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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
閑章 アンのダンジョン防衛記! その2

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1.パルディーのドキドキ☆悪夢のダンジョン探索記! その一

宰相の付き人パルディーちゃん視点のお話になります。

………なんか予想以上に長くなりそう。多分四話くらい。その後アンさん視点のお話になります


時系列的には第二章7話の地龍(馬鹿)の日記の十日と十一日目のお話になります

なのでまだぷるるはいないし、ウナ達も外に出ていません

 パルディー・レイブンは宰相エクレウスの秘書であり、そして元冒険者だ。

 今でこそ、宰相の付き人として、彼の事務を手伝ってはいるが、彼女の本来の任務は事務ではなく、かつての冒険者としての腕を生かした宰相の護衛役だった。

 

 そう、彼女は半年前まで冒険者だった。

 彼女はこの職業があまり好きではなかった。


 正直、冒険者稼業は辛いうえに、あまり儲からない仕事だ。

 その上いつ命を落としてもおかしくない。

 まともな人間であれば、まず、着くことはない職業だ。

 それでも、この職業が人気なのはやはり夢とロマンが詰まっているからだろう。

 一攫千金。

 それを狙うなら確かに、冒険者ほど適切な職業は無い。


 更に冒険者は出自を問わない。

 どんな者でも、どんな過去を持つ者でもつくことが出来る職業だ。

 それこそ、パルディーのような“後ろ暗い過去”を持つ者でも。


 幸いパルディーは腕に覚えもあり、Aランクまで上り詰め、それなりに安定した生活を送っていたが、町を歩いた時に見る、あの命のやり取りと無縁な町民の顔を見ると、やはりどこか羨ましいと思ってしまった。


 だからこそ、彼女がその腕を宰相に見初められ、この任に就いたとき、彼女は小躍りしそうなほど喜んだ。

安定した生活、戦闘のない日々、すべてが夢のようだった。

 

 なのに、だ。


 「なぜ私が、再び冒険者の仕事をしなけばいけないのですか……」


 苛立ち紛れに黒縁の眼鏡をいじる。

 そもそも、エルド荒野の調査など、そんなものは自分の管轄外ではないか。

 私は護衛役なんだぞ?

 離れたら意味ないじゃんか。


 そう思ったが、命令なので仕方なく彼女は、久々に冒険者としての服装に身を包んでいた。

 

 「懐かしいですね……」


 使い込まれた黒鋼鉄の胸当、素早さを増幅する補助魔法が掛けられたブーツ。緑の葉っぱの刺繍が施された黒いローブ。

 そして、腰に下げるのは冒険者の自分を支えてくれた愛剣。

 それは、現在ではまず使われることのない最高級素材“地龍の鱗”が使われた一品だった。

 何度この剣に命を救われたことか。

 感慨深く愛剣を眺めたのち、彼女は外に出た。


 

