18.アースさん(仮)、起動する
なんだかんだで、今月8月10日(水)『地龍のダンジョン奮闘記!』一巻発売となります。
ドキドキしすぎて胃が痛い(´;ω;`)
『―――とりあえず、ぶっ飛ばすか』
俺は地面を蹴って跳躍した。
ヒュンッ!
風を切る音がする。
一瞬で、ピエロみたいな男に肉薄した。
「なっ―――!?」
ピエロの男が驚愕の表情を浮かべる。
どうした?
目で追うことが出来なかったのか?
まあ、そりゃそうか。
今の俺は全身武装化の状態だ。
かつて、この状態の俺は、災害級のファーブニルすら、圧倒したからな。
まぁ、最初だけだったけどね……。その後で肉体が自滅したから。
でも、今の“この身体”ならその心配はない。
武装化したスペックを十全に使える。
「ちっ、霧よ!」
男の目の前に黒い霧が集約する。
盾か。
でも、俺はそんなのお構いなしに爪を立てた。
ザシュゥゥゥゥゥウウウウウ………。
『―――ん?』
爪と霧が激突する。
……何だ、この感覚は……?
まるで手から力が抜けていくようだ。
『アース様、その霧は魔力を吸収します!』
アンからの思念通話が届いた。
ああ、成程、そういう事か。
見れば目の前の男は、冷や汗を浮かべながら笑っていた。
なんだ?
防げたことに安心したのか?
そっか、そっか、良かったなー。
俺は鎧の下でにっこり笑う。
――――じゃあ、もっと力を籠めてやるよ。
俺は全身に更に魔力を滾らせる。
ゴゥッ!と体から大量の魔力が溢れ出す。
大気が震える。
大地が震動する。
力が、漲る。
「……ふへ?」
男が間抜けな声を上げる。
『オラァッッ!!!』
次の瞬間、俺の爪は男の霧を易々と切り裂いた。
「―――っ!?なっ!?」
目の前の男は信じられないような声を上げる。
なんだよ?
何を驚いてるんだ?
お前の霧は魔力を吸収するんだろ?
だったら、“吸収限界”が存在するはずだ。
そして、武装化した肉体は、魔力を込めれば込めるほど加速度的に性能を増す。
いま俺の爪には、さっきの十倍ぐらい魔力を込めた。
どうやらそれでこの霧の“吸収限界”を超えた様だな。
しかし、やっぱすごいなこの体は。
いくら魔力をみなぎらせても、全く体が悲鳴を上げない。
『オラアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
勢いそのまま、俺はそいつを殴りつける。
道化の男はその衝撃をまともに受けて地面に叩きつけられた。
おー弾む、弾む。
霧の魔物でも、毬みてーに弾んでら。
「あっ……が……」
うめき声が聞こえる。
ちっ、生きてたか。
結構力いっぱい殴ったんだけど。
まあ、いいか。
この位じゃ、俺の鬱憤は晴れんよ。
そのまま、俺は重力に従って着地。
そのまま、ピエロの向かって特攻する。
全身を使っての体当たりだ。
悲鳴を上げて、ピエロの男は再び吹き飛ばされた、
それを追撃。
『ガアアアアアアアアアア!!』
殴る、殴る、殴る。
蹴る、蹴る、蹴る。
尻尾で叩きつける。
「あ……が……」
さっきから霧で必死に防御しようとしてるが、無駄なあがきだ。
おっと、このままだと町の方の被害がデカくなるか。
………ま、どうでもいいか。
ぶっちゃけ、今の俺にとっちゃ人間達にどれだけ被害が出ようが、どうでもいいとすら思えてる。
それにちゃんと、アンやウナやドス、それにアイツには被害がいかない様に計算済みだ。
眷属にさえ被害が出なければ、問題ない。
と言う訳で、再びこいつを殴りつける。
「ぐあああああああっ!」
ノーバウンドで五十メートル以上跳んでった。
さて、次は―――。
『アース様!』
次はどうしようかと悩んでいると、アンが駆け寄って来た。
その姿を見る。
そう言えば、どうしたの、その姿?
