22.転換期
予約投稿間違えてた……
ちょっと長めです
『ふぅー……』
俺は大きく息を吐いた。
ようやく決着がついた。
といっても、ここからが本題だ。
ファーブニルをボコボコにしたけど、これじゃ動きを封じただけで、実際には何の解決にもなってない。
器とファーブニルの延命。
これをどうにかしない事には、問題の解決にはならない。
「ファル……」
見れば、道外しは、ファーブニルの傍に寄り添っていた。
ファーブニルは……完全に気絶してるな。
動く気配はなさそうだ。
さてと、エリベルと話をしないと…………ん?
何だ?エリベル達が開けた穴から、何か気配を感じる。
―――魔力感知を発動。
強大な力を持った魔物が三体降りてくるのが分かった。
ふわりと、その三体は広間に降りる。
エリベルと同じ骸骨の様な魔物、ぷるるよりも何倍も大きなスライム、そしてモノクルを付けた執事の様な老人だ。
一体一体がヘレブやグウィブ並みの魔力を感じる。
でも、敵意は感じない。
こいつらは一体………?
「………終わったようだな」
三人のうちの一人、骸骨の魔物が口を開いた。
対応したのはエリベルだ。
「ええ、ファーブニルの暴走は食い止めたわ」
『エリベル、知ってるのか?』
俺はエリベルの方を見る。
こいつらが誰か知っているようだ。
「こいつらは、ファーブニルの眷属達よ。立場で言えば、私やアンちゃんみたいなものかしらね。各階層の階層主で、私達と戦ったわ」
戦った。
それを聞いて俺はとたんに警戒の色を強める。
『………大丈夫なのか?』
「問題ないわよ。私が直接話したのは、真ん中の骸骨だけだけど、後ろの二人も、トレスちゃんやぷるるんと話を通してるみたいだしね」
「ぷるー」←リュング
「ぷぅー」←ぷるる
二体のスライムが、体を重ね合せてじゃれ合ってる。
ラブリー。
癒されるわ。戦いで傷ついた精神が回復していく。
警戒しなくてもいいのかな?
だって、可愛いしなぁ……。
「ファーブニルを止めてくれてありがとーって言ってるよ」
トレスが翻訳してくれる。
ていうか、トレス。お前、ぷるるだけじゃなくてスライム全般の言葉が分かるのか。
「ふぉっふぉっふぉ。ですが問題は、まだ何も解決しておりませんぞ?エリベルさんと申しましたかな?」
後ろに控えた紳士風の老人がエリベルの方を見る。
「貴女は、我々に可能性を示してくれると仰られた。だからこそ、我等もこの戦いを静観することを決意しました。ファルが傷つくことも含めて、です。なので………そろそろ、教えてくれませんか?貴方はいかにして、ファルを死の危機から救い、このダンジョンの崩壊を防いで見せるのかを」
そう言って、全員の視線がエリベルに集まる。
まあ、それは俺も気になっていた。
さっき降りてきた時に、とりあえずはファーブニルを気絶させて強制的に暴走状態を解除するってとこまでしか聞いてなかったし。
みんなの視線、そして“期待”がエリベルに向けられる。
かくいう、俺も一体エリベルがどんなことを考えているのか気になっていた。
ファーブニルの寿命はすでに限界、死ねばダンジョンが崩壊する。
だが、俺がその憑代になる気は無い。
そうなれば、崩壊は防げるが、ファーブニルが死ぬ。道外しが悲しむ。
でも放っておけば、ファーブニルは死んでしまう。
殆ど詰んでいると言っても良い状況だ。
―――果たして、解決策など有るのか?
でも、エリベルなら可能なのではないか?
