4.ウナとドスの冒険者としての話だけでラノベ一冊分になる件について
釣り上げた四百キロ越えの大魚を捌きながら、俺はウナとドスの冒険者としての話を聞いていた。
外界の情報収集はもちろん、冒険者としても二人には活動して貰っていたのだ。
二人の話は、ダンジョンで引き籠りしていた俺には楽しい話ばかりだった。
まあ、かといって外に出たいとは思わないけどね。
それにしても二人は中々に大変だったらしい。
盗賊団を壊滅させた事。
旅の途中で山賊に襲われそうになっていた貴族の女性を助けた事。
とある村を襲ったオークの大軍を二人で退けた事。
殺されそうになっていた百人近い奴隷たちを解放して、裏で糸を引いていた領主を断罪したこと。
なぜか、ウナをかけて他のイケメン冒険者とドスが決闘することになった事。
その後何故かその男性と共に、三人で共闘してキング・ゴブリンを討伐した事。
ドスが助けた貴族の女性に求婚されそうになった事。
仮面をつけて夜な夜な情報収集をして――ついでに目に付いた賊を退治して――いたら“仮面の死神”などと言う不名誉な二つ名がつけられたこと。
そして、ドスはそれまでの功績が評価され、数日前に聖王国の冒険者ギルドからSランク認定を受けたんだそうだ。
『Sランク!?ドス、お前Sランクになったのか!?』
「………うん。聖王国で四人目のSランクだって」
少し頬を赤くしながらドスは報告する。
「ぷるー!ぷぅー」
ぷるるも「おめでとー」って言っているのか、分身体をドスの体に絡みつかせている。
チュランは「うまー」と言いながら一心不乱に焼いた魚を食べている。
『ん?てことは、もしかしてウナもSランクになったのか?』
俺はウナの方に視線をやる。
すると、ウナはびくりと体を震わせ、俺の持ってきた道具袋に顔をうずめた。
「えっと、はい。その……私も、頑張ったのですが……」
「………ウナ姉はまだBランクのまま」
ぽつりとドスが呟くように言う。
「ちょっ!?ドス、アナタ何を勝手にっ」
「………ウナ姉、いつも肝心なところでミスをする。だから、ずっとBランク」
「そ、それ以上言うのは止めなさい!だいたいゴブリン、あ、いや人族如きの決めた枠組みの中で活動する事が――」
「………冒険者を通しての情報収集活動はパパの命令。言い訳、駄目」
「うぅ……」
ウナがドスに言いくるめられてしゅんとなっている。
なんだろう。
どっちが姉で、どっちが弟なのか分からなくなる光景だ。
ていうか、人族をゴブリンって……。
ん、そう言えば……。
『確かSランク冒険者って、単独で王級の魔物を仕留めることが出来るんだよな?てことは、ドスも?』
ドスはこくりと頷く。
「………うん。王級の単独撃破。Sランク認定の条件の一つ。僕も、戦って倒した」
『へぇー』
そりゃすごい。
どうやら、ドスはしばらく見ない間に随分と腕をあげていたようだ。
「………聖王国の港町にヘル・クラーケンっていう王級の魔物が出た。それを倒した」
『強かったか?』
「………ん。でも、何とか倒した。そしたら、ギルドがSランク認定をくれた。あと、イカ美味しかった」
『そ、そうか』
………クラーケンって食えるんだな。
エリペディアによれば、物凄いグロテスクなイカの化け物だった筈だけど。
『まあ、何はともあれ、おめでとう、ドス』
俺はドスの頭をなでる。
すると、ドスはくすぐったそうにしながらも、それを受け入れてくれた。
ウナの視線がちょっと怖かったけど。
その後、みんなで食事にした。
といっても、俺は食えないんだけどね。
この体って食べても味もなんも分かんないんだもん。
食べながら話している内に、ファーブニルの話題になった。
ウナ達もすでに事情は知っていた。
当時、聖王国で冒険者としての任務中にベルクから通信魔石を介して教えてもらったんだそうだ。
俺達がファーブニルとドンパチやってた時、二人は聖王国郊外の雪山に居た。
直ぐにこちらに向かおうとしたが、魔物の討伐中だったらしく邪魔が入り応援に駆け付けられなかったらしい。
「お父様……。本当に申し訳ありませんでした。ダンジョンが、お父様が大変な時に駆け付けることが出来ず……」
「…………ん。ごめんなさい、パパ」
参戦できなかった事を二人は後悔しているらしい。
ダンジョンの一大事に駆けつけられ無かった事に。
うーん……、でも別にもう過ぎた事だしなぁ……。
俺叱るのとかそう言うの得意じゃないし。
『そう、頭を下げなくてもいいって二人とも。結果的に、俺は無事だったんだし。それに、もし次があれば、その時は遠慮なく頼らせてもらうからさ』
いや、まあ“次”が無いのが一番いいんだけどね。
もう薬や武装化はまっぴらごめんだし。
未だに俺の体は戻らないし、おかげで憑代ゴーレムの姿だし。
なので、皆で俺を守って下さい。
そんな感じで俺は気楽に言ったのだが、
「お父様……」
「……パパ」
だが、何故か二人は決意を新たにした感じの表情になった。
いや、別にそんなに気合入れなくても良いんだよ?
