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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第八章 大陸会議と神災龍王

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6.大陸会議・前日

 ダンジョンの外、大陸会議でのお話になります。

 ウナちゃんとドス君が主役

 ―――さて、時間はギブルがアースのダンジョンを去った時より少し前に遡る。

 

 ダンジョン内にてギブルとアースが「一人暮らしなんて心配だからお母さんと一緒に実家で暮らしなさい!」「やだ!親と一緒なんてやだ!絶対にだ!」と悶着していた少し前、ウナとドスはハザン帝国の帝城にいた。



 ハザン帝国帝城のホールにて―――。


 「はぐはぐ……むぐ、ごっくん。美味しいですね、ここの食事は」


 ウナは皿に盛られた料理を一心不乱に食べていた。

 大陸会議の間、各国の代表者及びその関係者は、帝城でのホールでの立食バイキング形式で、各々が自由に食事をとる事が出来る。

 これは各国の親交の場も兼ているのだが、護衛役のウナにとってはどうでもいい事だ。

 お料理美味しい。それだけでいい。

 あ、もちろん仕事もきちんと頑張ります。

 お父様の為に。

 お料理美味しい。むぐむぐ。


 テーブルマナーもへったくれもなくガツガツと料理を口に運ぶ姿は美女が行うには少々品位が問われるかもしれないが、そんなことウナにはどうでもいい。


 「あのやたらと食べる冒険者は誰だ?」「でもすごく綺麗な人……」「確か聖王国の護衛役の……」「ほほぅ、聖王国の冒険者は随分と品が無いですなぁ」


 等々、好奇の視線にさらされているが、そんなのを気にするポンコツ長女ではない。

 お料理美味しい。むぐむぐ。


 「………ウナ姉、もう少し、行儀よく、食べなきゃ」


 弟であるドスがそれとなく注意するが、あんまり効果は無かった。

 それどころか、「ドス、そんな小食でどうするのですか!」とドスの皿にこんもりと料理を盛る始末だ。

 うへぇ、この姉面倒くさい。

 微妙にドスは辟易していた。

 苦労人である。

 

 「うふふ。お二人は本当に仲が宜しいんですね」


 そんな二人に話しかけるのは、今回の護衛対象である盲目の聖女オリオン・カーラーだ。

 『聖櫃』の二つ名を持ち、聖王国に八人いる聖女の一人だ。

 今回の大陸会議の聖王国代表の一人でもある。

 ちなみに、修道服の上からでもはっきりわかる程の大変ふくよかな膨らみの持ち主である。

 盲目であることをまるで感じさせない足取りでオリオンは二人に近づく。


 「……オリオン、一人で歩いちゃ、駄目」

 「むぐむぐ……」(そうですよ聖女様、と言っている)

 「大丈夫ですよ。その為に貴方達がいるではないですか」

 「……それでも、万が一が、ある。……以前のグリフォンの時の様に」

 「むぐむぐ……」(そうですよ聖女様、と言っている)

 「……ウナ姉ェ」


 ホントこの姉はもうホント……。


 「うーん、本当にドスさんは真面目な方ですねぇ。あ、そうですわ。今度私の教会へいらしていただけませんか?裏の畑に美味しい野菜が育ちまして―――」


 ドスの忠告を聞きながらも、オリオンはコロコロと笑う。

 おまけにこの聖女、話がしょっちゅう飛ぶ。

 全く関係の無い方向へ。

 田舎のおばあちゃんみたいだ。


 「むぐむぐ……?」(野菜だけですか?、と言っている)

 「自家製のウインナーとか燻製もありますけど?」

 「むぐっ……ごっくん。分かりました。この任務が終わったら、必ず訪れると約束しましょう」

 「……ウナ姉ェ……」


 自分の姉も欲望一直線だ。

 最初の頃の凛々しさはどこへ行ったのだろうか?

 任務どうした?ダンジョンの為の情報収集どうした?

 というかどうしてむぐむぐで会話が成立しているのだろうか?


 ……もう帰りたい。


 ストレス溜まる。

 でも、パパの為にも頑張らなければいけない。

 その一心でドスはこの二人のお世話を耐えて頑張った。

 いつの世も苦労するのは真面目な奴なのである。

 そんな中、三人に近づく影があった。


 「おやおやぁ、これはこれはオリオン様ではありませんかぁ、ぬっふっふぅ」


 後ろからねっとりとした気色の悪い声がした。

 振り返るとそこには豚のように肥え太った背の低い男が居た。

 金や銀の刺繍が施された派手な服装に身を包んでおり、顔にはニキビや吹き出ものが浮かび脂ぎっていた。

 その後ろには護衛であろう騎士が二名控えている。


 「あら、この声は…シュヴァイン卿ですか?あらあら、セルド国の代表は貴方でしたか」


 声のした方に向き合いながら、オリオンはほほ笑んだ。


 「はぁい、その通りですよぉ。ぬっふっふ、他の方々は大変忙しくしていましてねぇ……。暇なワタクシが、こうして馳せ参じた次第なんですよぉ」


 セルド国―――確か聖王国の隣国の名だ。

 この男はそこの貴族なのだろうか?とドスは思った。

 

