2.爆ぜろリア充!弾けろクリスマス!バニッシュメント・ディス・ワールド!
注意
クリスマス用の番外編となります。
本編ガン無視の内容となっておりますのでご了承ください。
「クリスマスよ!」
開口一番、エリベルは俺に向かってそう言った。
ちなみに、エリベルはいつもの骸骨ではない。
憑代を使った生前の美女の姿だ。
しかもサンタクロースの衣装だ。
今流行のミニスカサンタ―――ではなくだぼっとしたズボンにナイトキャップという色気もへったくれもない普通のサンタの格好だった。そういうお色気に走らない辺りが実にエリベルっぽい。
『……………は?』
「『何言ってんのコイツ?』みたいな顔するんじゃないわよ。クリスマスよ、クリスマス。現実時間では現在クリスマスだから、それ用の番外編SSをしようって事よ」
なんかすっげーデジャブ……。
この流れ前話と同じだわ。
まあ、違うのは俺が地龍の姿で此処が普通にダンジョンの中だという事か。
「というわけで、アース。アンタはトナカイ役ね!」
『いや、ごめん。意味が分からないんだけど……』
「相変わらず状況判断能力が低いわね!要するに、私とアンタで、日ごろお世話になってる人や町のカップルへプレゼントを配ろうって事よ」
ああなるほどそういう事か。
よかった。
こいつの事だからてっきり、クリスマスに託けてトレスやツムギを襲おうとするのかと心配してたんだ。
………でもなんだろうか?この言い知れぬ不安感は?
こいつがみんなにプレゼント?
こいつが?この天上天下唯我独尊自分中心天動説の賢者(笑)が?他人にプレゼント?
「この日の為に前から準備してたのよ」
ぽんっとエリベルは抱える袋を叩く。
………………怪しい。
そもそもこいつが他人に何かをプレゼントするという発想からしておかしい。
絶対何か裏がある気がする。
『エリベル』
「何よ?」
『そのプレゼントの中身は何だ?』
「………………………………お、お菓子の詰め合わせよ」
だらだらと汗を流しながらエリベルは答える。
すっげー怪しい。
『あ、トレスとツムギだ』
「え、どこ!?」
隙を見せたエリベルから俺は袋をふんだくり、プレゼントを一つ取り出して遠くへ放り投げる。
「あっ、ちょ―――」
チュドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
綺麗なラッピングが施された箱は、地面に触れると同時に激しい爆音を伴いながら爆発した。
遠目でも数メートルのクレーターが出来ているのが分かる。
どうみても爆弾である。
エリベルの方を見る。
すると、彼女は気まずそうに目を逸らした。
『なあ、アレ何?お前、中に何入れた?』
「…………………………きゃ、キャベツ○郎かしらね?」
『嘘つくんじゃねーよ!どこの世界に、地面に落ちた瞬間爆発するキャベ○太郎があるっていうんだよ!』
やおき◯に謝れ!
俺は袋の中から次々にプレゼントを放り投げるが、漏れなく全て爆発した。
『んで、何でこんなことしようと思ったわけ?』
「わ、私は悪くないわ!世間が、そう世の中が間違ってるのよ!カップルだらけの腐った世の中がおかしいのよ!あのイチャイチャラブラブの空気が悪いのよ!」
『黙れ犯罪者!』
「な、アンタこの私に向かって犯罪者ですって……っ!」
『じゃあ、聞くがあのプレゼントをどうするつもりだったんだ?』
「………………………カ、カップルに投げつけてやろうかと……」
『殺す気満々じゃねーか!?』
「悪くない!私は悪くないわ!間違っているのはこの世界の方よ!」
どこぞの反逆の皇子みたいなセリフを吐くエリベル。
二百パーセントお前が悪い。
だが、そんな事を云ったところでこの産廃クズ賢者が納得する訳もない。
きっとこの場は適当に誤魔化して後で凶行に及ぶに違いない。
別に外のカップルがいくら死のうが、俺はどうでもいい。
だが、万が一エリベルが行った凶行からこのダンジョンへ危険が及ぶのは避けたい。
なにより………コイツが哀れ過ぎる。
クリスマスに一人の寂しさを紛らわすために他のカップルを爆殺するって、馬鹿すぎるだろ。
全く、何でそんなこと俺に手伝えなんて言って来るんだか……。
はぁ、仕方ない。
俺は懐にあった白い粉を一口舐める。
精神反転。よし、この状態の俺なら、口も達者になる。
これでイケる筈だ。