そう思ってる、俺が居る。
他の眷属達も、そう思っているのだろう。
そして、それはファーブニルの眷属達も。
みんなの視線を集めたエリベルは、ボリボリとむき出しの頭蓋を掻きながら口を開く。
「――――ないわよ?」
「「「『『は?』』』」」」「「ぷぅ?」」
俺たち全員の声が綺麗にハモる。
ファーブニルの眷属達に至っては、あんぐりと口を開けている。
「あら、聞こえなかったの?」
じゃあ、もう一回言うわねと、エリベルは周囲を見渡す。
「今、この場でファーブニルを救う方法なんて無いわ。というか、不可能よ、絶対無理」
断言。
不可能。
無理。
エリベルは、賢者はそう宣言する。
場の空気が凍りついていくこともお構いなしにエリベルは続ける。
「大体、迷宮核とダンジョンの主が融合したダンジョンなんて前例が殆どないもの。私だって、記録でしか見たことが無いわ。その上、この龍、見た感じじゃ迷宮核と魂レベルで融合しちゃってるみたいだし、ヘタに刺激することも出来ないじゃない。こんなの、即興で治すなんて、いくらこの天才の私でも不可能よ。疑似迷宮核や他のもので代用することも出来なさそうだしね」
「なん……だと……?貴方は……っ!」
ゴウッ!と骸骨の男から殺気と魔力が溢れ出す。
「ふぉっふぉっふぉ……これはこれは……!」
「ぷぅー……!!!」
更に、後ろのスライムや、老紳士からも魔力を解放する。
………まあ、当然だよな。
ファーブニルを救えると期待していたところに、そんな方法なんて有りませんでしたーと宣言させれたんだ。
そりゃ、怒るに決まってる。
アンやトレスも、武器を構える。
一瞬即発の状況。
だが、エリベルはその殺気を平然と受け止めている。
なんで、お前が平然としてるんだよ?
「まあ、落ち着きなさいって。あくまで、“今すぐ”解決する手段は無いって言ったの」
「何……?」
骸骨の男が鎌を構えながら問う。
『……どういう事だよ、エリベル。もったいぶってないで、教えてくれ』
流石にこれ以上空気が悪くなるのは、耐えられん。
エリベルも、言い方がまずかったのは自覚しているのか、ばつが悪そうに頭を掻く。
「わかったわよ。言い方が悪かったわ。今すぐ問題の解決は出来ない。でも―――問題の“先送り”は出来るって言ってるのよ」
『問題の先送りだって?』
オウム返しの様に、俺は呟く。
「ええ、根本的な解決にはならないし、あくまで問題を先延ばしにするだけ。つまりは、“時間稼ぎ”ね」
そして、とエリベルは言う。
「その間に、本当の解決策を見つける、そういう事よ」
そう言って、エリベルは通信魔石を取り出す。
「ベルク、準備は良い?」
『―――大丈夫です。ですが、本当にやるのですか?』
「仕方ないでしょ。まあ、成る様にはなるでしょ」
そう言ってエリベルは、矢継ぎ早にベルクに指示を出している。
『そろそろ教えてくれないか?どうするんだ、一体?』
「ええ、そうね」
一呼吸おいて、エリベルは言う。
それは驚くべき内容だった。
「んじゃ、結論から言うわ。私達のダンジョン、ファーブニルのダンジョン、そして私の造った賢者のダンジョン――――この三つのダンジョンを“融合”させるわ」
なんてことの無い様に、エリベルは言う。
だが、俺は耳を疑った。
リアクションの差はどうあれ、他の皆も同じような表情を浮かべている。
ダンジョンを“融合”させる?
「………そんな事が可能なのか?」
疑い半分で骸骨の男が問うが、エリベルは自信を持って頷いた。
「可能よ。ダンジョンには『転換期』って言うのがあるんだけど、それを意図的に起こすわ。それと、道外しの能力を使う」
転換期―――確か、ダンジョンが変質する事、だったっけか?