なんかレイギンの鎧に似てるけど……。
『ア、アース様、どうしてここへ?いえ、というかその御姿は一体……?』
まじまじと俺の姿を見るアン。
どうやら“今の俺”の違和感を感じ取ったらしい。
流石だな。
普段の俺をよく見てる。
ま、説明すると長くなるからな、記憶送信でアンに今の俺について説明しておく。
すると、アンは驚いた表情を浮かべた。
『そ、それは本当なのですか、アース様?』
『ああ、だから安心してくれ。ついでにアイツの情報もくれないか?』
『あ、畏まりました』
アンからピエロの男についての情報が送られてくる。
ふぅん……成程ね。
「ハァ…ハァ…」
瓦礫の中から、ジョーカーが出てくる。
見るからにボロボロだ。
霧の魔物、神災の獣ねぇ……。
正直、そんな大した奴には見えないけどな。
どっちかと言えば、部活でパシリにされる後輩って感じだろ、コイツ。
普段の俺と同じ、力に振り回されてる小物って感じがする。
ま、別に関係ないか。
「な、なんッスか、お前は……っ?」
ジョーカーが問いかけてきた。
その声は若干震えていた。
……なに、ビビってんだよ?
先に手を出したのは、そっちだろうが?
だったら――――どんなに、反撃されても、文句はないだろう?
俺は再び全身に魔力を滾らせた。
ああ、やっぱりすごいなこの体は。
今なら、何でも出来そうだ。
そして、俺はすぅっと深く息を吸い込んだ―――。
ジョーカーは震えていた。
心底、恐怖していた。
それ程までに彼が感じた魔力の量と質は桁違いのモノだったのだ。
先ほどまでの決死の覚悟も、命を賭けると言った誓いも、全てを踏みにじる程の圧倒的な魔力の奔流。
(な……ななななんなんッスかこのとんでもない魔力量は……?天龍ヤムゥ……いや、ヘタしたらあの神災龍王に匹敵する程の……)
前代未聞の経験だ。
神災の魔物である自分が震えるほどの魔力。
一体この龍は何者だ?
ゴツゴツとした無機質な黒い鎧に覆われた龍。
見た目からして鉱龍……いや、全身を武装化した地龍……か?
でもギブルの筈はない。
彼女は結界の外だ。
そこまで考えて、彼は思い出した。
―――かの神災龍王には、息子がいたという事を。
まさか、コイツがその息子か?
実際に目にしたことは無いが、情報は持っている。
確か、アースとか言う名前だった筈だ。
曰く、生まれて一年で、“龍殺し”ヴァレッド・ノアードと引き分けたと。
曰く、わずか数年で、東西南北の四つからなる巨大なダンジョンを作り上げたと。
曰く、アクレト・クロウや白飛龍と協定を結び、その戦力は大陸でも屈指のモノとなったと。
いくらあの化け物龍の子とはいえ、どれもこれも、にわかには信じがたい情報だった。
だが、それは正しかったのだと、ジョーカーは確信した。
これ程の膨大な魔力の持ち主であれば、そのような無茶、力で押し通すくらい訳ないだろうと。
ぞわりと、怖気が走った。
先ほどより何倍も濃密に感じる死の気配。
―――来る。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!』
そして―――閃光が瞬いた。
ブレスだ。
「―――っ!マズイ!マズイマズイマズイマズイ」
―――死ぬ。
咄嗟に、ジョーカーは残り少ない魔力、そして魂を消費した術式を発動する。
閃光が煌いた。
巨大な爆音と、圧倒的な破壊が周囲を覆い尽くした。
一方、アースのダンジョン深層、その更に奥にて―――。
「あーあー、ここでお留守番かー」
「ぷるぅー」
トレスとぷるるは腰かけながら、退屈そうにつぶやく。
そして、おもむろに自分の下に鎮座しているモノに手を這わせた。
「私も、お父ーさんと一緒に行きたかったなー」
「ぷー、ぷるーぷー」