『いいかエリベル、いくら人を憎んだところで、お前の憎しみが晴れるわけじゃないんだ。むしろ、虚しさが増すだけなんだぞ?』
「で、でも!生前はあいつらが爆発するところ見てたら胸がスカっとしたわ!」
真正のクズじゃねーか!救いようがねえなコイツ。
いや、落ち着け俺。大丈夫だ、薬も効いている、
クールになれ。
今の俺なら、コイツを丸めこめるはずだ。
あ、そうだ!あれがあった。
『あー……そうだ、エリベル』
「何よ?」
俺は寝台の下からそれを取り出してエリベルに渡す。
俺特性のブローチだ。ふんだんに魔石をあしらった特別性。
「……?なによ、これ?」
『クリスマスプレゼントだ』
「………は?」
『いや、だからクリスマスプレゼント。アンやお前にはいつも世話になってるしな。手作りだけどそれで勘弁してくれ』
実をいうとクリスマス用に作ったわけじゃなく普段の俺が暇つぶしに作っておいた代物だが、ココはあえてクリスマス用に作っておいた体を装う。
優しい嘘も必要なのだ。
エリベルはじっとそれを見ている。
……あれ?気に入らなかった?
『あれ?駄目だった?おーい、エリベルー?』
「…………はっ!?」
ぺちんと頬を軽く叩いて、エリベルはようやく正気に戻る。
気のせいかその頬が少し紅い。熱でもあんのか?
『なんだよ、そんなに気に入らなったのか?』
「い、いやそう言う訳じゃないわ!う、うん!まあ、良いんじゃないかしら!?ええ、まあ仕方ないから貰っておくわ!まあ、日ごろの私の行いからすれば?この程度の報酬でも足りないくらいだけど、まあ仕方ないわ、貰っといてあげるわ!」
捲し立てる様にエリベルは言う。
『あ、ああ、そうか……』
「…………誰かからプレゼントを貰うなんて初めてよ。……でも、悪くないわね」
ぎゅっと、エリベルは俺から貰ったブローチを胸の前で握りしめる。
『だろ?憎しみじゃ救いなんて無いんだ。虚しさと悲しみで心が満たされないなら、それを誰かに塞いでもらえばいい』
「誰かに……?」
『ああ。その為の眷属だろ?お前は独りじゃないんだ。俺がいる。ベルクがいる。アンやウナ、ぷるるにトレス、ドス、ツムギだっている。お前が寂しいなら、その寂しさを俺達にも分けてくれ。そしたら、その分、俺達がお前に愛情や温もりを与えてやる』
「…………アース……ぐすっ」
『だから、その懐にしまった爆弾を捨てるんだ、エリベル』
ぽとり、頬を伝う涙と共にエリベルの懐からラッピングされたクリスマス爆弾が落ちる。
―――爆発はしなかった。あぶねぇ、やっぱり隠し持ってやがった……。
「ぐすっ……アース、アンタ白い粉を飲んだでしょ?」
『ああ、飲んだ』
「どうして!?白い粉は使えば使う程、アンタの精神を蝕んでいくのよ!?なのに、どうして、こんな下らない番外編なんかで白い粉を使うの!?」
『お前を救うためだ、エリベル。大事な家族に無差別爆破テロだなんて起こさせるわけにはいかない。お前の悲しみは、俺達家族の悲しみなんだ。それが救えるのなら―――俺はいくらだって白い粉を服用してやる』
すっとエリベルは俺の胸に顔をうずめる。
「馬鹿よ……ぐすっ……アンタは……大馬鹿だわ……っ!」
『馬鹿でいいさ。それでお前が救えるなら』
そして、しばらくエリベルは俺の胸で静かに泣き続けた。
こうして俺は、エリベルの凶行を事前に食い止めることが出来た。
良いシーンだなーと思うけど、良く考えたらこれ無差別爆破テロを起こそうとしたキチ○イ女を薬漬け地龍が説得するっていう史上稀に見る最悪なシチュエーションなんだよな……。
ま、まあ細かい事は気にしないでおこう。
「……アース、ありがとうね。私、少しどうかしてたわ」
お前はいつもどうかしてるよ。
『いいさ、エリベル。誰にだってそういう時がある。ただ、これからは少しだけ、お前の弱さを俺達にも分けてくれ』
「………そうね、私も少しだけ素直になってみるとするわ」
くるりと身をひるがえし、エリベルは転移門を潜る。
そして、転移門が発動する寸前にこちらへ振り返った。
「アース」
『なんだ?』
「メリークリスマス」
『ああ、メリークリスマス』
にかっと笑いながら、エリベルは転移門の光の中へ消えて行った。
…………あれならもう大丈夫そうだな。
さてと、アンやトレス達にプレゼント渡して俺も寝るかな。
それじゃあ、みんなメリークリスマス!