エリベルの知識で、言葉だけは知ってるけど、具体的にはどういう事を指すのかは分からない。
「ま、これは道外しが居たからこそ、思いついた事なんだけどね。そいつのダンジョン改変能力を使って、意図的に『転換期』をもたらし、それに合わせて、三つのダンジョンを結合させて、魔力の循環経路を構築するわ。それで、ある程度の延命措置にはなる筈よ」
「ダンジョンを融合させることが、ファーブニルの延命につながるのか?」
再び、骸骨の男がオウム返しに問う。
エリベルは頷く。
「ええ、それによって、迷宮核からファーブニルに掛けられている負荷を軽減させる。ファーブニルの寿命が限界に近かったのは、生物としての寿命もそうだけど、迷宮核から送られる演算負荷や魔力負荷の割合もかなり大きい筈よ。そこを軽減するだけでも、結構、寿命は延びると思うわ」
『……どの位だ?』
「そうね……まあ、正確には分からないけど、二~三年ってところかしらね」
二、三年か。
それでも、あと数日、数か月の寿命だったことを考えればかなり伸びた方か。
「その間に、ファーブニルを生かしたまま、器を入れ替える方法を開発するしかないでしょうね。迷宮核とファーブニルを完全に分離させれば、それだけでも、あと十年は生きられる筈よ。勿論、戦闘行為禁止とか、もろもろの条件付きだけど」
「十年か……」
龍の寿命を考えれば短いのか。
人間として考えれば、相当長いけど。
「ただ、これを行えば、実質的にはファーブニルが私達のダンジョンに組み込まれる形になるわ。それでも、構わない?加えて言えば、これは救いじゃないわ。みっともなく足掻いた揚句、結局は失敗しちゃうかもしれない、誰も救われない結末になるかもしれない、そんな可能性だってある。誰も幸せになれない、誰もが不幸になるかもしれない方法かもしれない」
エリベルはファーブニルの眷属達を見据える。
「もう一度聞くわ。それでも良い?」
エリベルの救済方法。
足掻いて足掻いて、それでもだめかもしれない。
でも、もしかしたら救われるかもしれない。
その可能性を探る為の、引き伸ばし手段。
加えて言うなら、これはファーブニルのダンジョンにとって、俺達のダンジョンへの従属を意味する。
だが、髑髏の男は迷いなく頷いた。
「構わない。それで、ファルが救えるならば、我々は喜んで、貴方の傘下に入ろう」
残りの二人も、何も言わないところを見ると賛同しているようだ。
「それで、例の道外しってどこに居るのかしら?そいつの“ダンジョン改変”能力を使わないと―――」
「………うぅ……」
『ん?』
不意に、エリベルの説明を遮って呻き声がした。
見ると、道外しが顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
「あら、幼女……?」
エリベル視線をロックオン。
「じゃあ、ファルは……ファルはまだ生きていられるの?まだ、私とお話できるの?」
ボタボタと大粒の涙を流しながら、道外しの少女はエリベルに聞く。
「ええ、もちろん。私は賢者だもの。大船に乗ったつもりで居なさいな」
どんとエリベルは己の胸を叩く。骨なので、ぱきっと音が鳴った。
それを聞いて、道外しはぱぁっと顔をほころばせる。
………ってあれ?
エリベルには、道外しが見えてるのか?