 「あらあら、何を仰いますか。シュヴァイン卿以上に外交が御上手な方など居りませんでしょう?」

 「ぬっふっふ、煽ててもなぁんにも出ませんよう、オリオン様ぁ」


 ドスは改めてこの男を見る。

 物凄く気色の悪い男だ。

 贅肉が多いせいか、男が笑うたびにぶるぶると頬肉が揺れ汗が垂れる。


 ちなみにウナは彼を視界にすら入れていない。

 無言で料理を頬張っている。

 お料理美味しい。むぐむぐ。

 ウナ姉ェ……。


 「それはそうと、貴女の運営する孤児院の調子はどうですかぁ?なぁんにもなければいいですけどねぇ、例えば貴女が不在の最中に偶然賊が入り込むとかねぇ……ぬっふっふ」


 ねっとりとした視線をシュヴァインはオリオンに向ける。

 何とも生理的な嫌悪感を催す視線だ。

 思わずドスの方がたじろいでしまった。


 「大丈夫ですよ、きちんと結界を張っていますし、冒険者の護衛も雇っておりますので。ああ、そうですわ。この間シュヴァイン卿から頂いた寄付金のおかげで無事壁の修繕が終わりましたんですよ」

 「ほほぅ、それは重畳。子供は未来の宝ですからなぁ。ぐふふふ。なんなら、ワタクシの所で預からせて頂いても宜しいんですよぉ?ワタクシ可愛い子供はだぁい好きですからねぇ」

 「そんな……これ以上シュヴァイン卿のお世話になるわけにはまいりませんわ」

 「そおですかぁ、それでは近いうちに、此方から伺いましょう。美味しいランラーン産の果物でも持参してねぇ……ぬっふっふっふ」

 「まあ、それはあの子達もきっと喜びますわ」

 「ぬっふっふ、それではワタクシはこれで。明日の大陸会議は、お互い実のある会議にしたいものですねぇ…今後の為にも」

 「ええ、そうですね」

 「ぬっふっふぅ……」

 

 ねっとりとした笑みを浮かべてシュバイン卿とその護衛は去って行った。

 何とも気色悪い男だった。


 「……知り合い?」

 

 ドスはオリオンに訊ねる。

 あのような見るからに醜悪そうな男と目の前の聖女が知り合いとはドスには思えなかった。

 何か弱みでも握られているのではないかと邪推してしまう程だ。


 「はい。シュヴァイン卿―――セルド国のランラーン地方を治める公爵で、内政大臣の一人です。国内における奴隷解放やオーク族への人権取得、私財を投じての孤児院の増設や学校の設立、各国への和平交渉等、あの御人が成し遂げた偉業は数えきれません。私が心より尊敬する御方の一人です」


 すごく良いヒトだった!


 「……それ、本当?」

 「ええ」

 

 こくりと、オリオンは頷く。

 そんないいヒトなのに、なのに何であんな醜悪な見た目をしているんだろうか?

 ホント人間って不思議だとドスは改めて思った。

 

 ちなみに、ウナはそんな事などどうでもいいとばかりに料理を頬張っていた。

 お料理美味しい。むぐむぐ。


 ………姉ェ。


 と、その時ドスは会場の端に見知った人影を見つけた。

 その人影は人の間を縫うように移動し、素早くホールを後にした。


 「………アレは」


 ドスはその人影を追う様にホールの外へ出た。


 無論、きちんと思念通話でウナに聖女の護衛を頼み、さらに鳥型のゴーレム・ホムンクルスのメイちゃんにきちんとウナの監視を頼み、さらに数十体のレイスと小型昆虫型のゴーレム達を気配を隠したうえで会場に配置させてウナの監視をさせ上で。

 さぼらない様に、任務を忘れない様に。


 もうコレいっそウナに頼むよりそいつらに頼んだ方が良いんじゃないかっていうくらい過剰だけど仕方ないのだ。

 ドスは次男、ウナは長女。

 弟は姉を立てなければいけないのだ。

 ………姉ェ。


 と言う訳で、その人影を追ってドスはホールの外へ出た。



 暗転。



 ハザン帝国帝都の一角にて―――。


 ヴァレッドとベルディーは宿屋の一室に居た。

 二人は備え付けられたベッドの上で雑談している。


 「はぁ~それにしても暇だねぇ」

 「仕方あるまい。代表の護衛役として指名されたのは師匠だけだ。例え免罪になっても、私達がおいそれと公共の場に出ては無駄な混乱が生じる」

 「まあ、分かってるけどねぇ。それでもやっぱり、ジッとしてるのは性に合わないよ」


 そう言いながらヴァレッドは、手に持った二本の剣を弄ぶ。

 ベルディは呆れたようにため息をついた。

 