と、こんな感じに綺麗に終わればよかったんだけど。
まあ、当然そんな綺麗な感じで終わるわけもなく――――
その日の夜。
「びえええええええええええええん!」
「ふえええええええええええ!」
俺が寝ようとした時、泣きながらトレスとツムギがやってきた。
『なっ!?ど、どうしたんだ二人とも!?』
「お父―さん!あの変態どうにかしてー!」
「うぅ……怖い、怖いよぉ……」
二人は扉の向こうを指差して言う。
見れば、そこには全裸にピンクのリボンを撒きつけた変態が居た。
……………なにあれ?
「アース!これはどういう事よ!」
『それはこっちのセリフだ変質者!なんだその恰好は!?』
「アンタの言うとおり、自分の気持ちに素直になって行動してみたのにトレスちゃんもツムギちゃんも全然私を受け入れてくれないじゃないの!」
『当たり前だ!人の言葉を曲解してんじゃねーよ、馬鹿野郎!それは自分の気持ちに素直になってるんじゃなくて、欲望に身を委ねてるだけだろうが!』
ウチの眷属(子達)にトラウマ植えつけてんじゃねーよ!
ほら見ろ、震えて泣いてるじゃねーか!
「アンタの言葉を少しでも信じた私が馬鹿だったわ!生まれたままの姿で、二人に私を美味しく頂いてもらおうと思ったのに……っ!」
エリベルは全裸リボンスタイルでぎりぎりと悔しそうに歯ぎしりをしている。
恰好がかなりきわどいため、動くたびにちらちらと胸の先端のピンク色のアレや下の方のアレなんかが見えてる。
しかし、なぜだろうか?
銀髪紅眼ナイスバディ―の美女が裸リボンと言う男性垂涎の恰好をしているのに、全くエロさを感じない。
むしろ虚しさや憐みすら感じてしまう。
なんだろうか、このがっかり感は?
理由は分かる。エリベルだからだ。
例え素材がどれだけ極上だろうが、そこにエリベルと言う添加物が追加されただけでどんな特選素材も産廃同然の廃棄物に成り下がってしまうのだ。
「かくなる上は実力行使よ!アース、そこをどきなさい!私は幼女と性なる夜を過ごすの!」
『どけるか馬鹿!眷属は俺が守る!』
「お父―さん……」「父さん……」
後ろに隠れてる二人がぽーっと頬を染めながら俺を見つめてくる。
よせよ、お父さん照れちゃうだろ。
「きぃー!なにこの状況に託けて二人の好感度を上げてんのよ!羨ま死になさいアース!」
『ふざけんな、この野郎!』
「喰らいなさい!『天地乖離す明星ノ理・七夜の果て・十二の神々―――』」
『ちょっ!お前、それ“聖域干渉”の詠唱―――っ!くそっ!』
エリベルは詠唱を行う。全裸リボンで。
対して俺も薬を飲んで武装化を発動する。
「しねえええええええええええええ!!」
『させるかあああああああああああああ!!』
何の迷いもなく俺達は激突する。
互いに譲れないものがそこにあった。
ゴッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!と。
深層に凄まじい爆音が響き渡った。
これが後に語られる『聖夜の惨劇』である。
深層半壊、二百機以上のゴーレムの破損、各階層への魔力回路の暴走等々、凄まじい傷跡を残した悪夢の一夜だった。
畜生!クリスマスなんてもうこりごりだ!
ちなみに。
同じくアースからのクリスマスプレゼントをもらったアンは嬉しくて自室で一晩中ブローチを握り締めながら嬉し悶えてゴロゴロしていたという。
ちっ、ホントクリスマスってやつは……。
それじゃあ、改めて、皆さんメリークリスマス!
次回は『アンのダンジョン防衛記!その3 森の動乱編』となります。




