達とエリベルはまともな会話をした。

 ようやく落ち着いたらしい。

 とりあえずは先ほどとは別の話、俺の眷属や今のダンジョンについてもエリベルに話した。


 「ふーむ、ふーむ。なるほどねぇ……。私も結構色んな場所に行ったけど、地龍の生存個体を見るのは初めてだわ。へぇー本物は、こんななのね。イメージと全然違ったわ。ていうか、何よ、その魔力量……それにその色……。あんた、普通に化け物じゃない……」


 『いや、骨に化け物って言われたくないんだけど』


 「……そういう意味じゃないわよ。まあ、いいわ。ていうか、そっちのスライムも、まさかグラトニー・ヘル・スライムだなんて。うわぁー………すっげーレア。実在したのね。それにそっちの子も……。とんでもないわね、あんたの眷属。私が生きてたら、まっ裸になって叫んでた位に驚いたわよ。もし私に肉体が有ったら、子宮から好奇心が飛び出すところだったわ、子供の代わりに」


 ……俺はあんたのその発言の方がびっくりだよ。

 その残念な発言は。

 完全にセクハラじゃねーか。

 仮にも女だろアンタ。


 『しかし、なんつーか、随分予想外だったな』


 もっとこう、怒るというか、怒り狂うのを想像してたのに、彼女は終始穏やかだ。

 いや、最初はかなりテンパってたけど。

 どう見ても、あの記憶にあったイメージとは結びつかない。

 あれだけ世界の事を憎んでいたのに、なんでこんなにも明るくしていられるんだろう?


 そんな俺の疑問など意に介さず、エリベルは言った。


 「あ、そういえばダンジョン・アドバイザーの件まだ返事してなかったわね。うん、いいわよー、引き受けてあげるわ。もちろん報酬込みで」


 軽っ!

 良いの!?そんな簡単に引き受けて!?

 俺が言うのもなんだけど、俺地龍だよ?魔物だよ?

 いや、確かに提案したの俺だけどさ。

 何なの、この軽さ?


 「なっ!?エリベル様、宜しいのですか!?」


 口を挟んだのはベルクだ。

 あ、いじけモードから復活したか。


 まあ、ベルクが驚くのも無理はない。

 俺だって驚いてる。こんな簡単に引き受けてもらえるだなんて。

 なんせエリベルはこの世界を憎んでるんだしな。


 「んー、とりあえず先に誤解から解いとこうかしらね。まずさ、前提、間違ってるわよ」


 『前提?』


 「そう、そもそも私、別にこの世界嫌ってないし」


 「ハァッ!?」

 『は?』


 俺とベルクが綺麗にハモって疑問符を浮かべる。

 いや、嫌ってないってあなた……嘘だろ?


 「本当よ。いや、だってメッセージにもちゃんと、残してたでしょ?私の遺産が有意義に使われることを願うって。嫌ってたら、そんなこと言う訳ないじゃない」


 『いや、まあそりゃそうだけど………じゃあ、あの記憶は?あの台座喰った時に、あんたの負の感情が物凄い流れてきたぞ?』


 「へ、何よそれ?」


 はてなマークを浮かべる骸骨。

 俺は記憶送信で、エリベルに台座から得た記憶をフィードバックした。


 俺から記憶を受け取ったエリベルは再びカタカタと音を鳴らす。

 

 「…………ね、ねえ、この記憶………どっから持ってきたの?」


 だらだらと頭蓋骨なのに冷や汗をかきながらエリベルは言う。

 

 『台座喰った時に、最後に流れてきたけど?』


 「………どういう事、この映像、この記憶……何で、この黒歴史がここに……まさか……っ!」


 ん?んん?

 どないしたん?


 「………ベルクゥ、ちょっとあんたこっちに来なさい」


 すごくさわやかな声で、エリベルはベルクを呼ぶ。


 「は、はい!ただ今そちらへ!」


 呼ばれたことが嬉しかったのか、ベルクは嬉々としてエリベルの傍による。

 犬だったら絶対に尻尾を振っているだろう。


 そして、なにやらベルクの耳元でひそひそと話し始めた。

 何を話しているのだろう。小さくて聞き取れない。

 だが、会話が進むにつれて、徐々に徐々にベルクの顔色が青白くなってゆく。

 同時にエリベルから何やらどす黒い負のオーラが滲みだしてくる。

 どうしたのだろうか?

 しばらくしてベルクがエリベルから離れる。

 話は終わったようだ。


 ……気のせいかベルクの姿が先ほどよりも小さく見える。


 「ベルク」


 「…………はい」


 ベルクの声は今にも消えてしまいそうな程に小さかった。


 「あんた、後で死刑」


 「………………………………はい」


 どうやら話は付いたようだ。

 何だったんだ?

 くるりと、エリベルは俺の方を向く。

 会話を終えたベルクは、再び部屋の隅で丸くなった。

 気のせいか先ほどよりも三割増しで小さく見える。

 何があった?


 『な、なあ?何の話してたんだ?』


 「何でもないわ」

 

 『いや、でもさ………』


 「な・ん・で・も・な・い・わ」


 『………はい』


 凄い怖い。


 「さて、それじゃあ話を戻しましょう、地龍さん?」


 先ほどとは打って変わって爽やかな口調のエリベルさん。

 何なのホント?何があったの?


 「報酬やアドバイスの件は一旦置いときましょう。とりあえず、先に私に体を用意してもらう事ってできない?流石に、このままじゃ移動もままならないわ。あなたがずっと抱えたままって訳にもいかないでしょ?」


 確かにそれはそうだ。


 『体か……ゴーレムとかそういうのでいいのか?』


 「ええ、問題ないわ。用意してもらえれば、後は私が自分用に魔術回路や術式を組み込むから。あ、私の体の骨忘れないでね」


 『わかった』


 よし、それじゃあ久々に石像シリーズに挑戦してみるか。


 せっかくだから気合を入れて作ってみよう!


 俺はエリベルの頭蓋骨を持って深層へと向かった。


 ちなみにベルクはずっと部屋の隅で丸くなっていた。

 ねえ、マジで何があったの?





 ザ・ヒロインズ

 1蟻、2スライム、3骨、4ゴーレム(おっさん)


 わぁいハーレム、私ハーレム大好き。


 …………て、え?ハーレムなのか、これ?

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