「ていうか、アース?この子って、誰―――――っ!!!!???」
そして、道外しの少女は、泣き顔のままエリベルに抱き着いた。
そう、“抱き着いた”。
道外しの少女も、動揺しているのか、エリベルに自分が見えている事も、触れている事も忘れているみたいだ。
「ありがとう……!ありがどう!骸骨ざん!」
泣いたり笑ったり、百面相をしながら道外しの少女はエリベルに抱き着く。
だが、対照的に能面のように無表情?で動かなくなるエリベル。
『………どうした?』
「アース、ヤバいわ………。私、今、興奮しすぎて魂が昇天しそうになったわ、幼女に抱き着かれてる。もう一度言うわ、幼女に抱き着かれてる。うん。この子が誰かなんて些細な問題だったわ……っ!幼女に抱き着かれてる、それが問題だわ。はぁはぁはぁ……っ!」
あ、そうですか。
よく見れば、手が震えている。
きっと道外しを撫でまわしたい衝動に駆られているのだろう。
それでも、行動に移さないのは、かろうじて理性が空気を読んで己を律しているからだ。
うん。賢者(骨)、立派。
「………私はきっと、この瞬間の為に生きてきたのね」
感無量と言った感じでエリベルは語る。
うん、でも、それは違う。
そう思ったけど、突っ込まなかった。
まあ、変態行為をしないだけいいやと思っていた俺の頭に、何かが流れ込んできた。
『―――ハァ……ハァ……この幼女ちゃん可愛いわねぇ……この布越しでも感じるこの感覚ああいい良いわ未発達なつるぺたぼでぃやべー超イキそうはぁはぁ可能ならば今すぐお風呂いやベッドね私の愛のベッドルームに連れ込んで一晩中いえ一週間くらい撫で回しながら愛でていたいわやべー超可愛いなんで今の私には舌がないのかしらぺろぺろしたいわちっぱいおっぱいむしゃぶりつきたいわ嗚呼その涙最高にきゅーとよ幼女たん白くてかわいいわねぇうへへへへこれはもうトレスちゃんも交えて三人で楽しみたいわねはぁはぁはぁはぁやばいわ股間がヤバいわ骨でよかったわじゃないと今頃溢れてるわきっとやべー反転してアンデッドになって良かったわ私こんな可愛い幼女に抱き着かれるなんて今きっと私の全盛期いえ幸運絶頂なのよだって今私最高にイキかけ―――』
…………非常に気持ち悪い思念通話が流れ込んできた。
あんまりキモいんで途中で思念通話をカットした。
なにこれ怖い。
新手の音波兵器?
怪音波?
いや、バイオ兵器か?
おうぇ、吐きそう。
さっきまでの、凛々しい姿が台無しだよ。
ともかく、さっさと俺のダンジョンと、ファーブニルのダンジョン、それと賢者(笑)のダンジョンの融合を進めてくれ……。
目の前の骨(笑)は、しばらく使い物にならなそうだし、通信魔石を介して、ベルクにコンタクトを取る。
『あー、ベルクか』
『おー、アースか。おや、エリベル様はどうしたんじゃ?こっちはギジーと作業を進めておるが?なんで、連絡がつかんのじゃ?』
『あー……いや、その……エリベルがちょっと錯乱しちゃってさ。そっちで作業進めてくれないか?』
『……?まあ、構わんが、とりあえずエリベル様の錯乱が収まったらこちらに通信を入れる様に言ってくれんか?』
錯乱と聞いても、一切驚かずに淡々と作業を進めるベルクに俺は初めて尊敬の念を抱いた。
伊達にコイツ、エリベルの眷属やってないわ。
『ああ、分かった』
俺は通信魔石を切る。
エリベルの方を見るが………あれはしばらく無理そうだな。
俺は、ファーブニルの眷属達の方を見た。
さて、何と声を掛ければいいのか?
そう思っていると、骸骨の男がこちらへ近づいてくる。
アンが、俺とソイツの間に割って入るが、俺はそれを手で制する。
そして、俺の目の前まで来たそいつは―――頭を下げた。
「すまない。我々の事情に巻き込んでしまった非礼をここに詫びる」
『貴様―――っ!?今更になって――』
アンが激高する。
当然だな。俺だって、怒ってる。
『待ってくれ、アン』
『―――っ。アース様……』
でも、その前に確かめたかった。
『一つだけ聞きたい。あんたらには、あの子は見えているのか?』
俺はエリベルに抱き着いている道外しを見る。
骸骨の男は首を横に振った。
「いいや、見えるのはファル―――ファーブニルだけだ。我々、眷属達はファルから道外しの事を伝えられたにすぎん」
『そうか………』
