11.人の評価は本人にいないところで決まってる
ウナ視点のお話です。
あと2~3話はウナ視点のお話になる予定です。すいません。
ウナ視点
「はぁ~、せっかくお外に出たのは良いけど、岩ばっかりだねぇ~お姉ちゃん」
「トレス、文句を言うなら帰りなさい。私たちは任務で外界に出ているのです。遊びではないんですよ?」
全くこの子は文句ばかり言って。
いくら私たちの中で、一番最後に目覚めたといっても、お父様の子であるという自覚が足りないのではないでしょうか。
「わかってるよぅ。にしたって魔物すら一匹もいないってのはどうなの?記録によればでっかい飛龍とカラスがいる筈なんでしょー?」
「白飛龍とアクレト・クロウですよ、トレス。というか出会わないに越したことはないでしょう?二種とも王級の魔物なんですよ。出会えば逃げるしかないでしょう?」
「ん?戦わないの?」
「戦う訳ないでしょう!死にたいんですかアナタは!?」
「心配性だよね、お姉ちゃんは。でもさー、私たちだって普段“化け物なヤツ”と訓練してるじゃん」
「………それはまあ、否定しませんけど」
本当になんで、アンさんはあんなに強いのでしょうか?
アンさんにそのことを聞いたら、『意志の力です』と言っていましたが、私にはまだわかりません。
というか、ドスは先ほどから一言もしゃべっていませんね。
ひたすらに周囲を警戒しています。
………まじめなのは良いですが、姉弟なのですしもう少し、口をきいてくれてもいいと思うのですが、
「………姉さん、アレ」
ぼそりと、ドスは口を開きました。
わ!
びっくりしました。
というか、ドスの声、久々に聴きました。
「ど、どうしましたか、ドス?」
ドスは何も言いません。
ただ、岩山の一点を指さしています。
ん?アレは………?
「……あれは、まさかアクレト・クロウの巣ですか?」
「え?」
「……………(こくり)」
ドスが無言で頷きます。
トレスもドスの指差した方角を見ます。
不自然なほどにとがった岩の塔。その上にまるで三日月を掲げたように君臨する巨大な巣。周囲には割られた卵。
そして何より感じる圧倒的な魔力の奔流。
「………うわーぉ、こりゃすごいねー」
口調こそ軽いですが、トレスの頬からは冷や汗が出ています。
ドスも緊張した様子です。
私も感じただけで、冷や汗が出てしまいました。
これが王級のレベルですか。
確かにアンさんやぷるるさんに勝るとも劣らない強大なプレッシャーを感じます。
いえ、この感じる魔力はあの二人よりも………。
アンさんはよくあんなのと戦って、生き残れましたね……。
ボロボロになってはいましたが。
敬服するばかりです。
「二人とも、気づかれないように、移動しますよ」
「うん」
「………(こくこく)」
二人も素直に従います。
トレスなんて、怯えてさっきから私の裾をしきりに掴んできます。
あら、可愛いですね。
ちょと、意地悪したくなっちゃいます。
「………トレス、さっきと言ってることが真逆ですよ?というか、どうして、私の裾を掴んでいるんですか?………もしかして、怖い?」
「えーっと、その、世間知らずの戯言ってことでゆるしてよ、お姉ーちゃん。確かにこれは今の私たちじゃ、どーしよーも出来ないよ」
あら、素直。
びくびくと震えながら話すトレスは可愛いですね。
確かに今の私たちで、アレをどうにかできるとは思えませんね。
いえ、でもお父様ならあるいは………そう思えてしまいます。
お父様も正真正銘の化け物ですしね。
私たちはアクレト・クロウに気づかれないように、巣を迂回しながら北へ進みました。
それから一時間ほど、私たちは真っ直ぐ北に歩き続けました。
やはり、アンさんにマップを頂いて正解でしたね。
アンさんは私たちに着替え用の服を用意してくれた時に、記憶送信で私たちの頭に、エルド荒野のマップを転送してくれました。
どうやら、お父様には内緒で地形の把握に努めていたそうです。
流石ですね。
その際に、何故かお父様には内緒にしてくださいと頼まれました。
何か理由があるみたいでしたが、そこまでは教えてくれませんでしたが。
他ならぬアンさんの頼みですし、頷きましたが。
しかし、やはりアンさんは素晴らしい方です。
表層のダンジョンの改築も見事の一言でした。
まさか、あんな仕掛けを施していたとは。
すでに、その仕掛けによって侵入者を始末していたようです。
この服もその時の戦利品を加工して作られたとか。
ああ、確かあの薄汚いゴブリンどもでしたか。
自ら汚れ仕事を引き受けるアンさんの姿勢には感服しますね。
私もあんな風に誇り高くありたいです。
………蟻だけに、ふふ。
「ねー、この辺りで一旦休憩しよーよー?」
トレスが休憩を提案して起案した。
確かにだいぶ歩きましたね。
マップを見る限り、すでに境界線近くまでは来ているようです。
「そうですね。見晴らしもいいですし、ここで休みましょうか。ドス、あなたも―――」
ドスの方を見ます。
おや、ドスの表情は険しいですね?
まるで何かに警戒しているような。
「んー、ドス兄どーしたの?」
トレスが質問します。
「………………いる」
「へ?」
次の瞬間トレスは吹き飛ばされていました。
かろうじて、ドスが風の魔術を使ったのが見えました。
一体なぜ?