 外には四人の仲間たちが待っていた。

 かつてパーティーをん組んだこともある者達だ。

 ランクAの冒険者パーティー『銀の烏』。


 「久しぶりですね、皆さん。お元気そうで何よりです」


 「おいおい、頭は下げなくてもいいって。俺たちの仲じゃねーか」

 「そうそう、それでそれでパルディー、おーきゅー暮らしにはなれたー?何食べてるの?」

 「つーか相変わらず地味な衣装だな。お前そんなんじゃまだ彼氏出来てねーんだろ?」


 皆口々に彼女に話しかける。

 そこには気負った雰囲気は全くなかった。

 正直、彼女にはそれが有りがたかった。

 半年前、自分勝手にパーティーを抜けた自分を、彼らは再び受け入れてくれたのだ。


 ただ、最後のレンジャーの男にはきちんと蹴りを入れておいた。


 そして、リーダー格の男が手を叩く。


 「ほいほーい。再会いじりはそこまでにしよーぜ」


 そこでパルディーも彼の方を見る。

 短い金髪の二十代半ばの男だ。

 レイル・フェルスロー。

 『銀の烏』のリーダーだ。


 彼に会うのも半年ぶりだ。


 「レイル、お久しぶりです」


 「ああ、お前こそ久しぶりだな、パルディー」


 それだけだった。

 たが、二人にはそれ以上に言葉は必要なかった。

 それだけの信頼関係が二人にはあるのだ。

 それこそ、半年かそこらでは消えない程に。

 真っ直ぐにお互いを見つめる二人の頬はほのかに紅い。


 そして、それを囃し立てるのは冒険者の常だ。


 「ねぇねぇ、あの二人、久々に会ったっていうのに随分仲いいわねー」

 「ま、ヘタれ同士だったからな」

 「だから、未だに処女と童貞なんだろ」


 次の瞬間、レンジャーの男はボコボコになっていた。

 パルディーは真っ赤になってレンジャー風の男を蹴り続けた。

 レンジャーの男は死んだ。

 皆はそれを見て笑っていた。



 五人はギルドの集会所に移動した。


 「それで、パルディー、久々に俺らのところに来た理由を教えてくれないか?」


 ギルドの一階の丸テーブルに腰かけ、レイルが話を切り出す。

 ちなみにレンジャーの男はゴミ箱だ。

 慈悲は無い。


 「ええ、実はみんなに依頼したいことがあるの。いえ、正確には手伝ってほしい、かしらね」


 正直気が乗らないのだけどね、と彼女は呟く。


 「なにを?」


 「…………エルド荒野の調査」


 次の瞬間、『銀の烏』のメンバーは全員席を立った。


 「すまない、パルディー急用を思い出した」

 「ごめんねー、パルディー、私これから新魔術の特訓しなきゃいけないのよ~」

 「そういえば、注文に出していた防具が届くころだ。さて武器屋に行くとするか」

「さ、ナンパにでも行くか」

 

 『銀の烏』はギルドの入口へ向かう。


 だが、パルディーに回り込まれてしまった。


 残念、逃げられない。

 そして、レンジャーの男はいつの間にか復活していた。


 「待ちなさい!最後まで人の話を聞いてちょうだい!いえ、聞いてください!お願いします!」


 パルディーは必死な形相でレイルたちに縋った。

 その後、パルディーはみんなに事情を話した。


 「――――つまりだ、君が宰相エクレウス様から命じられた任務はエルド荒野に出現しているというキラーアントの調査だと?」


 「そうなるわ」


 ふぅー、とレイルはため息をつく。


 「どうして、調査隊を派遣しない?そもそも、エルド荒野ならば専門の監視隊が境界付近に配置されている筈だろう?なぜ、彼らに命じない?なぜ、わざわざ冒険者である俺たちに、それもギルドを通さず直接依頼をする?そもそも、そうまでして“あのエルド荒野”に行く理由は何だ?」


 レイルの疑問は最もだ。

 エルド荒野はエルド鉱山に隣接する超危険地帯だ。

 だが、鉱山の有用性から、国は鉱山に隣接する境界線付近に常に監視を付けている。

 もちろん、あのアクレト・クロウの被害を少しでも減らすためだ。


 「理由は三つあるわ。まず一つ目、本来であればこれは調査隊を派遣するほどの案件ではないから」


 そうだろうな、とレイルも頷く。

 キラーアントがどこへ巣を作ろうが、本来は別にどうでもいいことなのだ。

 所詮は最下級。

 町の近くにでも巣を作られれば、討伐対象にもなるだろうが、わざわざ魔境であるエルド荒野に作ったのだ。

 別に放っておいて問題ないだろう。

 せいぜい、アクレト・クロウの餌になるだけだ。


「次に二つ目、ギルドを通すよりも、私から直接あなた貴方たちに依頼した方が早いから」


 レイルは頷く。

 それも分かる。ギルドに発注してからでは多少なりともタイムラグが発生してしまう。

 早期に依頼を達成したいのなら、直接冒険者に交渉した方が早い。


 だが、次の三つ目は分からなかった。


 「そして、三つ目。これは………エクレウス様の“勘”よ。エクレウス様はこの報告を随分と気になされていた。だから、私に調査を依頼したの」


 「は、はぁ!?」


 流石にこれは『銀の烏』のメンバー全員が瞠目した。


 「勘って、お前……。そんな根拠のないもののために、あの場所に行くのか?」

 

