21.龍王種ってホント碌なのがいない
―――弟?
今、レーナロイドは確かにそう言った。
弟……姉……姉弟。
誰が?誰の?
決まってる。
死龍ウロヌスが、神災龍王ギブルの、だ。
驚いた。
つまり、レーナロイドの言葉の通りだとすれば、死龍ウロヌスは俺の叔父に当たるという事になる。
見た目中学生くらいの叔父さんってどうなんだろう……。
いや、それよりもだ。
もっとおかしな点がある。
ギブルは地龍だ。
そして、俺も、地龍だ。
なのに、だ。
―――“死龍”の叔父がいるってどういう事だ?
姉弟って事は同じ龍から生まれたって事だよな。
地龍と死龍は同じ種族なのか?
それとも、“親”が違うのか?
じゃあ、その“親”って一体―――?
「そんなの初耳ね。てか、なんでそんな重要な事実を隠してたのよ?」
思考に耽る俺を現実に引き戻したのは、エリベルの声だった。
その声音に若干の棘を含ませて、彼女はレーナロイドを睨み付ける。
すると、レーナロイドは申し訳なさそうに、ぽりぽりと頬を掻いた。
「いやー、黙ってたのは謝るけどさ、実を言うと、私だってこの事を知ったのはつい最近だったんだよ。それこそ、この戦いの始まる数時間くらい前にね。“アイツ”が教えてくれたんだよ」
「アイツって、誰よ?」
「そりゃ、君たちもよく知ってるやつだよ。それはね―――」
エリベルがレーナロイドに問いただそうとした、次の瞬間だった。
―――閃光が瞬いた。
白い光は一直線に黒い祭壇へと走り、凄まじい大爆発を巻き起こした。
『なっ!?』
「えっ!?」
「んー?」
ズドォォオオン!!と凄まじい爆音が響く。
今のは……ブレスだ。
しかも、その魔力には覚えがある。
ぶるりと、体が震える。
そりゃそうだ。
だって、あれは、俺が初めてブレスを撃った時、俺にトラウマを植え込んだブレスと同じ魔力だからだ。
つまり、撃ったのは―――。
『ふむ、ようやく霧が晴れたな』
透き通る様な静かな威厳のある声。
そこに居たのは、白飛龍の長グウィブ。
通常の個体よりも、一回りほども大きな翼を広げ、俺達の頭上に影を造る。
『グウィブ!』
『おお、久しいな、アース。いや、直接顔を合わせるのは、もしやこれが初めてか?ほうほう、成程な、お主はそんな顔をしていたのか……。うん、中々に精悍な顔つきだ。ギブルの息子なだけはある』
いや、これ憑代なんだけどね。
まあ、本物と殆ど変わらないけど。
むしろ、本物よりも成長した状態なんだけど。
しかし、相変わらず凄い魔力だな。
ファーブニルと同等か、それ以上の圧を感じる。
グウィブはじっと俺達を見つめ、そしてふっと笑った。
『まさか、お主らも、死龍の復活に気付き、行動していたとはな。その上、よもや、我々に先んじてあの夢霧の結界を突破したとは。やれやれ、アンと言い、お主と言い、つくづく私の予想を覆す者達だな。実に喜ばしい。順調に、次の世代が育っている……』
あ、いや、別に死龍はあんまし関係ないんだけどな。
どう説明したら良いもんかと、グウィブを見たら、そこには、もう一体の龍がいた。
グウィブの頭の上、小さく、豆粒のようで見逃してしまいそうな程の大きさ。
だが、その矮小な姿からはあり得ない程の魔力を迸らせる圧倒的な存在感。
―――ギブルだ。
「アース……どうしてここに……?」
小さくかすれるような声だったのに、何故かはっきりと耳に届いた。
驚いた様な、心配しているような、そんな口調。
