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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
最終章 星脈の守護龍と地龍のダンジョン

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7.明かされる真実 (但し主人公は蚊帳の外) その1


 ミュルスの発言に呆然としたアンだったが、ハッとなって我に返る。


『ど、どういう事ですか!?ここがあの“星脈のダンジョン”!?』


 先程、ミュルスはここは魂のみが入れる場所だと言った。

 では星脈のダンジョンは、普通のダンジョンと違うのか?

 ギブルやクシャスラは、この場所を知っているのか?

 聖地にある星脈のダンジョンへの入口は?

 分からない事、理解出来ない事が雪だるま式に増えてゆく。


『落ち着いて下さい。順を追って話しますから』


 誰の所為だと思っているんだとアンは思ったが、ミュルスに宥められて幾分冷静さは戻った。

 それを見計らい、ミュルスは話を再開する。


『先ほどの発言は、少々正確ではありませんでしたね。正確に言えば、ここは星脈のダンジョン―――その“最奥”にある空間なのです』


『最奥……?』


『そうです。そもそもダンジョンとは、何かを守るために存在するもの。

 では―――“星脈のダンジョン”は、“何を”守っているのだと思いますか?』


『……』


 無言のアンに、ミュルスは大袈裟に両腕を広げる。


『それが、“この空間”なのです。―――より正確に言うならば、最初に“この空間”が作られ、此処を守る為に星脈のダンジョンが造られたのです。この星の“中核”として』


『この星の……中核……!?』


 ミュルスの言葉に、アンは何度目かになるか分からない驚きの声を上げる。


『アン、手を出して下さい』


『……?』


 ミュルスに言われ、アンは反射的に手を差し出す。

 手を握ると、ミュルスの温かな魔力がアンの魂に流れ込んできた。


『これは……何の真似ですか?』


『貴女を守る為ですよ。いくら私と繋がりが深いとはいえ、今の貴方では、まだ“アレ”を直視すれば、魂が潰れてしまいますから』


『アレ……?』


 一瞬、アンは先ほど現れた大量の額縁の事が頭に浮かんだが、どうやら違うらしい。

 アンの手をしっかりと握り、彼女は空いた手で何もない空間を指差す。


『見て下さい』


 アンはミュルスの指差す方向を見る。

 すると、そこには今までなかったものが現れていた。


『――――ッ!?な、なんですか、アレは……!?』


 アンの顔が、更なる驚愕に歪んだ。


 それは一言で言い表すならば―――巨大な龍のミイラだった。


 かつて帝都で見た死龍ウロヌスよりも、フォード沙漠で見た皇獣アジルよりもさらに巨大な龍。それが、カラカラに干からびた状態で宙に浮いているのだ。


『あんな巨大な物……一体、いつの間に……?』


『いつの間に?先ほどからずっと、“アレ”はあそこに浮かんでいましたよ?』


『え?ですが……』


 あんな巨大なものが浮かんでいれば嫌でも気付くはずだ。

 だがアンは気付かなかった。

 では、何らかの防御術式が掛けられていたのか?

 アンの疑問を感じ取ったのか、ミュルスは首を横に振った。


『いいえ、貴方の魂が、本能的にアレを視界に入れる事を拒んでいたのですよ。言ったでしょう?アレを見た瞬間に、貴女の魂が潰されてしまう、と。だからこそ、貴女の本能は、アレを視界に入れない様にその情報を遮断したのです』


 その説明に、アンは信じられないと呟く。

 

『一体、なんなのですか、アレは……?』

 

『アレはこの魂の世界に在って、唯一の“物体”なのです。この星の中核。……この星を造った、最初の龍。名は無く、我々はただ始祖の龍―――真龍と呼んでいます』


『真龍……』


 真なる龍。

 大仰な響きではあるが、成程、確かにあの亡骸から感じる魔力はこれまで出会ったどんな魔物よりも一線を画していた。


『アレがどこから来たのか、どうやって生まれたのか、それは分かりません。ですが、彼の龍はその絶大な力で、この星を造り、この世界を造り、そして命を、生命体を造りました』


 ミュルスのアンの手を握る力が強くなる。

 まるで何かに怯えているかのように。

 

『そして真龍は、星の成長がある程度の所まで来たとき、自らの機能を停止させ、肉体を分解し、この星と同化しました』


『同化……?』


『はい。力を使い果たしたのか、最初からそうするつもりだったのか……それは分かりません。ですが、真龍がこの星と同化した事により、この星は更に活性化し、地上には草木が溢れ、多種多様な生物が住まう命の楽園へとその姿を変えました』


『……』


『ですが、そこで終わりではなかったのです』


 ミュルスは宙に浮かぶ真龍の亡骸を見つめる。

 

『星と同化したはずの真龍の肉体は、長い長い……気の遠くなるほどの長い年月をかけ、少しずつ元の肉体へと戻っていきました。そして、彼の肉体は再生され、出現したのが此処、星の中心部分だったのです』


 ですが、と彼女は続ける。


『出現した真龍の肉体に“魂”は宿っておらず、あのように干からびたミイラのような状態でした。それでも、彼の龍の亡骸は死して尚、莫大な魔力を有して居たのです。直視した者の魂を削り取る程の莫大な魔力を。

 そして亡骸からこぼれ出た魔力は、大地を循環し、この星全土を更に活性化させました。生きとし生ける者全てに恩恵を与える星の力。やがて、その魔力の流れは―――聖なる力、“星脈”と呼ばれる様になります』