そう思った次の瞬間、さっきまでトレスがいた場所の地面が盛り上がりました。
「ギギャアアアアァァァァァァァァァアアアアア!!!!」
地面から飛び出してきたのはでっかいミミズでした。
ただ先端部分が、ぎざぎざの口になっています。
「………土蟲ですか。どうやら父上のダンジョンから“離れすぎた”ようですね。臆面もなく私達を襲ってくるとは!」
それも、一匹ではありません。
………いち………に………三匹ですか。
接近に気付かないとは、まだまだ未熟ですね。
いや、まあ、もともと感知はあんまり得意じゃないんですけど。
「お姉ちゃん、こいつどれくらい強いの?」
吹き飛ばされたトレスがいつの間にか傍にいます。
え?いつ移動したんですか、アナタ?
「………そうですね、この大きさならせいぜい中級下位といったところでしょうね」
感じる魔力から考えても、それくらいが妥当でしょう。
「ふーん、よし!やろ、お姉ちゃん!」
「えっ!?」
私は思わず驚いてしまいました。
「なに驚いてるの?向こうはやる気満々みたいだよ?」
確かに土蟲どもはしきりに威嚇音を鳴らし、こちらを見つめています。
「しかし、父上から可能な限り戦闘は避ける様にと言明されている筈です!」
「時と場合によりけりだよ、お姉ちゃん!何より、あいつらがここで私達を逃がすとは思えないしね!」
確かに土蟲の退化した目は確実に私達を標的にとらえています。
「……そうですね、それでは―――」
「あ、ドス兄はもう始めてるみたいだよ」
「え?」
見るとはすでにドスは、風の術式を土蟲に叩き込んでいました。
………あの子、無口ですけど私たちの誰よりも喧嘩っ早いですね。
ドスの両手に渦巻くのは風。
拳大に圧縮した大気の渦。
その姿はまるで小さい台風の様。
……あれ喰らったら痛いんですよね。
アンさんには通じませんでしたが。
拳を当てられた土蟲が体液をまき散らして爆散します。
あら、随分脆いですね。
聞いていたのとは大違いです。
「よーし、私も負けてらんないね!」
そう言ってトレスの周囲には九つの光の球体が現れました。
「偉大なる炎よすべてを燃やし尽くせ!」
中級魔法『豪火炎』
光球から放たれた炎の渦が真っ直ぐに土蟲に向かいます。
当然土蟲は避けようとします。
先ほどの仲間の死にざまを見たからでしょう。
どうやら今土に中に潜って攻撃をかわすみたいですね。
でも残念ですが、
「そんな事(回避)を、私が許すと思いますか?」
私は手を前に突き出します。
そして、空中にある手をぎゅっと握りしめます。
「ギャオオオオオ!?」
次の瞬間、土の中に潜ろうと体を丸めた土蟲が、強制的にエビ反りになります。
そして棒立ち状態の土蟲の体に『豪火炎』が直撃。
土蟲は悲鳴も上げずに燃えカスになりました。
ふむ、訓練の時よりも火力は上がっているようですね、感心です。
「さて残るは一匹ですか」
私はゆっくりと剣を抜きます。
どうやら残る一匹には、すでに戦意は無いようですね。
立て続けに仲間を失ったせいでしょう。
ただひたすらに体を丸めて怯えています。
ですが、容赦はしません。
向かってきたのはそちら側からなのですから。
殺しますね。
すぅ、と私は剣を横なぎに振ります。
そして次の瞬間、五メイルほど離れた場所にいる土蟲の体は真っ二つに切り裂かれました。
断末魔を上げることなく、土蟲は倒れます。
一回、二回、三回と剣を振るうごとに、土蟲の体は粉々に切り裂かれていきます。
これ位でいいでしょう。
確実に死んだようですしね。
「うわー、相変わらず、お姉ーちゃんの殺り方えぐいねー」
トレスが感心したように頷いていますが、心外ですね。
それにこの程度の技、アンさんは軽く躱しましたよ?
「お父様からもらった剣を汚したくはありませんからね。この方法がベストでしょう」
「うん、私だって、アンさんに貰った服を汚したくないもん」
「………」
ドスは一人だけ恥ずかしそうに俯いていました。
ああ、土蟲の体液で汚れていますね。
「ドス、こっちへいらっしゃい。浄化の魔術をかけてあげるから」
私たちはドスに浄化の魔術をかけてから、しばらく休憩を取りました。
しかし、土蟲とは随分脆い魔物ですね。
アンさんは、十分に警戒しなさいと言っていましたが。
『私なんて、最初は死にかけたんです。ですから油断しない方がいいですよ』
と言っていましたが、アレはおそらく私たちに油断と慢心を起こさせぬための方便だったのでしょう。
あのアンさんがあの程度の相手に、死にかけるなんてあり得ないですし。
……つくづくアンさんには、頭が上がりませんね。
それからさらに数時間後、私たちはエルド荒野を抜けました。
人間達の監視隊とやらに見つからぬよう、慎重に迂回するのは大変でしたが。
その後も、特に誰にも遭遇することなく歩き続け、
そして――――
「どうやら、あれが町と呼ばれるものみたいですね」
私たちは人間共が住まう、町を見つけました。
ダンジョン内にて
主人公「あいつら、つえーなー(ぽりぽり)」←魔石を食べながら
アン「………私なんて、土蟲相手に最初死に掛けたんですけど(ぼそっ)」
ぷるる「ぷー」