『いや、話せば長く……はならないか。とにかく、こっちにはこっちの事情があってさ』
「そうですか……ともかく、アース。貴方は今すぐこの場を去りなさい」
突き放すような、けど真剣みを帯びた声音だった。
その理由は直ぐにわかった。
「さもないと―――死にますよ」
ギブルが祭壇の方を見る。
それと同時に、寒気がした。
ギブルやグウィブとは全く違う“異質”な魔力の波動。
『―――っ!!??』
黒い祭壇を見る。
そこに居たのは、無傷のウロヌス。
更にその後ろには、へたれこんでいるリアスの姿も見える。
「………」
ウロヌスはぽんぽんと体についたほこりを払う。
ガラス細工の様な瞳が、グウィブを、そしてその上に居座るギブルを捉えた。
「あ」
ウロヌスの表情が変わる。
劇的に。
「……姉さん?アハッ、姉さんだ!ギブル姉さん、久しぶり!千年ぶりだー!」
口元が笑みに歪んだ。
頬に赤みがさす。
ガラス細工の様な目に光がさす。
「久しぶりですね、ウロヌス……」
「うん、姉さんも相変わらずだね。小っちゃい。すごく小っちゃい。でも、凄く大きい魔力だ!姉さん!姉さん!」
にっこりと笑うと、ウロヌスの背中からメキメキと何かが生えてきた。
それは黒い翼だ。
悪魔を連想させるような、漆黒の翼。
それが、三対。
「あ……」
ウロヌスの後ろに居たリアスが手を伸ばす。
まるで、何かに縋る様に。
だが、その手は何も掴まず、虚空を彷徨う。
そんなリアスには一瞥もくれず、ウロヌスは飛び立った。
翼をはためかせ、ギブル達に近づく。
「あ、そう言えばグウィブも、久しぶり。随分、老けた」
今気付いたと言わんばかりに、グウィブに挨拶をする。
「そりゃあ、千年も経てば、老けるに決まってるだろうに。だが、……お主は全く変わっていないのだな、ウロヌス」
「うん?変わったよ、背が伸びた」
「……変わっておらんだろ?」
「んーん」
そう言って、ウロヌスは自分の頭を擦る。
「三センチくらいかな。背が、伸びた」
そんなに成長してねぇ!
つーか、千年でそんきんだと誤差の範囲だろ!
「なるほど、確かにそうだな。訂正しよう」
「うん」
納得した!?
ギブルもそうだけど、グウィブも大概天然だよな。
「して、ウロヌスよ。お主に頼みたいことがあるのだが?」
「なに?」
「単刀直入に言う。もう一度、“封印”されてはくれないか?」
瞬間、グウィブの魔力が爆発的に膨れ上がった。
静かに、大気を揺らすような魔力の波動。
だが、それを受けてもウロヌスは表情一つ動かさない。
「やだ」
「なぜだ?」
「退屈だから」
にべもない口調。
明らかな拒絶の意志。
そして、ウロヌスは、
「あと、グウィブ……」
すぅっと、目を細めて、
「いつまで、“僕の”姉さんを頭にのせてんの?」
無造作に右手を、横に振った。
「―――ッ!!ウロヌスッッ!」
反応したのは、ギブルだった。
ギブルの魔力が爆発的に膨れ上がった。
彼女の腕が、一瞬で巨大化する。
そのまま、力任せに、腕を振り抜いた。
ガキィィィィイイイインッッ!!と、“何か”を弾いた音がした。
その直後だった。
ギブルとグウィブの背後の“山”が吹き飛んだのだ。
『~~~~~~~ッッ!?』
凄まじい爆風が巻き起こる。
遥か彼方で起こったはずの爆風は帝都を吞み込み、俺達まで届く。
な、なんだ今のは……?
魔力は感じたのに、攻撃が全く見えなかったぞ?