「え?ここでお父ーさんの“本体”を見守るのも立派な役割だって?んーそうなんだけど、やっぱ退屈だよー」
そう言いながら、トレスはゴロゴロと、“アース”の背中を転がる。
そう、彼女は今、アースの背中の上に居るのだ。
「でも、凄かったよね、お父ーさんの作ってたゴーレム」
「ぷるぅ」
ぷるるも体を揺らして頷く。
「だって、お父ーさんと全く同じ姿なんだもんねー」
トレスは先ほどまで、この部屋に鎮座していたモノの姿を思い浮かべる。
それは地龍の姿をしたゴーレムだった。
いや、正確に言うならば、父であるアースよりも巨体の地龍だ。
おそらく地龍の“成体”をイメージして作り上げたのだろう。
だが、実際には素材の関係で、成体には程遠く、アースよりも二回りほどの大きさにとどまったようだ。
またゴーレムは憑代ゴーレムと同じ造りになっていたらしく、アースの意識と魔力を移して起動するらしい。
その時の事を思い出して、トレスは寒気がした。
「ホント……凄かったし、怖かったよねー」
「ぷるぅ……」
ぎゅっと、トレスはぷるるを抱きしめる。
その体は若干震えていた。
「だって、あのゴーレムに乗り移った瞬間のお父ーさん……ギブルより怖かったもん」
その言葉に答える事は無く、ダンジョンの主の本体は静かに眠り続けていた。
だが、その体からは絶えず大量の魔力が憑代へと送られていた。
それはまだまだ尽きる様子を見せなかった。
帝都ファーブニル天蓋跡地にて―――。
「ハァ……ハァ…」
もはや立っている事すら不思議な程にジョーカーはボロボロになっていた。
周囲は瓦礫の山。
だが、想像してたよりも破壊は少ない。
おそらくそう言う風にブレスを調節したのだろう。
『お、まだ生きてたか』
声がした。
恐怖の権化が、煙の中から姿を現した。
「あ……あぁ……ああ……」
ジョーカーは震えた。
心の底から恐怖した。
『さてと、それじゃあ教えて貰おうか?なんで俺のダンジョンに侵入した?目的は?奪った魔力はどうした?この結界はどうやったら解ける?』
その声音は穏やかではあったが、有無を言わさぬ迫力と威圧を持ってジョーカーに響いた。
ああ、今すぐ何もかも話して楽になりたい。
このお方の頭を垂れ、服従してしまいたい。
そう思わせるほどの圧倒的な力。
「そ……それは……その……」
もごもごとジョーカーは口を開く。
楽になりたい。
屈伏してしまいたい。
でも、
―――頼みましたよ、ジョーカー。
「―――」
その笑顔が、リフレインされる。
たった一人。
自分に名前をくれた、大切な彼女の笑顔が。
「……そうッスね。すいません、リアス……最後まで……お供出来ずに……」
『ん?』
そして、ジョーカーは。
深い深呼吸と共に、アースを見た。
その顔には決意が満ちていた。
―――これが、自分の最後の仕事だ。
「……悪いけど、答える事は何もないッスよ」
胸に手を添える。
残った魔力、そして魂。
その全てを、一か所に集約させる。
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!!!
黒い霧が一か所に集約する。
『―――っ!お前、まさか……』
「リアスの願いは……誰にも邪魔させない!」
その表情を、ジョーカーの覚悟をアースは感じ取ったのだろう。
「さあ、自分と共に死ぬがいいッス、地龍!」
ジョーカーに残された最後の手段。
全身全霊を霧と化した自爆特攻術式。
―――“極破滅の黒霧”。
それは使えば自らの命すら消滅させる、ジョーカーの正真正銘最後の術式。
それを彼は、ためらいなく、笑いながら発動させた。
『アース様!』
「ちぃっ!」
アンが叫ぶ。
ベルディーが槍を構える。
だが、間に合わない。
アースとジョーカーの居た場所を中心に、黒い霧が覆い尽くした。
ズドドドドドドドドドドドドドッッ!!