あの龍殺しのダンジョン破壊事件や、ツムギのダンジョン改変によるファーブニルへの誘拐事件なんて事態がそうそうあるとは思えないし。
……………多分。
いや、フラグじゃないよ?
マジで。
暗転。
皆で食事を終えて、一息つく。
「それじゃあ、お父様。私達はエリベルさんの所へ行きます」
「………ん。そういえば、呼ばれてた」
いや、呼ばれてたんなら最初に行けよ二人とも……。
そう言えば、エリベルも二人に用があるみたいなこと言ってたしな。
『あ、そうだ。二人ともエリベルのとこ行くなら、これもついでに持って行ってくれないか?』
俺は懐から、エリベルに渡された極彩色の球体を取り出す。
既にデータは打ち込んであるけど、返した方が良いだろう。
もう俺の体に関することも含めて、全部読み終わったしな。
差し出した極彩色の球体を、ウナが恭しく受け取り懐にしまう。
そして、しまった後、なぜかその手を鼻に持って行った。
どうしたの?鼻痒かったの?
「すぅうううう、はぁ。分かりました。それではお父様、行ってきます」
「…………行ってきます」
『ああ、行ってらっしゃい』
少しだけ名残惜しそうにしながら、二人は転移門の光の中へと消えて行った。
さて、釣りもしたし深層に帰って昼寝でもしよう。
『さて、ぷるる帰ろうか?』
「ぷう」
俺はぷるるを抱きかかえて、転移門の方へと向かう。
チュランの方を見ると、食べ残した魚の背骨を齧りながら「うまー」と言っていた。
うん。
放っておいた方が良いな。
『…………ん?』
アレ?
なんか、凄い魔力の波動を感じるな。
上空か?
上を見上げると、穴の上を白飛龍が飛んでいた。
あの大きさ………もしかして、グウィブか?
しばらく見てなかったから、合ってるかどうか不安だけど、多分グウィブだと思う。
それに、なんかもう一体別の魔力が混じってるような感じがするな。
背中に誰か載ってるのか?
「ぷぅ?」
ぷるるも不思議そうに上空を眺めてる。
チュランは「アレ食べれそうにないなー」みたいな感じで見てるな。
降りてくる気配はないな。
ずーっと上空を飛び回ってるけど、どうしたんだろう?
まるで、こちらを警戒しているようにずーっと穴の上空を旋回している。
『うーん……話しかけるべきかなー?』
………まあ、いいか。
なんか用があるなら降りて来るなり、思念通話を飛ばすだろうし、大丈夫だろ。
こっちから話しかけるのも面倒くさいしな。
眠いし。
「ぷぅー?」
ぷるるが「いいの?」みたいな感じで話しかけて来る。
『別にいいんだよ。なんか用があればまた来るだろうし、さっさと帰って一緒に昼寝しよう?』
「ぷぅー♪」
ぷるるもこくりと頷いて、俺の胸に体をうずめてくる。
らぶりー。
癒されるわー。
ぷるるって抱き枕にして寝ると最高の寝心地なんだよな。
ま、特に問題は無いだろう。
そんなトラブルが早々起こるわけないんだし。
………なにか、盛大にフラグを立てた気がするがきっと気のせいだろう。
と言う訳で、俺達は転移門を潜って森を後にした。
お魚ご馳走様でした。
…………食ってないけどね。
ちなみにウナとドスには冒険者としての二つ名も付いてます。
ドスは『烈風』
ウナは『水姫』
二人とも既にギルドでは一目置かれる存在となっております
モテモテです。ちくしょうが。




