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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第一章 地龍になりまして

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18.誰が為に知識はある

 『あーもう、メイクもしてないし、衣装だって寝巻のままだし……ちょっとベルク!今からでもやり直しきかないわけっ!?ちょっ、何笑ってんのよ!?ぶっ殺されたいの!?あんた眷属のくせに生意気なのよ!』


 何やら俺ではなく、まあこれ録画みたいだし当たり前だけど、カメラを回している奴に延々文句を言っている。

 なんだこれ?

 俺は何を見てるわけ?


 ていうか、こんなのがこの遺跡の中央に置かれてるってどうなの?

 あと、その服寝巻かよ!かっこいいな!



 やがて、観念したかのようにホログラムの美女は頭をガシガシ掻きながら、


 『あー、チクショー、めんどーねぇ。まあ、いいか。えっとこれ見てる人。多分これ見てるってことは私が死んだあとの世界だと思うから。つまり私はメイクとか、別に気にしなくていいわけオーケー?』


 と実に面倒臭そうに言った。

 知らんがな。


 『つーわけでだ。これを見てるやつに言っとくわ。

 もうすぐ私は死ぬの。いろいろ事情があってさ、死ななきゃならんことになったわけよ。面倒くさいけどね。

 でもさ、せっかくだし私は自分が作った魔術や秘術、研究成果を形として残しておきたいのよ。

 どのような形であれ、ね。

 これを見てるってことは周りの石版や壁画も見ている筈でしょう?あれが、私が今まで調べてきた研究資料と情報よ。彫るのに苦労したわよ。

 まあ、ほとんどはベルクが彫ったんだけどね、ははは。

 あ、おいおいむくれないでよ。褒めてんだからさー』


 あのー、ちょいちょい撮影の人と会話挟むのやめてもらえますかね?


 『ホントは紙で残したかったんだけど、紙の寿命なんてたかが知れてるしね。

 この映像を見る者が何百年先まで現れないとも限らないし、石版の形で残すことにしたわ。一応は公共語のファウード語で記してあるから文字読めるやつならわかるでしょ?まあ数百年経ってんなら、古代語の辞書でも開いて頑張って解読してくれないかしら、ははは。

 んでね、一応説明しておくと、この石版には魔術・魔具・魔物・勇者と魔王、そして迷宮。これらに関することを記してあるわ。

 これらに関する情報が、それも“この私の”残した情報がどれだけの価値を持つか、ここまで来たやつならわかるでしょう?』


 ふふん、とドヤ顔をする女性。

 激しくウザい。

 多分これを撮影している奴も同じ気持ちだと俺は信じたい。


 『そーか、そうか。うんうん。理解してくれたか』


 すいませんさっぱりわかりません。

 俺は心の中で突っ込みを入れる。


 『ああ、そういえば自己紹介がまだだったわね。まあ、この私が作った“ダンジョン”を突破してきたんだし、私の名前くらいは知ってるかと思うけどね』


 はい?迷宮?

 そんなん突破してませんけど?

 土掘ってたら偶然見つけただけだけど。


 『私の名前はエリベル・レーベンヘルツ。四大属性全てを霊王級まで極めた人族史上唯一の魔術師よ、魔王と勇者を除けば、だけど。一応は【賢者】エリベルの方が、名が通ってるかな?私って有名人だしね、後世まで名前が残ってる筈よ、間違いなく』

 

 そういって彼女はドヤ顔をした。

 知らんがな。

 しかしこの女、ちょくちょくはさむこの「どうよ?」みたいな表情が絶妙にむかつくな。

 殴りたくなる。


 しかし賢者、か。

 なるほど、基本となる四大属性全てを、それも霊王級まで扱えるなら、そう呼ばれていても不思議ではない。記録によれば法王級クラスで賢者って呼ばれてた気がするけど。


 ただまあ、そこはかとなく漂う残念臭がそれを全部台無しにしているな。


 『まあ、私さ賢者なんて呼ばれてるけどね、私のしてきたことは碌でもないことばかりだったわけよ』


 そこで声のトーンが変わる。

 それまでの軽い雰囲気が一瞬にして変わる。


 『戦争、戦争、戦争。何十年にも渡って続いた人族と魔族の戦争。私が研究してきた魔術や魔具に関する知識や技術は、ぜーんぶ、全て人殺しや魔族殺しの道具に使われるばっかりだったよ。   

 まあ時代が時代だから仕方がないとは思うけどね。

 それでも私は魔術ってのは本来争いの道具ではなく、助け合い生活を豊かにするためにあるもんだと、人も魔族も笑顔にするためにあるもんだと思ってる。

 魔術も、魔具も使う者次第でその形を変える。そう思うでしょ?』


 そういった彼女の表情はどこか疲れたものだった。


 『私は知識は何にも代えがたい大切な宝だと思っているわ。願わくば私の残した知識が正しく利用されることを願う。

 そして―――――』


 それからしばらく彼女の独白が続いた。

 ほとんどは懺悔のような、どちらかと言えば告解に近いものだったが。


 知識は宝、か。

 確かにその通りだな。


 『まあ、話は以上よ。長い話につき合わせてしまったわね。まあ、ここにあるモンをどう使うかはあんたの自由って事。もう死んでる私にどうこう言う権利はないしね。それでも、あんたが正しい事に使ってくれることを祈ってるわ……』


