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ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

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第1話 セカンド・チャンス

「人生は良いカードを持つことではない。悪いカードをうまくプレイすることである」


―ロバート・ルイ・スティーヴンソン―

「―――オールインだ」




 恍惚と、緊張に震える声で俺は宣言した。


 眼前には、1000万ドルの札束。


 俺の手には、ロイヤルストレートフラッシュ目前の手札。




 ――『スペードのA』だ。これさえ来れば、巨富も名声も全て俺のものだ。




 俺は一瞬、出来過ぎた手札だと考えた。だが実際出来てきているのだから、そいつに賭けてみたくもなる。それが欲に誠実な人間の性だ。


 だが、恐れることは無い。俺はこのトランプカードを信じている。




 何故なら……【切り札】は、信じる奴にしか来ないと、俺は信じているからだ。




 トレードした1枚の伏せカードの先に、俺が望む『未来』が待っている。




 大丈夫。俺はカードを……信じている!




「オープン」




 無機質なディーラーの宣言により、カードがめくられる。そのカードは―――




 ―――『スペードの2』。




 その瞬間、破裂音と共に、俺の視界が瞬時に暗くなった。




 ♤




 ――あれから、どれくらいの時間が経ったんだ?




 うつ伏せの状態から身体を起こすと、辺り一面、地面も景色も漂白されたような真っさらな世界だった。




 俺が好んで着ていた黒のミリタリージャケットが、この空間では異様に目立っている。




 生も動も無い無機質な空間に俺一人……いや、ホワイトアウトした視界の先に、もう一人。


 眩い光を放つ白のドレスを纏った女が、俺の前に立ちはだかっていた。




『目覚めましたか、札に愛されし博徒よ』




 その神々しい姿と振る舞いは、まさしく女神だった。ドレスの下には、はち切れんばかりの豊かな果実が熟れに熟れて……。




『お黙りなさい。それが世界に革命を起こす者の思考ですか。穢らわしい』




 ほっとけ、男なら誰でも抱く本能だろうが。……って、世界に革命を起こす者だと? まさか俺のことか?




『その通りです。貴方はある世界の均衡を塗り替えるに相応しい者。故に私は、貴方に転生の機会を与えに来たのです』




 て、転生!? じゃあ俺は、あのポーカーの後で……。




『はい。下衆な者たちの詐術によって、貴方は殺されたのです』




 詐術……やっぱりあれはイカサマだったか。頭が痛むのは、弾丸に頭を撃ち抜かれた直後の衝撃だったというわけか。合点がいったと同時に、腸が煮えくり返る怒りが込み上げる。




『貴方の智謀、そして持ち札を余すことなく活用する戦術。ここで朽ち果てるには惜しい。その能力は別の世界でこそ活かされるべきだと私は考えました。……さぁ、今こそ再起の時です』




 ――これは、俺にとっての『セカンド・チャンス』だ。


 女神が右手に掲げた長い杖が、朽ちかけた俺の魂に、新たな命の息吹を吹き込んでいく。




 ということは、俺は何かの【スキル】を手にするのか? あるいは希少な職業に就いて無双するとか? それとも――。




『己の窮地では、カードに運命を委ねなさい。――貴方は今から、トランプカードを操る召喚士『ジョー・カーティス』となるのです!』




 ……え? 今、なんて言った? トランプ、だと……?




 ♡




 ―――俺は『転生もの』の物語には詳しくない。


 転生早々にピンチに陥り、ヒロインと出会って、主人公がそれを助ける……そんな王道の展開があることくらいは知っているが。




 しかし、この俺『ジョー・カーティス』には、武器も無ければ魔法も使えない。HPゲージも無ければ、スキルを記したステータス画面すら存在しないのだ。






 ―――そんな俺が、鬱蒼とした森の深淵に放り出され、いきなりゴブリンの群れに囲まれるなんて、誰が予想できるっていうんだ!?




「キャシャアアアアアアア!!」






 どす黒い緑の肌に、尖った鼻と耳。腰布一枚で棍棒を振り回す醜悪な妖精・ゴブリン。その数、およそ20匹。汚い牙を剥き出しにして、俺を獲物として品定めするように舌なめずりしている。




 もう一度、冷静に状況を確認する。




 俺には剣などの武器は無い。


 炎を放つ魔法も使えない。


 戦況を覆すスキルも持っていない。




 残されたのは、前世から愛用していた54枚の【トランプカード】の束のみ……!




 俺は女神に試されているのか? セカンド・チャンスを掴みたければ、この修羅場を越えてみせろというのか……!?




「グガアアアアアアッッ!!」


「痛ッ……!」


 四方からゴブリンの棍棒が振り下ろされる。木の根で掘られた棒は俺の背中に直撃し、骨をも振動する痛撃を味わう。




 だが痛がっている暇はない。ギャンブルと同じだ。日和った奴から、欲に喰われる……!




「ちくしょうッ!!」


 俺は無我夢中でゴブリンたちに立ち向かった。奴らは棍棒片手に、みぞおちに肋骨に首と、姑息な所ばかり狙ってやがる。




 一匹倒すことなら何とかなるが、流石に多勢に無勢だ。




「がぁあああああああ!!」




 俺はついに、ゴブリンに痛恨の一撃を食らわされた。


 勢いよく地面に叩きつけられ、懐に持っていたトランプのケースが開き、辺り一面に紅色のアーガイル模様のカードが散らばった。




「……絶体絶命、てか?」




 さっきの衝撃で身体を起こせず、目の前には無数のゴブリンが俺を亡き者にしようと迫ってくる。頭上に迫る棍棒が、俺を粉砕しようとしたその刹那。






『己の窮地では、カードに運命を委ねなさい』






 俺は咄嗟に女神が諭した言葉を思い出す。


 ――そうか、カードか!




 俺は振り下ろされる棍棒を避けて、手元にあった1枚のカードを無意識に拾う。




「頼むぜ俺のカード……信じてるぜ!」


 俺は右手のカード、地に伏せられた絵柄が、俺の運命を左右する。




 出たカードは―――【スペードの2】!




「……マジかよ」




 一瞬、二度目の死を覚悟した。


 あのイカサマ勝負で、最後に引いた死に札。


 また俺は、この札に裏切られるのか。


 そう思い、再びゴブリンが俺に襲い掛かる――その時だった。






『御主人様に、触れるなーーーーッッ!!!』






 掲げた『スペードの2』から、天を衝くような光柱が迸る。


 ゴブリンたちの目を焼く強烈な閃光とともに、金髪のツインテールをなびかせ、軽装の鎧を纏った女騎士が姿を現した。




「……お、お前は……!?」


 光に目が慣れた俺は、眼前の光景に絶句した。




「我が名は『スペード2の騎士・ニーナ』。――御主人様をお守りするため、ここに参上いたしました!」


本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!


先ずは『第7話 いざいかん、【革命】の旅へ!』までお読みいただけると、本作品の雰囲気が概ね分かりますので、お付き合いの程をお願いします。


続きが気になった方は、作品のブックマークを。


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― 新着の感想 ―
冒頭のポーカーから異世界での召喚まで、トランプというモチーフが一貫していて、とても入りやすい第一話でした。 特に印象的だったのが、前世ではジョーを死へ導いた「スペードの2」が、異世界では窮地を救う切…
読ませていただきました! ギャンブルから始まる導入が新鮮で、一気に物語へ引き込まれました。トランプを使った能力という設定も面白く、「スペードの2」がどう活躍するのかワクワクしながら読めました。 最…
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