でも、あの感じって確か……。
「ウロヌス!何をするのですか!」
叫ぶように、ギブルは問い詰める。
激昂するギブルに対し、ウロヌスは冷ややかに言った。
「邪魔しないでよ、姉さん。そいつ、殺せない」
「なっ……!?」
「許せない、許せないんだよ。だって、姉さんを頭の上に乗せてるんだよ?そんなの、僕だって何回もしたことないのに、ズルいじゃないか。おかしいじゃないか。許せる筈が無い。うん、そうだよ。だから、殺すの。そいつはいらない。グウィブなんかいらない。姉さんは僕の頭に乗ればいい」
「な、何を……何を言ってるんですか、貴方は……?」
この発言には、さしものギブルもたじろいだ。
「姉さんを頭の上に乗せたい。だから、グウィブを殺すって言ってる」
「だから!それが、意味が分からないと、言っているんです!」
分からない事が分からない、とでもいう様にウロヌスは首をかしげる。
そして、「ああ」と頷いた。
「だって、姉さんは“僕の”だもん」
「………は?」
ガラス細工の様な瞳が、真っ直ぐにギブルを捉える。
そして、
「そうだよ、姉さんは僕のなんだ
「だって、僕は弟だもん
「姉さんの唯一の姉弟なんだもん
「当たり前じゃないか
「当然の事だよね
「弟なんだよ僕は
「だから姉さんは僕だけ見てれてばいいだ
「僕だけの姉さんなんだ
「誰にも渡さない、触れさせない
「触れさせてたまるものか……
「姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん
「ああ、大好きな僕の姉さん、
「この世の誰よりも美しい僕の姉さん
「この世の誰よりも強い僕の姉さん
「あの窮屈な迷宮の最奥で退屈にしていた姉さん
「一緒に外の世界を見ようと約束した姉さん
「ずっとずっとずっとずーっと封印されてる間、姉さんの事ばかり考えてきたんだ
「どうしたら姉さんが喜ぶか
「どうしたら姉さんに喜んでもらえるか
「ずーっと、ずーと考えてたんだ
「考え出したら止まらないんだよ
「姉さんの事ならいくらだって考えが湧き上がってくるんだ
「姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん、姉さん
「その想いだけで、千年の間封印されてたことなんてへっちゃらだった
「勿論、封印されてる間は退屈だったよ
「でも寂しくなんてなかったんだ
「だって姉さんとの思い出があれば、僕は何千年だって生きていくことが出来るんだから
「やっぱ、姉さんは凄いや
「妄想なんかと全然違う
「僕の“滅び”だって簡単に防いじゃうんだもん
「やっぱり姉さんは現実の、本物の姉さんが一番だ
「頭の中で思い描く姉さんも素敵だけど、やっぱり現実の姉さんには敵わないよね
「本当にきれいだ
「素敵だよ、素敵すぎるよ姉さん
「ああ、今すぐにでも姉さんとまぐわいたい
「姉さんに僕の雄を叩きつけたい
「僕の子を産んでもらいたいよ
「ああ、でも、そういうのはきちんと雰囲気が大事だよね
「ごめんごめん、つい気持ちが逸っちゃったよ
「でも、嘘じゃないよ
「本当に大好きなんだ
「姉さんが、好きで好きでたまらないんだ
「姉さん、姉さん、姉さん
「大好きだ、大好きだ、大好きだ
「愛してる、愛してる、愛してる、愛してる
「だから、だから、だから―――
ブツブツ、ブツブツと独り言の様にウロヌスは言葉を吐き出す。
やばい、憑代なのに鳥肌が立った。
そして、
「僕の姉さんに――――触るなああああああ!!」
メキッと音を立てて、ウロヌスの肉体が変化した。
手足は、黒く、鱗の生えた龍のそれに。
ズリュリと腰の付け根辺りから黒い竜の尻尾が生える。
それはさながらヴァレッドの“龍人形態”のような姿だ。
ゴバァッ!!!と、ウロヌスから莫大な魔力が放出された。
な、なんて魔力だ……っ。
身体が、震える。
この体はゴーレムだ。
でも、俺の元の身体よりも、魔力感知の性能が良い。
だから、分かる。
ウロヌスの魔力のあまりに馬鹿げた巨大さに。
余りに巨大で濃密で、周囲の景色すら歪んで見える程に。
勢いそのまま、ウロヌスはギブルとグウィブに突っ込んでゆく。
「ちっ、来るぞ、ギブル!」