俺はしばらくの間黙考する。
そして、目の前の骸骨の男に頭を下げた。
『こちらこそ、済まなかった。そして、ありがとう』
『なっ!?アース様、何を!?』
アンが驚いている。
目の前の男からも、動揺が伝わってくる。
「………なぜ、貴方が謝るのだ?巻き込んだのは我々だ。貴方には、我々を罰する資格がある。なのに、なぜ謝罪の言葉を、礼を口にする?」
『今回の原因の一端は俺にもある。そもそも、あいつがダンジョンで生まれていたのに、俺はそのことに気付けなかった。そのせいで、あいつにどれだけ寂しい思いをさせたか分からない………』
流れ込んできた道外しの記憶。
アイツがどれだけ苦しんできたか、どれだけ寂しかったか。
俺が最初に気付いていれば、そんな思いはさせずに済んだかもしれないんだ。
意味の無いたらればかも知れない。
それでも、俺はあいつに謝らなければいけないんだ。
主として、家族として。
だから―――。
『あいつの“友達”になってくれて、ありがとう。本当は、ファーブニルに言うべきなんだろうけど、気絶してるし、アンタが眷属代表っぽいからとりあえずって感じだな』
「そうか………」
後で、道外しにも謝らないとな。
まあ、今は気が動転してるっぽいし落ち着いてからだな。
『あとはまあ、これから長い付き合いになりそうだしな、あんまり遺恨を残すのもどうかなって思ってさ……』
ダンジョンが融合したら、こいつ等ともちょくちょく顔を合わせるだろう。
なので、今後の為にもなるべくしこりは残したくない。
「そうか……成程な。流石、エリベルさんの主だ。器の違いを思い知らされましたよ」
毒気の抜かれたような感じで、骸骨の男は言う。
気のせいか口調が変わってる気が、いや、こっちが素なのか?
つーか、なんでエリベルの事、名前で呼んでるんだ?
『まあ、何はともあれ、まずは当面の問題の方が先だ』
「そうですね。我々も力ある限り協力は惜しみません。何でも、仰って下さい」
『ああ』
俺が頷くと、アンもしぶしぶと言った感じで、剣を収める。
エリベルの方を見ると、ようやく錯乱が終わったらしい。
通信魔石を片手に、ベルクに指示を出していた。
「―――ええ、分かったわ。それじゃあ、残りはギジーに任せて、ベルクも配置について頂戴。私も、今から行くわ」
通信を終えたらしいエリベルがこちらへ振り返る。
「……さてと、とりあえずアース、今日はもう休みましょう」
『え?』
エリベルから意外な申し出が出た。
てっきり、もう早速作業に入るものだとばかり思ってたからな。
こっちの疑問を察したのか、エリベルは肩をすくめる。
「流石に今から直ぐじゃ厳しいわよ……。幸いにして、ファーブニルの暴走は心配なさそうだし、お互いボロボロだわ。準備と解析もしっかり行いたいし、情報も整理しておきたいのよ」
『まあ、確かにそうだな』
ファーブニルも、今言った事を迷宮核に話して説得するみたいだし、本格的な作業は明日からだ。
とりあえず今日はもう休もう。
正直おれも意識を保っているのも限界に近い。
ただ、この状態じゃ、おちおち寝返りも打てない。
おまけに、もうすぐ薬の効果も切れる。
不安しかない。
けどまあ、なんとかなるかなーとか楽観的に考えてる辺り、いつ効果が切れてもおかしくないな……。
どうしようか?
「……それじゃあ、私は先に研究室に戻るわ。アンタもゆっくり戻ってきなさい。下手に動いて、ダンジョンを壊されちゃ堪らないからね」
『へいよ』
「それじゃあ―――後は任せたわ、アース」
そう言って、エリベルは転移門を開き、ホームへと戻ってゆく。
『ふぅー……』
転換期、ダンジョンの融合か……。
なんか、いつもいつもとんでもない事に巻き込まれるな……。
だが、この時の俺はまだ気づいていなかった。
俺のダンジョンと、賢者のダンジョン、そしてファーブニルのダンジョン。
この三つのダンジョンが融合する―――その本当の意味を。
俺のダンジョンはファウード大陸の東西南北に展開し、ファーブニルのダンジョンは大陸のほぼ中央に位置している。
それが意味する事。
つまり、今この瞬間。
この大陸全土に根を張る超巨大なダンジョンが誕生したという事だ。
それがどれ程とんでもない事なのか。
俺がソレに気付くのは、もう少し先の話だ。