 “星脈”。

 その言葉に、アンの表情が険しくなった。


『これを見て下さい』


 アンとミュルスの目の前に再び額縁が出現する。

 そこには、可視化できるほどの大量の魔力が、地面から放出される映像が流れていた。


『これは?』


『見ての通り“魔力の渦”です。星脈は一定周期で溜まった魔力を、地上へと放出するのです。例えるなら、ガス抜きや放熱に近いでしょうか……。

 その魔力を浴びて地上では強力な個体が現れる様に成りました。今で言う災害級、厄災級と呼ばれる魔物たちですね』


 パチンと、ミュルスは再び指を鳴らす。

 映像が切り替わり、そこには地上を闊歩する巨大な獅子や、鹿、大鷲や蛇などの魔物が映し出された。


『これが地上で星脈の力を得た魔物たちです。いえ、魔物だけではありませんね。人も、植物もあらゆる生物が星脈の恩恵を受けていました』


 確かに映像を見れば、人や植物、魚なども存在していた。

 山脈に根を張る程の巨木に、泳ぐだけで大津波を引き起こす海蛇。

 そして強大な力を宿した人間は、民衆を総べ、同じように力を得た魔物達と争っていた。


『そして、力を得た彼らは、更なる力を得ようと模索します。すなわち魔力が放出された穴―――星脈へと、手を伸ばそうとしました』


 映像が切り替わり、穴に入ろうとする魔物や人間達の姿が映し出される。

 だが、次の瞬間、穴の奥から巨大なブレスが発射され、彼らを消滅させた。


『ッ……!?今のは……まさかブレス……!?』


 アンがミュルスの方を見ると、彼女は頷く。


『そう……星脈は―――真龍の亡骸は、魔力を外に放つ事はしても、外からの侵入は決して許しませんでした。中核たる真龍の亡骸は、魂は無く、意志も持たずとも、防衛機能が備わっていたのです。自らを守る様に入り組んだ迷宮と、そこを守護する魔物たちを生み出した』


 もう分かるでしょう?とミュルスは言う。


『ソレこそが、“星脈のダンジョン”。そして“星脈の眷属”なのです。星の中心、この場所を守る為に、我等は生み出されたのです』


 再び額縁が現れる。

 映し出されたのは一体の地龍だった。


『……これは?』

 

『星脈を、真龍を守るため生み出された最初の眷属です』


 その映像を、アンは見つめる。

 映し出された地龍。

 その姿は雄大で、美しく、彼女の主であるアースを想わせた。

 それ故に、彼女は違和感を感じた。


『これは地龍ですが……ギブル……ではない?別の、個体ですか?』


『気付きましたか?そう、この地龍はギブルではありません。“彼”は、真龍より生まれた“唯一の眷属”にして、最初の地龍。名を―――ゼパル、と言います』


『ゼパル……?』


 どこかで聞いた様な名前だ。

 いや、それ以前にアンはミュルスの言い方に引っかかりを感じる。


『“唯一の”とは、どういう意味ですか?』


『言葉通りですよ。星脈の―――真龍の本当の眷属と言えるのは、彼一体だけなのです』


 その言い方に、アンはますます表情を険しくする。


『いえ、それこそ矛盾しているでしょう?ダンジョンが魔物を生み出す。その理屈は分かります。規模の違いはありますが、真龍の亡骸を“迷宮核”に置き換えれば、確かに星脈のダンジョンが、“防衛機能”の一環として、星脈の眷属たる魔物を生み出したというのも理解出来ます。

 ですが、生み出した魔物が、彼一体だけ?貴女もギブルも星脈で生まれ、星脈を守護してきたと言ったではないですか?』


 地上からやって来たのでは?と一瞬思ったが、星脈のダンジョンは外部からの干渉を拒絶している。外から来た魔物、という線は無いだろう。

 ならば、どういう事だ?


『その通りですよ。私達は星脈で“生まれ”、そして星脈を守護してきた。それに間違いありません』


『だったら―――』


 そこで、アンはハッとなった。

 いや、待て。

 方法はある。

 ダンジョンが―――迷宮核が自ら魔物を生み出さずとも、手駒を増やす方法が。

 その方法を、アンは最も身近で“見てきた”ではないか。


『まさか……』




『そう、我々は“造られた”のですよ。最初の地龍、初代神災龍王ゼパルの“錬金”によって』




 ゴーレム・ホムンクルス。

 アンの主、アースが仲間を増やすために使った方法。

 その力によって、ウナや、ドス、トレス、ラセツが造られた。

 いや、彼ら人型だけではない。

 ゴンゾーを筆頭とする動物型や魔物型。

 様々な仲間たちが、その力によって造られた。

 

 命を生み出す禁断の力。


 それが、遥かな過去、星脈でも行われていたのだ。




その頃のアースさん

バァル「お、おいひいです!こ、こんな美味しいお菓子やジュース、ぼく初めて食

    べましゅた!アースしゃん、凄いです!」キラキラ←尊敬の眼差し

アース『はいはい、一杯あるからゆっくり食べな』

   (これでだいぶ震えも収まるだろ……。しかし、アレだな。なんか俺の居な

    いところでまた話が進んでいる様な気がする。……気のせいだよな!)


 長かったので分割します。

 次回はようやくアースさん(地龍の方)の出生やギブルさんの過去

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