破壊と激痛、そして死が、ジョーカーを襲った。
だが、その顔は安らかだった。
死は別に恐ろしくない。
例え自分が死んでも、十分くらいは結界は維持される。
死龍の復活には十分な時間。
それに、寂しくはない。
自分は一人じゃない。
ずっとずっと自分はリアスと共に歩んできた。
その思い出がある。
彼女の思い出として、僕は彼女の中に残り続ける。
―――さようなら、リアス……大好きだったッス。
出来れば、最後まで一緒に居たかったけど……。
そしてジョーカーは―――神災に名を連ねる魔物は、その体を四散させた。
そして―――。
ぴくりと、黒の祭壇でリアスは直ぐにその異変に気付いた。
帝都を覆う結界の強度が上がっているのだ。
それが示す事。
すなわち―――
「そうですか……。あの子は……ジョーカーは死にましたか……」
リアスは即座に理解した。
最後まで自分の身を案じて、自爆を行った事も。
自分の死後、時間を稼げるよう少しでも長く結界を維持できるよう、術式を組んだことも。
最後の最後まで献身的に自分に尽くし、死んでいった。
その最後を思い、リアスはふっと笑った。
「……全く、最後まで使えない子でしたね……」
その笑みに含まれていたのは、落胆と失望だった。
霧の結界は、確かに強度が上がった。
大量の魔力も自分の下に集まっている。
だが、制限時間が設けられた。
時間的にはギリギリ間に合うかどうかと言ったところか。
全く、面倒な足かせをつけてくれたものだ。
「せっかく今日と言う日の為に、育ててきたというのに……」
名を与え、長い長い時間をかけて自分依存する様に仕向けたというのに。
せっかく神災の魔物を従えたと思ったのに。
最後の最後で使えない男だ。
「まあ、別にいいですけどね」
所詮は使い捨ての道具だ。
リアスは一瞬だけ、死んだその“誰か”の事を思い、すぐさま気持ちを切り替える。
制限時間が設けられたのだ。
とにかく意識を集中させなくてはいけない。
「術式も大詰めですね。もう少しで召喚術式が起動する。ああ、会いたい。早く会いたいわ、ウロヌス……」
リアスは恍惚とした表情を浮かべながら、これから現れるであろうその龍に思いを馳せる。
彼女の足元に巨大な魔術陣が浮かび上がる頃には、とっくに死んだ“誰か”の事は頭から消え去っていた。
ジョーカーの霧が晴れる。
そこには凄まじい破壊の傷跡が走っていた。
生きてる者は一人としていない。
ただ一人を除いて……。
『ちっ、勝ち逃げされたな……』
朦朦と立ち込める煙の中から、アースは現れた。
無論、無傷ではない。
武装化した表皮の至る所が傷つき、ひび割れている。
『……誰かの為に、笑って死ねる、か。……理解できねぇよ』
アイツは死ぬ瞬間まで笑っていた。
それで誰かの役に立てることが、心底嬉しいと言わんばかりに。
それは、アースにとって唾棄すべき、理解できない感覚だ。
『誰かと一緒に笑いたいなら、生きて何ぼだろうが、馬鹿野郎……』
そう、ぽつりと呟いた。
会って数分の、それもダンジョンに侵入してきた敵に対し、アースが抱いたのは、そんなどこかやるせない感情だった。
『まあ……今は、いいか。さて、次だな―――』
まだ、やるべき事は山の様に残っている。
アースは即座に魔力感知を発動させた。
―――居た。
そいつの魔力は直ぐに見つかった。
俺はすぐさま地面を蹴って、そちらへ向かった。
そして、ジョーカーが四散した瞬間、舌打ちした者がここにもいた。
「……やっぱ、今の魔力は!あんの馬鹿ッ!普段は引き籠ってるくせに、何でこんな時だけ、外に出て来てんのよっ!」
エリベルだ。
ゆらゆらと眼窩の炎を揺らしながら、ガシガシと頭を掻く。
あのバカだけでない、アンもそうだ。
どうしてあいつらはこう自分の予想を悉く覆して行動するのか。
「エリベル様、今は……」
「―――っ。分かってるわよ」
アースやアンの動向は気になるが、今は先にすべきことがある。
早く、リアスの元へ向かわなければいけない。
現在二人は帝城の中庭を潜り抜けていた。
あちこちに城の騎士と思われる連中が倒れている。
ジョーカーの霧によって、城に居る者も殆どが魔力を吸われ気絶している様だ。
「はっはー!ようやく、ご到着か!」
馬鹿でかい声が聞こえた。
中庭を抜けた帝城の屋上。
そこには熊のように大きな男が居た。
巨大な斧と大盾を持って、こちらを見下ろしている。
「『夜叉』ラウ・ランファン……っ!」
エリベルは内心舌打ちする。
レーナロイドからこいつに関する情報は受け取っている。