「ええ、仕方ありませんね」
ギブルも魔力を放出する。
それに合わせて、ギブルの肉体も巨大化してゆく。
「でも、グウィブ……あの子はなんで、あんなに怒っているのでしょうか?」
「そんなの私が知るわけないだろう!よほど、お前を頭の上に乗せたかったのではないか?ともかく、こうなった以上、全力でヤツを封印するぞ!良いな!」
「仕方ありませんね……」
「グーウィーブウウウウウウウ!!僕の姉さんと親しげに喋るなああああああ!!殺す!絶対に殺してやる!滅ぼしてやる!」
ズドンッッ!と凄まじい音が鳴り響いた。
そのまま、三匹は戦闘に入った。
凄まじい魔力の波動を感じるのに、その衝撃や、破壊の余波は思ったほどではない。
おそらく、ギブルかグウィブが結界を張ったのだろう。
ギブルが主力で闘ってるところを見ると、結界を張っているのはグウィブの方かな。
でも、
『………』
神災龍王ギブルと、死龍ウロヌス。
龍王種と龍王種の激闘。
おそらく歴史に名を刻むであろう世紀の一瞬に立ち会っている筈なのに、そんな事よりも俺の頭の中を占めてることがあった。
ちらりと、エリベルとレーナロイドを見る。
うん、表情を見るに、二人も同じことを考えていたんだろう。
「ねえ、アース。私ちょっとウロヌスに関して思ったことがあるんだけど……」
『奇遇だな、俺もだ』
「私も、だね」
全員で頷き合う。
もしかしなくても、絶対そうだ。
みんな心の中で、思った事は一つだっただろう。
すなわち―――。
『「「アイツ、ただのシスコンじゃね(よね)(だね)」」』
そう、死龍ウロヌスは紛れもないシスコン野郎だ。
それも、かなりこじらせた感じの。
もしかして、ウロヌスが封印されたのってその辺りが原因ではないのだろうか?
おまけに、ギブルやグウィブはその辺気付いてないっぽいし。
つーか、あんだけシスコンこじらせてるのに、なんで気付かないんだよ……。
逆にすげーよ。
ホント、なんで、龍王種ってどいつもこいつも碌なのがいないんだろう……。
激闘を繰り広げる三体の龍種を見ながら、俺はそんな事を思った。
「さて、それじゃあ、往くわよアース」
『え?』
「え?じゃないわよ。せっかく、ギブルとグウィブがウロヌスを引きつけてくれてるんですもの。今のうちに、こっちはこっちで動くわよ」
そう言って、エリベルは未だ宙に浮かぶ黒い祭壇を見る。
おそらくは、まだそこに居るであろうリアス・アウローラを思い浮かべながら。
『……意外だな』
「なにがよ?」
『いや、てっきり、俺がギブルとウロヌスの戦いに気を取られてる隙に、一人で往っちゃうもんだと思ってたから』
「アンタねぇ……」
はぁーとエリベルは深い溜息をつく。
ガジガジと頭を掻いた。
そして、俺から視線を逸らさずに、言った。
「“頼れ”って言ったのは―――アンタでしょうが……」
そういって、コツンと俺の胸に手を添える。
「だから、きちんと最後まで付き合ってよね、アース。言質取ってるんだから。……責任、取りなさいよ」
そう言って、不敵に笑った。
『おう、勿論だ』
「ふふっ」
だから、俺も笑い返す。
やっぱ、こうでなくちゃな。
俺とエリベルの距離感は、やっぱこれ位の方が良い。
互いに遠慮し合って、どこか線を引いてるような距離感は、俺達には似合わない。
「あ、悪いけど、エリちゃん、私はここで待たせてもらうよ」
そう言って、レーナロイドはその場にへたり込んだ。
ぷはぁーと大きなため息をつく。
「さっきの結界で、私の魔力空になっちゃったんだよね……。リアスちゃんに、龍殺しに、雷斬りと連戦だったからさ。流石にもう限界」
「そう、だったら、巻き込まれない様に精々安全な場所に避難しなさい」
「ん」
レーナロイドの返答を予想していたのか、エリベルはそっけなくそう言った。
『おいおい、エリベル。流石にそっけなくないか?』
聞いた感じ、ソイツかなりお前に協力してくれたんだろ?
「別に良いのよ、私とソイツの距離感はこの位でいーの」
『そうか、礼ぐらい言ってもいいんじゃないか?』
「うっさい」
そう言って、魔術を発動させようとする。
だが、不意にその手が留まる。
ん?どうしたんだ?
