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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
閑章 アンのダンジョン防衛記!

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1.VS土蟲(ワーム) この身に宿すモノは

アン視点のお話です。

予想以上にシリアスなモノになってしまった………

 おはようございます、アンです。

 このたび地龍様の眷属になりました。


 やった。


 さて、改めて何をすればいいのだろう?

 地龍様は私にこの一階から第五層までを任せてくれた。

 すでにそこかしこに、私の子である兵隊アリが徘徊している。

 その数は数百は下らないだろう。


 そういえば、母は兵たちに何を命じてたっけ?

 私は記憶をほじくり返してみる。

 思い出されるのは、ぐーたらな日々を送っていたあの時の私。

 思い出さなきゃよかった!


 それでも我慢して記憶を掘り返す。

 あ、だめだ。怒られるか陰口叩かれてた記憶しか出てこない。

 ぐすん。


 ………そうだ!母は確かこう言っていた!


 “我々キラーアントは非常に弱い種族なの。ゆえにまずは己のいる環境を知りなさい”


 と、そう言っていた。

 そうと決まれば、まずは外の調査だ。

 手始めにこの荒野を調べつくし、地龍様が安心して暮らせる地をお創りするのだ!


 『我が子たちよ、エルド荒野の地形、魔物の生息区域、景色、なんでもいい。ともかくこの周辺に関する情報を集めてくるのだ!』


 我が子たちは一糸乱れぬ姿で外へと出てゆく。

 ただ、この入口を知られないように注意する必要はあるだろう。

 地龍様の望みは安寧とした生活を手に入れること。

 外敵からの侵入など有ってはならない。

 ましてや私の子供たちのせいで此処がばれては本末転倒だ。


 ふむ、ちょっと手を加えてみよう。

 私は数匹の子たちに別の指示を出す。

 それは、この一層から第五層までのちょっとした改築だ。


 更に外に向かう者達にはアクレト・クロウ、白飛龍の二体には絶対に気づかれないようにしなさいと、念を押した。

 アレは化け物だからね。


 兵たちは私の指示通りに動いてくれた。

 しかし、今でもたまに信じられなくなるなぁ。

 まさかあのグータラしていた私が子を産み、兵たちを指揮する立場になるだなんて。

 いや、普通のキラーアントならそれが普通なんでしょうけどね。

 はぁ~、早く地龍様とのんびりとした生活を送りたいなぁ。

 

 さて、兵たちの通信を待つ間、私は食事にとりかかるとしよう。

 あ、私たちキラーアントは同種間では最初から思念通話を使えるんだよ。


 今のところ“食事”が必要なキラーアントは私だけだけどね。

 下級である兵隊アリたちは地龍様のダンジョンから溢れる魔力で十分に栄養になるのだから。


 そうしているうちに兵隊アリの一匹が何やら薄い膜のようなものを持ってきた。


 これは………皮?


 しげしげと眺めているうちに私は気づいた。

 これは、地龍様の脱皮した皮だと。

 間違いない!この感じる魔力、鱗の色、匂い、どれをとっても地龍様のものだ!


 外にあったという事は、脱ぎ捨てたまま放置していたのか。

 これはいけない。

 地龍様の望みは平穏だ。

 

 もしこの脱皮した皮が人間共に見つかれば大変なことになる。

 私は兵隊アリたちに更なる指令を出す。


 『地龍様の脱皮した皮を見つけたら、すぐさま回収すること』


 これで、地龍様の平穏に少しは近づけるだろうか?

 

 私は兵隊アリの持ってくる魔石や魔物の死骸を食べながら子を産み続けた。

 

 

 

 そして、兵隊アリの数が二百になろうとする時、私に緊急を知らせる信号が届いた。


 『ダンジョン内ニ侵入者有リ!』


 ………ついに来た。


 来てしまった。

 地龍様の発する魔力に引き付けられた愚か者どもがやってきたのだ。


 そして続く信号。


 侵入者は…………魔物だった。

 土蟲(ワーム)と呼ばれる中級の魔物だった。


 中級。

 その言葉に、私は恐怖する。

 私たちキラーアントは最下級の魔物だ。


 単体ではゴブリンにすら勝てない程のひ弱な存在なのだ。

 だから数で対抗しようとする。

 質を量で補う。それが私たちキラーアントだ。

 

 …………それでも、勝てるのか?