  パルディーはテーブルに置いてあるハーブティーを口に含む。


 「ええ。正直、面倒くさいけどね。でもね、こういう時のエクレウス様の勘は本当によく当たるのよ。それこそあの人は、その直感で国の危機を何度も救ってきた程にね」


 私はそれをこの半年で何度も見たわ、とパルディーは呟く。

 パルディーは手に持っていたティーカップを置き、全員に頭を下げる。


 「だからお願い!協力して!無茶なお願いなのはわかってる。納得が出来ないのも、分かってる。それでも、私が信頼して、こんなこと頼めるのは貴方たちしかいないのよ……」


 本心からの言葉だった。

 パルディーは宰相の秘書と言っても、まだ王宮内では、その権力は無いに等しい。

 信頼できる人間など皆無だった。

 頼れるのは冒険者時代の顔見知りしかいなかったのだ。


 「………ベルディーさんは、どうした?彼女一人の方が俺達よりも、正直何十倍も戦力になる筈だ」


 「姉さんに連絡を付ける方法なんて無いわ。そもそも、どこにいるかも分からないのだし。唯一知ってそうなのは、ヴァレッドさん位なのでしょうけど、あの人も連絡はつかないし」


 「それで、俺たちにお鉢が回ってきたってわけか」


 レイルは渋い顔だ。

 他のメンバーも多かれ少なかれ同じような表情だ。

 

 断られるな。

 パルディーはそう思った。

 それはそうだ。

 こんな意味の分からない依頼、誰も受けるはずが――――


 「………わかった。引き受けよう」


 「えっ!?」


 その言葉にパルディーの目は大きく見開かれた。


 「おいおい、自分で頼んどいてそのリアクションは無いだろう?」


 「いや、だって、いいの?こんな怪しい、それもすごく危険な調査になるのよ?」


 「そりゃあ、分かってる。正直、エクレウス様の勘とやらも俺達は信じられない」


 「だったら――――」


 パルディーは思わず身を乗り出す。


 「でも、お前は信じる」


 「っ!?」

 

 息が詰まった。


 「俺達がどれだけ一緒にいたと思ってるんだ?その程度で揺らぐような信頼、最初っから有りはしねぇと一緒だ」


 レイルは右手を差し出す。


 「それに、またお前と一緒に冒険が出来るんだ。それだけで、俺達が任務を受ける理由としちゃ十分だぜ」


 にかっとレイルは笑う。

 その笑顔は本当に眩しかった。


 「レイル………」


 他のメンバーも同様に頷く。

 不覚にも、涙が出そうになった。

 自分が信頼されているというのが、本当にうれしかった。


 「つーかさ、今のレイルの発言て、普通に告白じゃねーの」

 「あ、言えてるー」

 「ふむ、要するにもう一度パルディーと一緒になれてうれしいと言う訳だな」

 「爆発しろよ、お前ら」


 テーブルが笑い声に包まれた。

 レイルとパルディーの二人は真っ赤な顔をして否定した。

 「違うんだ!そうじゃないんだ!」と。

 だが、聞き入れてくれるメンバーは一人もいなかった。


 こうして、パルディーは冒険者パーティー『銀の烏』と共にエルド荒野へと向かった。

 


 そこで、“ナニ”が待ち受けているのかを、その時の彼女たちはまだ知らなかった。







 アン・子蟻・ゴーレム「ざわ……ざわ……」




 地龍「…zzz………」



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