「……」
「ん?どうしたんだい、エリちゃん」
「……ああ~もうっ!」
ガジガジと頭を掻きながら、振り返って、レーナロイドの方を見た。
「決着つけて来るわ。だから、少しの間待ってなさいよ、“レーナ”」
「―――っ」
そう言った瞬間、ぼう!っとレーナロイドの顔が茹蛸みたいに真っ赤に染まった。
そして、ふにゃあと頬が緩んだ。
「で、デレたー!ついに、エリちゃんがデレてくれたー!やったー!」
ばんざーいと叫ぶレーナロイド。
「で、デレてないわよ!名前で呼んだくらいで、何勘違いしてんの!」
そう言うエリベルも若干顔が赤い。
何コイツ素直じゃないなぁ。
つーか、照れるぐらいなら、言わなきゃいいのに。
「いーのいーの!私はちゃーんと分かってるから!うん!行っておいで、エリちゃん!えへへへ~やっぱエリちゃんはツンデレさんだなぁ~」
「分かってない!だから、違うつってんでしょーが!あーもうっ!ホント、調子狂うわ、あんたら二人はもうっ」
ガジガジと頭を掻くエリベル。
にししと笑いながら、レーナロイドは俺の方を見た。
だが、
「……あー、それとエリちゃんの主君だったね。悪いけど、頼むよ。言っとくけど、“わ・た・し”のエリちゃんに怪我でもさせたら、許さないからね」
俺と視線が合った瞬間、彼女は嘘みたいに真剣な表情になった。
『は?当たり前だろうが。エリベルは俺の眷属だぞ?そんなの当然に決まってんだろ』
眷属を助ける。
そんなの当然の事だろうが。
「…………」
だが、俺がそう言うと、なぜかレーナロイドは、ぽかんとした表情になった。
だが、直ぐにふっと笑った。
「……成程、天然さんだね。あのエリちゃんが懐くわけだよ」
『何の事だ?』
「別に、何でもないさ。だた、エリちゃん以外で、出会ってすぐに仲良くやれそうだなって思った奴は初めてだなって、思っただけだよ」
『……?』
首をかしげるが、何の事だか分からない。
ただレーナロイドだけが、何かに納得した様に頷いていた。
「ちょっと、アース何してんのよ!早く行くわよ」
おっと、いけない、いけない。
つい意識が逸れてしまった。
「ついでに一つ、忠告しておこうかな」
『ん?』
「君、なんか“変なの”が混じってるよ。その体や、上辺の精神状態の事じゃない。もっと根幹、君の魂の部分になにか混じってる。気を付けておくといい」
『ん……ああ?』
……何の事だ?
っと、今はそんなこと気にしてる場合じゃないか。
フライの魔術が発動する。
俺とエリベルは浮再び祭壇を目指して浮上した。
帝都上空黒い祭壇にて―――。
―――どうしてこうなったんだろう?
黒い祭壇で、一人残されたリアスはそう思った。
この千年間、リアスは死龍ウロヌスを復活させる為だけに生きてきた。
それもこれも、ただ一つの願い、彼に会う事だけを願って。
それ以外の事を考えず、自分を信じた全てを裏切って、それでもウロヌスに会いたい一心で、ここまでやって来た。
なのに、
『―――きみ、誰?』
そう言われた。
ウロヌスは覚えていなかった。
かつて、自分が救った少女の事など覚えてすらいなかったのだ。
「……私は……私はどうすれば良いのですか……」
誰にでもなく、そう呟く。
コツコツと、足音がした。
ゆっくりと、顔を上げる。
そこには、ローブで身を包んだ美しい女性がいた。
その後ろには、鎧で身を包んだ地龍の姿もある。
「……エリベル…お嬢様……」
エリベル・レーベンヘルツ。
二百年前、自分が気まぐれに魔術を教え、賢者と呼ばれるまでにその才能を開花させた不出の天才。
「………」
そんな彼女が何を思って、なんでそんな表情で自分を見ているのか?
もはや、抜け殻となった自分を相手に、何をしに来たというのか。
「……立ちなさい、リアス」
エリベルは近くに落ちていた自分の杖を投げてよこす。
ああ、そうか。
自分は杖を持ってすらいなかったのかと、ようやく気づいた。
杖を持って立ち上がると、エリベルも杖を構えた。
「決着を着けましょう。私達の二百年のすれ違いに」
第九章も、ようやく終わりが見えてきた
多分200話までには終わる筈……
長かったぁ……
しかし、ホントなんで龍王種って碌なのいないんだろ……?