 そんな言葉が脳裏をよぎる。

 相手は中級。私たち最下級の魔物が束になって、かかってようやく相手になるかどうか。

 私自身は地龍様の力をもらっている。

 それでも勝てるのか?

 今まで一度も、戦った事すらないこの私が。

 逃げてばかりいた私が。

 

 暗い記憶が甦る。

 何もしてなかった私。

 他の魔物にいいようにやられていた私。

 そんな私が、果たして兵を率いてこの魔物に勝てるのか、と?


 『上のことは任せた』


 あの御方の言葉が甦る。

 

 ………そうだ。


 ………そうなんだ!


 勝てるか勝てないかじゃない!

 勝たなきゃいけないんだ!


 勝ってあのお方のために役に立たなければいけないんだ!


 死に掛けの私を救ってくれた、あの御方のご恩に報いるために!


 誰にも必要とされなかった私を必要としてくれた、あの御方のために!


 変わるんだ!

 変わらなきゃいけないんだ!


 何を弱気になっていたのだ私は。

 私は自分自身に活を入れる。

 そして兵たちに指令を出す。


 『付いて来い!我が子供たちよ!これより愚かな侵入者を撃滅する!』


 うぉぉぉおおおおおおお!と兵隊アリ達の声が響き渡る。


 『恐れるな!往くぞ!』


 私たちは一糸乱れぬ動きで土蟲のもとへ向かった。




 そして見つけた。

 ダンジョンの第一層北エリアの部屋の中心にそいつはいた。

 うねうねと体を動かし、その巨体を見せつけている魔物。

 それは巨大なミミズのような姿だった。

 ただその先端には巨大な口がある。牙がずらりと並び、ダラダラと涎が垂れ流されている。

 醜悪な姿だ。


 そして、こいつが敵だ。


 土蟲(ワーム)は地中に住まう魔物だ。

 それゆえに土を掘り続けるうちにこのダンジョンから発せられる魔力に呼びよせられたのだろう。

 別に無害な魔物ならそれでも放置してかまわない。


 だが、土蟲は別だ。

 こいつはただ本能のままに赴く食欲の塊だ。

 目に付いたモノ全てを食らうただの獣だ。


 こいつをダンジョン内に放っておけば、兵隊アリのみならず、地龍様のダンジョンそのものも食い荒らされてしまう。

 それは断じて見過ごすわけにはいかない!


 『第一部隊は土蟲を包囲!第二部隊以下は彼らを支援して!』


 私は兵隊アリたちに指令を飛ばす。

 心臓はもう緊張で張り裂けそうだ。


 土蟲は動かない。

 ………なんだ?どうして動かないの?


 じりじりと第一部隊と土蟲の距離が縮まる。

 そして、攻撃が可能な距離まで迫る。

 ………よし!


 『第一部隊!酸液を放て!』


 第一部隊の蟻たちの口から一斉に液体が放たれる。

 キラーアントの唯一の遠距離攻撃『酸液』だ。

 その名の通り酸性の液体で、骨まで溶かすほどの濃度は無いが、人間程度なら皮膚は火傷のように爛れ、目に入れば失明は免れない。

 喰らうがいい!土蟲が!


 だがその瞬間、私は見た。

 

 土蟲の口が醜悪に歪むのを。

 

 次の瞬間だった。

 土蟲が体を捩り、高速で回転したのだ。

 その回転は降りかかる酸の雨を悉く散らした。


 そして、同時に第一部隊の蟻たち全てが一斉に薙ぎ払われた。

 ある者は前足が曲がり、ある者はその体を飛び散らせた。



 ………嘘だ。

 

 不意に私はそう思ってしまった。


 ぐわっと土蟲がこちらを向く。


 絶望がそこに迫っていた。

 


後一話続きます


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