それによれば、コイツは過去に災害指定種を仕留めたことがあるという。
非常に厄介な相手だ。
それにどうやら、相手はやる気満々。
「エリベル様。ここは私が」
そう言って、ベルクが一歩前に出る。
にやりと、ラウ・ランファンが凶悪な笑みを浮かべた。
「お、テメェが相手になってくれるのか?」
ベルクが一歩前に出る。
「……悪いわねベルク、ココは任せたわ」
「お任せください。では、力の解放を―――」
そう言うと、ベルクの体がボコボコボコボコと膨れ上がる。
その姿はかつて、トレスやぷるると戦った十メートルはあろうかという巨人の姿。
ベルクの真の戦闘形態。
龍の大軍すら屠る、エリベルの眷属筆頭としての真の姿。
紅く爛々と光る瞳がラウ・ランファンを睨み付ける。
「ガハハハハ、すげぇな!堪らねぇな!こんな化け物にゃ今までお目にかかった事ねぇ!やっぱ、こっちについて正解だったな!」
心底楽しそうに、ラウ・ランファンは笑う。
それは戦闘狂の笑みだ。
強者と戦うのが楽しくて楽しくて仕方が無い者の表情。
それをベルクは不快気に見つめる。
「なるほど、お主がリアス殿についているのはそう言う理由か?」
「ああ。アオバやリアスと居りゃあ、強ぇヤツといくらでも戦えるからな。おまけに死龍が復活すれば、今よりもっとトンデモねぇ世界になるって話じゃねぇか?だったら、乗らなきゃ損だろうが!」
それが、ラウ・ランファンが戦う理由。
強者を、戦いを求める為に、彼はリアスと手を組んだ。
心底くだらない。
ベルクは、目の前の男をそう思った。
二百年前の魔族と人族が戦争していた時にも、こういう輩は居た。
こういう輩は善悪で物事を判断していない。
ただ強さのみを、戦いのみを求める獣だ。
ならば、遠慮はいらない。
全力で駆逐させてもらう。
互いの視線が交錯する。
「往くぞ!」
「ああ、来やがれ!」
ラウ・ランファンが屋上から飛び降りながら斧を振り下ろす。
ベルクが地面を蹴り、その拳をラウ・ランファンへと放つ。
そして、両者がぶつかり合おうとした―――その瞬間だった。
『―――アンタら早く避けてくれええええええええええ!』
「は?」
「へ?」
突如、声がした。
次いで、凄まじい衝撃が二人を襲った。
ズドン!と。
横から飛んできた正体不明の巨体が二人に衝突した。
「ぶほぁっ!」
「がはっ!?」
二人はそのまま近くの外壁までぶっ飛んでゆく。
「な……なにが……がはっ」
「え……?ま、まさか……アー……ス……ガクッ」
二人ともそのまま気絶した。
というか、ベルクに至っては完全に巻き込まれる形である。
あんまりと言えば、あんまりな扱いだ。
二人に衝突したそれは、そのまま重力に従い、エリベルの目の前に着地する。
『―――ふぅー思いっきり飛んだのは良いけど、止まる方法考えてなかったな。まあ、何とかなったからいいか』
エリベルの頭に、酷く聞き慣れた声が響いた。
ふぅーと深い溜息をつく。
「……随分早いご到着ね。もう少しかかると思ってたんだけど……」
まじまじと現れたソイツを見て、エリベルは苦々しそうに眼窩の炎を揺らした。
限界以上に強化された憑代の脚力は、あっさりとエリベルに追いついたのだ。
『よう、久々ってほどでもないけど……ようやく会えたな』
彼は真っ直ぐにエリベルを見つめ、
『それじゃあ、話をしようか、エリベル』
ちょっと怒気を含めて、アースはそう言った。
そして、次回はアースさんのSEKKYOU。……出来るのか?
ちょっとした補足
地龍型ゴーレムについて
アースの脱皮した皮や鱗、更に血と大量の魔石を混ぜ込んで作られた超高性能ゴーレム。
以前から、アースが懸念していた魔力に対して肉体が貧弱すぎるという弱点を補うために開発された。
その性能は凄まじく、全身武装化も難なく使いこなし、アースの無駄に多い魔力を十二分に発揮できる造りとなっている。また、本来のアースにはない“隠し玉”も搭載されている。
意識を移す必要があるので、この憑代を使ってる間は本体は完全無防備状態。つまり、電池役。
ちなみに、アースがこれを使うのを渋っていた理由は、「あれ?これ使うと俺、本格的に要らない子扱いされるんじゃね?」と無駄なプライドが邪魔していたから。ちなみに、同じ理由でゴーレム・ホムンクルス型は作っていない。
まさに引き籠りが引き籠りのまま、安全に外に出るための最終兵器である。
つーかこんなの主人公が使っていい手段じゃない。
ちなみに憑代状態なので、アースさん(仮)