 そういった彼女の顔は、気のせいか俺をまっすぐにみている気がした。

 ホログラムなのにな。

 気のせいだろう。


 ゆっくりと映像は薄くなり、彼女の映像は消えた。

 どうやらこれで終了らしい。


 俺はゆっくりと台座に近づき―――――


 ごりん、もぐもぐもぐ。

 ごくん。

 

 うん、金はやっぱりうまいな。

 

 極彩色の球体も食べたが、中々に美味だった。


 あのホログラムには続きがあったらしく、その後の映像も頭の中に流れてきたが、これは俺には関係のないものだろう。

 こんなの知ったところでどうにもならないし、する必要もない。


 そんな“内容”だったから。



 ドームの中の石版や壁画はあらかた食い尽くしたし、後めぼしいものは特にないな。

 て待てよ。記憶見ればこのドーム隠し扉満載だな。


 あ、それに、そういえば、迷宮がどうとか言っていたな。

 突破も何も、天井突き破ってやってきたんだし。

 確かあの極彩色の球体を食った時に、この遺跡そのものの知識も手に入った。

 その迷宮とやらの知識も。


 ………これが中々にえげつない。

 あの女、美人だけど考えてることが結構、いや、半端じゃなくえげつない。


 ていうか多分アイツ性格絶対悪い。


 ゴツン!

 て、痛っ!

 な、なんだ?

 見ると、天井の岩の一部が落ちてきていた。俺の頭上に。

 …………………き、気のせいだよな?


 

 改めて周囲の壁を調べてみると、一部の壁が不自然にくぼんでいた。

 これか。

 俺はそのくぼみを押す。

 すると、壁が音を立てて開いた。

 壁の向こう側には石造りの通路が繋がっており、光魔石がその通路を照らしていた。


 なるほど、本来はこの道からここに入ってくるわけか。

 


 八十八階層からなる転移迷宮。

 それがエリベルの作った迷宮だった。

 

 通路を進んでいくと開けた場所に出た。

 遺跡があった場所と同じドーム型の広間だ。

 しかし、あそことは違いここには何もない。

 中央に魔法陣があるだけだ。

 流れてきた情報によると、迷宮自体はここよりはるか遠くにあるバルゼン大森林という場所の中心部に入口があるらしい。

 本来はそこの迷宮を突破して、転移門をくぐりここにやってくる手順になっているらしい。

 だが迷宮には各階層の守護者っぽいやつもいて、トラップも満載なのだ。

 さらに一層一層が点でバラバラの場所に配置されており、一層ごとに転移門を潜ることで次の階層に向かうことが出来るのだ。


 更にこの広間。

 俺は適当にその辺に落ちてた小石を拾い、魔法陣のふちに投げる。


 ちなみに俺自身は通路にいる。


 次の瞬間、魔法陣は爆発した。

 周辺から土砂崩れが起き、広間は半壊。

 通路へ通じる入口は即時封鎖され土属性の防壁と水属性の結界が即時展開。

 おまけに周囲から毒の霧が発生。

 さらにこの毒、周辺の酸素を消費するらしく大気濃度も変化。


 攻略したと思って気を抜いた瞬間のこれだ。

 えげつないにもほどがある。

 ただ正直これでもまだ優しいもんだ。


 転移先の本来の迷宮にはこれを超えるえげつない罠や魔獣、フロアボスが山のように仕掛けられている。


 絶対攻略させる気ないだろこれ?


 こんなのを八十八回も繰り返してようやく突破とか性格悪いにもほどがある。


 正直それだけの手間をかけてまで得たい情報だろうかとも思うが、この世界の人間の価値観なんてわからないしな。


 俺には必要ないような知識もかなり多かったし。

 



 さてと、それじゃ戻るとしますかね。


 冒険者に狩られないために、ダンジョンの改築やら、なんやら、やることが出来たしな。


 せっかく得た知識だ。有効に活用させてもらおう。


 俺自身の安全のために。


 それにいくつか検証しなきゃいけないことも出てきたしな。




 俺は元来た道を引き返し、自分のホームへと戻っていった。


 あ、この壁登りづらっ。


第一章『地龍になりまして』了

次回 閑章『アンのダンジョン防衛記!』


これにて第一章終了になります。次回はアンさんの閑話です。

ただ、現在書いてますが予想以上に泥臭い話になってしまいました。

好き嫌いが結構別れるかもしれません。すいません。

一応明日からの更新になります。

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