 「それなら武器の手入れでもしていればいいだろう?少なくとも師匠は今回の大陸会議は“何か”があると予想している。私もそう思う。準備はしておいて損は無いだろ」

 「確かにこういう時の君や師匠の勘はよく当たるからねぇ」


 じゃあ武器の手入れでもしておくかな、とヴァレッドが思った瞬間だった。

 ドアがノックされた。

 

 「どうぞ」


 ヴァレッドが返事をすると、ドアを開けて一人の女性が入ってきた。

 ぼさぼさとした赤毛の女性だ。


 「今戻りました、二人とも」

 「あ、ファーリーちゃんお帰りー」


 ぷらぷらと手を振りながらヴァレッドは笑顔で出迎える。

 入ってきたのは、彼らの知り合い。

 元冒険者のファーリーだ。

 その手には食料の入った袋が抱えられている。


 「ごはん買ってきましたよ」

 「うん、ありがと」

 「すまないな、いつも買い出しを任せてしまって」

 「いいんですよ。私が好きでやってんですから」


 ファーリーはブンブンと手を振る。

 かつて彼女は、ベルディーの妹パルディーに冒険者としての手ほどきを受けており、その頃からベルディーやヴァレッドと少なからず親交があった。

 と言ってもファーリーが一方的に憧れているのだが。


 一年ほど前のあの悪夢のようなエルド荒野大規模討伐作戦の折にファーリーは命からがら生き延び、ハザン帝国へと亡命した。

 現在、彼女は冒険者兼宿屋の手伝いとして生計を立てていたのが、彼女の働いている宿に二人が留まりに来たことで再会を果たしたのだ。

 その際、パルディーや銀の烏のメンバーが死んだことなどを聞かされてかなりショックを受けた。

 だが、ここで会ったのも何かの縁と、彼女は滞在中の間の二人の世話を買って出たのだ。

 最初二人は遠慮したのだが、冒険者時代の恩を少しでも返したいとファーリーが頑として譲らなかったのだ。


 「お二人の話は色々と聞いてましたから。本当に驚いてますよ」

 「まあ、色々あったからねぇ」

 

 他愛ない雑談をしながらヴァレッドとベルディーは食料を漁る。

 その時だ。


 再びドアがノックされた。


 「あれ?女将さんかな?ごめん、ちょっと見て来ますね」


 そう言ってファーリーはドアの方へ向かおうとするが、その前にヴァレッドに腕を掴まれた。

 

 「待ちなよ、ファーリーちゃん」

 「え?どうしたんです?」


 不思議に思ってヴァレッドを見ると、その顔は全く笑っていなかった。

 警戒の色が色濃く浮かんでいる。

 ヴァレッドとベルディーは武器を構えながら扉の方を見た。


 「……ファーリーちゃん、どうやらつけられてたみたいだねぇ」

 「ああ……。それも相当な使い手だ」

 「えっ?」


 ドアが開かれ、一人の男が中に入ってきた。

 顔の半分を白い仮面で覆った、聖職者の様な服装をした男だ。

 だが、その背中に聖職者にはとても似つかわしくない身の丈ほどの青い大剣を背負っている。


 「誰だい、君は?」

 「………龍殺しヴァレッド・ノアード、そして穿界ベルディー・レイブンだな」


 男はヴァレッドの質問に答えず、二人を見つめる。


 「そうだけど、質問に答えてくれるかな?君は誰だいって僕は聞いたんだけど?」

 「私は主より貴公らの抹殺を命じられた」


 事務的な口調で男は言う。

 端的な説明すらなされていない聞き手を無視した一方的な発言だ。


 「悪いが死んで貰う」


 そう言って男は背中に背負った大剣を抜いた。


 「へぇ……強そうだねぇ」


 ヴァレッドは笑って双剣を構えた。

 見ただけで分かる。

 目の前の男は相当な強者だ。


 「え?な、何なのさこの状況?」


 ファーリーは状況が理解できず混乱するばかりだ。

 そんな彼女の傍に槍を構えたベルディーが立つ。


 「ベルディー、彼女を頼むよ」

 「ああ」


 直後―――室内に激しい衝撃が起こった。




 ハザン帝国帝城ホールにて―――。


 「お、始まったかー」


 ホールの一角で料理を摘まみながらレーナロイドは外の景色を見た。


 「さて、あのルギオス相手に“龍殺し”と“穿界”は何分持つかなー?……あ、この料理美味しい」


 むしゃむしゃと適当に料理を摘まみながら、彼女は呟く。

 どこにでもいる様な平凡な見た目の彼女の呟きは誰にも聞かれる事はなかった。





 

  (´・ω・`)ちなみに今回登場したシュヴァイン卿は作中でも一・二を争う良識人です。

 (´・ω・`)でも豚。



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